SSSホットケーキのご褒美をいつか
「——」
相沢さんのローブは思ったより薄かったのか、全身に貼りついて可哀想なくらい身体のラインがハッキリと出ている。
川辺で崩れ落ち、ローブから零れる引き締まった脚。くびれから背中に繋がる美しいライン。豊満ではないが、まあ丁度良い胸。長い髪も水に滴っており、死んだ目の儚さも合わさって未亡人のような放っておけない雰囲気を放っている。
俺も男だったら色々な意味で危なかったが、これは残念な相沢さんだ。相沢さんだと分かっていると、さほど動揺することもない。少しはしてるけど。
「さ、次に行きましょう。せ、洗濯もできて良かったですね。ドクターフィッシュの沼は飲み水レベルですから」
「——」
「だめだ、目が死んでます」
大ミミズたちの開墾が終わったので、次に家を建てなければいけない。生活するには畑も必要だろう。時刻は昼過ぎ、順調である。
「さて、問題はここからですね」
人口十五名以上と居住区。
こればかりはモンスターでは対処しきれない。出来るやつもいるかもしれないけど、今の俺の記憶にはない。うーん。どうしたものか。
「まあでも木を切る必要もあるし、周囲の森を少し伐採させてもらいましょうか」
相沢さんは死んだ目のまま俺についてくる。なんというヘコミようか。いつも自分のせいで失敗ばかりしてるのに。
「今日の仕事が終われば、そうですね、今日はホットケーキでも作りましょう。相沢さんも頑張ってくれましたしね」
俺の言葉に相沢さんはぴくっと体を揺らす。
「ほ、ほっとけーき……」
棒読みだ。ホットケーキを知らない部族のようだ。
「ホットケーキ、美味しいですよ。森のはちみつをたっぷりかけて、バターがトロリと、溶けるのです」
「ほ、ほっとけーき!」
「そう、ホットケーキ!」
「イエス、ホットケーキ!」
「そうです、ホットケーキです!」
初めて文明人の言葉を理解した原始人のように、相沢さんは大きく拳を振り上げる!
「私はホットケーキの為に今日生き抜く!」
「さすがです、相沢さん!」
志しが低い!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます