第62話滅びゆくミトラ神
捕虜達の処刑は、次の日の昼過ぎまで続けられた。
さすがのサリエルも疲弊し、最後の処刑が終わった後は、祭壇の階段に座り込み動けずにいた。
フードを深く被り表情は分からなかったが、彼の周りは深い哀しみと怒りが混じり合った雰囲気で満たされ近寄りがたく、ミカエルでさえ声を掛ける事が出来なかった。
やっと彼が動き出したのは日が暮れて一番星が輝きだした頃だった。
彼は、大鎌に姿を変えたワズラを元の棍棒に戻すと六枚の大きな羽を羽ばたかせて冥界へ帰って行った。
その後、冥界からは沢山の恩恵がもたらされ、それを賠償として地上の神々は分配した。
冥界の皇帝は地上との往来に厳しい制限を設け、冥界の上位神を地上で見る事はめったになくなった。
ミカエルとルシフェルの戦いはやがて神話として後世に語り継がれるが、冥界が関わった事は何者かによって記憶から消されてしまった。
冥皇の名は、死の天使として地上に存在している、しかし彼の出自を示す文献は見当たらない。
新しい脇侍神を望めない冥皇は、やがて
冥皇の寿命は果てしなく長いので我々が心配する必要はないのだが、冥界の消滅は我々の子孫にどんな影響を与えるのだろうか。
そして、【明けの明星】【宵の明星】の輝かしい栄光の下に散った星々の名は冥界で大切に語り継がれている事を貴方達に伝えておきたい。
もし少しでも彼等を想ってくれるなら死後の図書館で星々の記録を捜して欲しい。
【カリステフス】冥皇の冠 @okitakyo
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