SSSねぎまは七輪で作られる——。
気まずい空気を出しながら少女——エリィストリアはお金を相沢さんに差し出した。
いくら止めても相沢さんが、「絶対に受け取る! 受け取るまでここを動かないから! うあああん!」と地面で駄々をこねたので、飲み物一つ買える程度を渡したら、立ち上がってくれた。
「それで城門に付いたけど、どうするミキネちゃん」
吸血鬼城の城門はところどころが崩れていて、お化け屋敷のようだ。城門は地獄の窯のように大口を開けていて、一直線に大階段へと繋がっている。
階段の先は巨大な両開きの扉があり、そこが吸血鬼城の入り口なのだろう。
「リヒター・ベルモンドもこんな気持ちだったんですね……」
「リヒ——誰それ? 映画俳優?」
「コホン、何でもありません」
俺はわざとらしく咳払いをしてごまかす。
吸血鬼城を前にしてつい、現代のゲームを思い出してしまった。
「どうしたのエリィ」
さっきから城を見上げて黙っているエリィが気になったので、俺は問いかける。
「ミキネお姉ちゃん。実はこの城には元私のパーティーが入っていったから、すこし」
「気になってたんだね」
こくんとエリィは頷く。ああなんて優しい子なんだ。火を振り回してやばいやつだと思ってたけど、そんなことはない、この子は相沢さんとは違う。人間の子だ。
「って、何してるんですか?」
エリィは剣を抜いて、火打石を手に持ち——
「だめ、です」
「わひゃぁ!」
とりあえず強めに言って、彼女の火打石を落とさせた。
甘かった。エリィもパーティーから追放されたうちの一人だ。一見純粋そうな可愛らしい魔法剣士だが、その実、世間知らずのお嬢さんな気がしないでもない。
「良いですか、たとえ凶悪な生物がいても建物に火をつけることは人道に反します——ん?」
人差し指と耳を立ててエリィに説法を説いていると、なんだか焦げ臭いにおいが漂ってきた。
「何やってるんですか、相沢さん」
「ネギ焼いたら出てこないかなーって」
何か背負っているなとは思ってたけど、七輪でネギ焼くとか、ファンタジー世界を壊すからやめてください。
しかも結構ネギ臭い。台所で何かやってると思ったら、そういうことだったんですね、あとでネギ代金は貰いますからね?。
「吸血鬼にはネギじゃなくてニンニクですよ」
「一応、ネギ属だからいけるかなーって」
ぱたぱたと自前の
異世界転移させてくれた極彩色の魔女から貰ったのだろうけど、ロッドもまさかネギを燃やすために使われるとは思うまい。
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