SSSのドジっ子とSSSの素材
「それでこんな暗すぎる森でどうするの? 罠でも作ってくそ英雄をおびき出した、竹やり落とし穴のブービートラップで一網打尽にして、死んでは復活させてを繰り返す遊びするの?」
「サイコパスの所業ですね。ここで木を切って運ぶんですよ。宿屋の修繕と民家に使います」
俺は三十分ほどをかけて、術式を書き、伐採に適したモンスターを召喚する。
「踊るのこぎりです」
「き、聞いたことないね」
「極東の方に結構生息していたので覚えていました」
踊るのこぎりは文字通り、何処をどう見ても踊るのこぎりのそれである。説明は不要。彼らは木を見ると無償に切りたくなる凶悪な獣であり、ある町では周辺の木が全て伐採され、はげ山になった場所に杉の木を急いで植えたら、村がスギ花粉で全滅したというほど恐ろしい獣たちである。
「これなら私が持っても切れそう?」
「あ、持つと暴れますよ」
「え?」
かわいそうなほどの綺麗な三段落ち。この声は録音だよねと言わんばかりの、前回と全く同じ声だった。
踊るのこぎりが発生させた衝撃波により、相沢さんの衣類は大事なところだけをギリギリ隠しつつも、何とか歩けるという奇跡的なバランスを保ち、現世に留まってくれた。
俺が瞬時に踊るのこぎりへ、弱体の命令を出していたのが良かったのか、肌へのダメージはなかったようだ。
「殺す——こいつら殺す——あたし、あいつら、ころす」
「あ、相沢さん!」
何処から取り出したのかヒーラー相沢専用の《マジカル☆ロッド》という捻りもない羽の生えた杖を手に取り出し、天高く構える。
「うおおおおおおおおおおおお、死に晒せえええええええ! 異世界に転移し、この世界唯一のヒーラーと言われている私が相手だあああああああああああ! あたしの姿を見たものはみんな死ぬ、みんな死ぬぜええ!」
あれはヒーラーじゃない死神だ。
地の果てから蘇った死神だ。自爆大好きタンクトップの同僚に対して、いつもいちゃいちゃ調子に乗っている死神レベルの死神だ。
せっかく呼んだ踊るのこぎりたちを、消滅されても困るなあと考えていたころ、相沢さんは盛大にずっこけた。
「へぶう!」
顔からもろにいったな。しかも女子がするポーズじゃないあの倒れ方。せめてモザイク処理してあげよう。
「大丈夫ですか?」
ぱたぱたと尻尾と耳を揺らしながら急いで近寄ると、相沢さんが何につまずいたのか一目でわかった。
ははーん、なるほど、噂には聞いていたけどここにあったか。
俺は自分の頭の上で耳がピンと立つの感じた。
「ありがとう相沢さん!」
そして今にも泣きそうな相沢さんに、勢いのまま抱きついてしまった。
そう、これで素材は全部揃ったからだ。
SSSのドジっ子とSSSの素材
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