SSSねぎまは七輪で作られる——。
「だってねミキネちゃん。これから城攻略するの面倒じゃない? 久しぶりに見たけどこれ数日はかかるよ。え、かからない? 神はかかるって言ってるんだよ。数日掛けて城攻略を見せられる方の気持ちにもなってみなさい? 熱いバトルとか、わたしたちじゃ見せ場も何もあったもんじゃないよ」
何だその神は、面倒くさがりか。
吸血鬼の城攻略と言ったら、もっとこう——吸血鬼の悲しい過去とか、戦いの中で成長していく俺たちとか、頭脳を合わせて城のトラップを解除していくとか、見せ場は一杯あるじゃん!
「だからあたしは色々察して、こうやってネギを焼いてるの。神に仕えるヒーラーとして当然の選択」
「さすがはなななお姉ちゃんです! 私もありったけのネギを焼きますよ!」
そういってエリィも服の裾からネギを取り出して、七輪で一緒に焼きだした。
「あ、ついでにこれもあるので焼きましょう」
エリィが追い打ちをかけるように出したのは、鳥のもも肉である。
そして数分後に完成したのが——焼き鳥のねぎまだ!
「おいしいけど……おいしいけど……」
泣きながらもぐもぐとねぎまを食べる。七輪で焼いたねぎまはなんとジューシーな事か。煙が目に染みる。
「飲み物も準備してたんだよねえ、じゃーん」
相沢さんが取り出したのは、何処をどう見ても小麦色のあれだ、しゅわしゅわする奴である。俺は実際年齢は三五歳なので飲めるが、君たちは明らかに未成年だよね?
「大丈夫大丈夫、なんとこれアルコールゼロ、余分なカロリーもオフされているという一般庶民の味方! ビールもどき!」
「なまえなまえ!」
「ささ、ぐぐっと!」
準備の良い相沢さんからコップを受け取り、俺もエリィも一杯、二杯、とネギまを食べながら次々と飲み干していく。
「エリィちゃんー、とても良い触り心地……!」
「にゃっ、にゃめてください——!」
ビールもどきを一口、口にしただけで相沢さんは完ぺきに出来上がっていた。これはあれだ、多分想像酔っ払い中毒的な。
エリィを背中から抱いて、ほのかに膨らんだか分からない程度の胸を、後ろからゆっくりとした手触りで舐めるように触っていく。
「これは、ミキネちゃんよりはある……お姉さんはうれしいような悲しいようなだよ!」
そういいつつ、相沢さんはプリーツスカートからもれる小鹿のような細身の足に手を伸ばす。
ストッキングが妙に艶めかしい。
「ふへへ——美少女が二人も、わたしの手の中に——もう城とかどうでもいいのでは?」
と、突然、窓ガラスが大きく割れる音が響き渡った。
音に気が付いたとき、城の窓から鎧を身にまとった剣士らしい男が地面へと落下する。
「なにが——!」
俺が割れた窓を見上げると、そこからもう一つの人影が出てきた。
レース付きの真っ黒な傘を差した月の輝くような髪を持つ、ゴシックロリータ風の少女。
口元の牙、赤い瞳、絵にかいたようなテンプレート吸血鬼だった。
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