第48話【ヨルダン川の戦い】ウリエル対オロバス1

 オロバス軍が守る物流の拠点【ヨルダン橋】。ラミエルが敵の攻撃を受けたので、もう何も遠慮する事は無い。


「攻撃開始!!」


 ウリエルの指示でヨルダン川を挟んでのいくさが始まる。

 ウリエルがリーダーとなって指揮する3個師団2万柱、対するオロバスは2000柱の駐留軍である。


 オロバス軍2000柱とて決して気を抜ける相手ではない。彼等は硬い門に守られたルシフェルの精鋭達。


 ウリエル、レミエル、サキエルを除いた一柱各自の力はオロバス軍の方が強い。


 陥落に時間をかければ、直ぐに援軍が合流してしまう。ミカエルはルシフェルの援軍が到着する前に何としても【ヨルダン橋】を手中に収めるつもりだった。


「ラミエル、傷は大丈夫か?」


「羽以外は大丈夫です。それよりこれを見て下さい!」


 ウリエルがラミエルの体を見ると、羽で防ぎきれなかった矢が鎧にくっついている。


「何だ、これは!?」


 矢じりは摩擦で溶けてしまったかの如く平に変形し鎧にくっついている。


「おい!そのへばりついた矢じりは取れるのか?」


 ウリエルがラミエルに言うと、ラミエルは手で払い、いとも簡単にへばりついた矢じりを地面に落とした。


「凄いですよこの鎧は、しかも薄くて軽くて動きやすい」


「これが冥界の力か......。冥界に居るルシフェルもこの力を手に入れている可能性があるな」


 ウリエル軍とオロバス軍の射ったたくさんの矢が交差する中でウリエルは若干不安になった。


「大丈夫です!エジプトとオリュンポスの神々がこちらについたという事は、冥界の皇帝が我等に味方しているという事です」


 ラミエルの言う通り、エジプトとオリュンポスの神々はミトラ神と懇意にしている。


「大丈夫、サリエル皇子はあんなに強かったではありませんか。この鎧や武器も彼からの贈り物ですよ」


「そうだな......」


 オロバス軍の矢の雨が勢いを弱めると、ウリエル軍は上空からの攻撃を開始する。


 オロバス軍はウリエル軍の矢を拾い上空の天使達に打ち込むが、飛距離を計算されているようで全く当たらない。


「躊躇するな!打て!!」


 ウリエルが号令をかけると天使達は意を決して弓を引く。オロバスの兵士はもう消滅を覚悟した特攻で迎え撃つしかない。


「弓を恐がるな!盾を持って!飛べ!飛べ!!飛びついて敵を一柱でも多く地上に叩き落とすのだ!!」


 残ったオロバスの兵士達が一斉に上空に飛び立つ。死を覚悟の特攻、流石はルシフェルの精鋭。


 怯んだウリエル側の何柱かの兵士は、オロバスの兵士に掴み掛かられ地上に叩き落とされる。弓矢を奪われ、顔を射抜かれてしまった者も居る。


「大丈夫だ!意思を強く持て!!奴等はたった2000柱の小軍だ!」


 ウリエルは自らも上空へ昇り弓を引く。


 ウリエルが出て来たと同時に、黒い雲を纏い、角が生えた甲冑に身を包んだオロバスが怒りをあらわに飛んで来た。


「ウリエルよ、良くも我精鋭達に傷をつけてくれたな」


「先に攻撃を仕掛けたのはお前達だ」


「わざと外した矢に、雷霆で応えるとはいささか度を越えているのではないか?」


「その天使を仕掛けたのは私だ」


「ならば大将のお前を雷霆よりも酷い仕打ちで八つ裂きにしてくれるわ!」


「望むところだ!!」


 ウリエル軍と僅かに残ったオロバス軍は上空に居る2柱に注目する。上位天使の攻防に巻き込まれるのはごめんだ。


「サキエル!私達の周りに水の壁をめぐらせろ!!」


 サキエルはヨルダン川の水を集め、巨大な水の壁をウリエルとオロバスの周りに出現させた。


「ラミエル、サキエル!兵士達を率いて門を突破しろ!物資は全て処分し冥界への物流を止めるのだ!!」


 ウリエルは万が一自分が負けた場合に備えて、ラミエルとサキエルに指示を出した。


 熾天使ウリエルと智天使オロバスの戦い。


 位の上ではウリエルが勝るが、闘った事は無い。お互いに相手の能力もよく知らない。


「剣を抜け!オロバス!!」

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