第55話三界大戦争4
ミカエルの軍勢は指示された通り二手に分かれ、南と北に向かう。
ミカエルは軍勢を見送ると負傷兵達が収容されているテントへ向かった。
「こんな所に将軍が!何とありがたい」
負傷兵は感激で傷付いた身体をなんとか立ち上がらせ敬礼しようとする。
「そのままでいい。皆、恐れずに私に身体を委ねて欲しい」
兵士達はミカエルが一体何をしたいのかさっぱり分からない。
ミカエルは側に居た、重症で寝たきりの兵士の額に【ヌトの指輪】をくっ付ける。
「おおっ!!」
兵士は指輪に触れた瞬間にミカエルの右手に吸い込まれ、跡形も無く消えてしまった。
「これは精霊や神々を封印出来る魔法の指輪だ。ここに封印された者は指輪の持ち主の忠実な眷属と化す。ここへはやがてルシフェルの軍勢が攻め込み凄惨な光景が広がろう」
ミカエルは兵士達を落ちつかせるために笑顔で語り掛ける。
「私は今この場にいる誰1人として見捨てはしない。皆私を信じて、この指輪の中で暫しの休息を過ごしてほしい」
「指輪に封印されるのは構いませんが、補充の武器や鎧はどうするのですか?」
兵士の1人が手を挙げて質問する。
「既に封印されている神々が力を貸してくださる。心配するな」
兵士達は顔を見合わせて思案顔で暫くの間ざわめいていたが、1人の兵士が意を決してミカエルの前に膝間付くと全ての兵士がそれに続いた。
「皆、ありがとう」
ミカエルは負傷兵達を指輪に封印すると、次は昨日封印した巨人族5柱とアレースを召還した。
「巨人達には、ここにある全ての武器と鎧、食料等を船に積込み死海まで運び出して欲しい」
巨人達はミカエルの指示に素直に従う。封印する際は巨人族の長とも一悶着あり、指輪に入ってもらうまで神経を磨り減らしたが今は嘘のように皆素直で従順だ。
(素晴らしい、これがミトラ神の、冥界の強さの秘訣か......)
全ての荷を積んだ船が見えなくなると、次にミカエルはアレースにヨルダン橋を破壊して、破壊した橋を使い、ここより少し下流の上澄みだけを塞き止める様に指示をだした。
「水が溢れてしまわないように必ず上澄みだけを塞き止めてくれ」
ミカエルは不安でアレースの様子を観察していたが、あの大雑把なアレースが繊細な指示をいとも簡単にこなしている。
(凄い!まるで私の手足の様に動かせる)
【ヌトの指輪】の力を知ったミカエルは改めて弟に感謝し、その指輪を簡単に手放せる弟の隠された巨大な力が欲しくなる。
(絶対に弟を手に入れたい......)
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