SSSな魔法剣士幼女とお姉ちゃん的な戯れ
「あ、も、も、もう大丈夫ですよ」
「え——はっ」
少女は我を取り戻し、手に持っていた剣を落とす。剣は地面に落下しても焔を消す気配がないので、俺が地面の土をかぶせてやっと鎮火した。
「うっ……、こ、こわかった、今世紀最大に——、こわ、こわかった——う、うう」
地面にへたり込んでいる涙目少女の頭を優しく抱え、そっと頭をなでてあげる。
うちの阿保が余計なことしてすみませんと念を送りながら。
「こ、こわかったよおお」
「よしよしです」
「うう、——い、いいにおい——」
俺の胸に顔を押し付けてぐりぐりと涙を拭いて、顔を離して鼻をずびっと一回すする。
「そういうわけで、私たち先を急ぎますので」
何処にでもいる虫に発火する剣を振り回す少女。これは相沢さんとは別の方向性でやばい気がすると思い、そそくさと立ち去ろうとする。
「ではっ——!」
背中の熊さんリュックを包まれ、うっと息が詰まる。
「ご、ごめんなさい。私、こ、こんな森で仲間からおいてかれて——、虫もいるし、野犬も出るって言ってたし、吸血鬼は近いし、せ、せめて一緒についていかせてください……」
「うう、ですが吸血鬼はもしかしたら危ないですよ」
「あ、あたしこれでも魔法剣士で……さっきみたいに剣に属性を乗せて攻撃できるから、きっと、お役に……」
この異世界では魔法じゃなくて魔術だったと思うが、とおもったけど、そもそもこの子は魔術すら使えていない。物理的な力で敵を殴るタイプに間違いない。
「パーティーにも置いてかれて、こ、これ以上ここを通る人に見捨てられたら——」
やれやれ。パーティーにおいていかれた、か。俺自身もテイマーの時はパーティーから外され、相沢さんも例の領主にパーティーから外されている追放組だ。
「どうします、相沢さん」
「うーん、わたしは、めんど——」
「あ、あのお金も出しますから、」
少女の腰に袋にはずっしりとした重みが見てわかる。
「神の導きがあらんことを。憐れな魔法剣士さんに祝福を。わたしを姉のように思っていいのですよ」
「ほ、本当ですか、ありがとうございます。シスターさん、いえ、お姉ちゃん!」
少女は涙目を拭って、相沢さんに抱き着いた。
「あ、ごめん、レンタル姉さんは、前払いだから先にお金頂戴」
吸血鬼よりも怖いのは人間だったってオチがありそうで怖い。俺は自分でも気が付かないくらいの大きなため息を出して空を仰いだ。
俺へはレンタルお姉ちゃん代は払わなくていいからね……?
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