第44話ミカエルの挙兵2
兄ルシフェルに反旗を翻したミカエル。彼が、謀反を決意したのはオシリスが地上に降りた直ぐ後だった。
何故彼はこんな短時間でシディム侵攻を決意したのか。それは昨日の夜、冥界から舞い降りた一羽の
その日も、属国の神々からルシフェルに対しての苦言を聞かされ続けたミカエル。流石に疲弊し、静かになる夜を心待ちにしていた。
やっと日が沈み、星が高く昇ってきた頃、一羽の朱鷺が物凄い速さでミカエルの部屋の窓から飛び込んで来た。
「何者だ!!」
「どうか大声を出さないでいただきたい。私は冥界の者です」
「冥界の!サリエルの使いか!?」
「それはもう過去の話。私の名前はトート。かつては冥界の書記官として働いていました」
「冥界の書記官殿が何故地上に居て、私の元へ参ったのか?」
トートと名乗る朱鷺はテクテクと歩いてテーブルに飛び乗りミカエルと視線を合わせる。
「それは、貴方様が憎きルシフェルの弟であり、敬愛するサリエル様の兄だからです」
「冥界でも兄は嫌われているのだな」
「貴方の兄上は、冥界の国々を堕落させ争いを生み出し、サリエル様からは大切な友人達を奪い苦しめている」
「弟はやはり苦しんでいるのか?」
「貴方の兄上はサリエル様を傀儡にし冥界を手中に収めようとお考えのようだが、サリエル様の心は永遠に手に入らないでしょう」
「......サリエルは健在か?」
「健在なら貴方を頼って参りません。皇子様はルシフェルに乳兄妹を殺され、育ての親を奪われ、哀しみで打ち拉がれ明日とも知れぬ命......」
トートは羽で顔を覆いシクシクと泣きはじめてしまった。
「そんな......弟が明日とも知れぬ命だと!?」
「サリエル様は周りを敵で囲まれても屈する事の無いお方だ。ルシフェルはそんなお方をどうする?貴方が一番知っているはずだ」
「しかし、サリエルもルシフェルの弟だぞ!兄は弟を殺しなどしない!!」
「それは長く離れ離れだった兄弟でも言えるのか?皇子は乳兄妹を殺された。恐らくサリエル様はルシフェルを殺したい程恨んでいる事だろう」
「そなたは冥界で兄と弟が争う事になると言いたいのか?」
「そうならない為に貴方を頼って来たのです。サリエル皇子はルシフェルよりか弱い。逆らえば殺されてしまう」
トートは今度はミカエルの肩に飛び乗って耳打ちする。
「貴方が冥界のためにルシフェルを討ち滅ぼすのなら我々はいくらでも力を貸そう。このままでは兄と弟、どちらも失う事になるのです」
トートはそう言うと入って来た窓から飛び立ち夜空へ消えて行った。
(戴冠式が済めばルシフェルは用済み。明日になればサリエル皇子はもう居ない。サリエル冥皇のご誕生だ)
トートは久々の地上の空気を楽しみながらオシリスの元へ帰って行った。
朝、ミカエルが騒がしさから玉座の間に出ると、仲間の天使達が鎧を着て整列している。
「総帥!我々はもうルシフェルのせいで苦しむ貴方様を見ていられません」
「ルシフェルのやり方は間違っています。貴方が我等の世界の総統として全ての実権を握り、神々の信頼を取り戻すべきです!!」
「そなた等は、兄に従う天使達が何柱居るか知っているだろう?我等の3倍以上の大軍勢だぞ」
「いいえ、貴方はその倍を越える大軍の総大将です!」
天使達がミカエルの背中を押して神殿の外に出るよう促す。神殿の前にミカエルが現れると地響きのごとき大歓声がカナンの地を震わせた。
「ミカエル総帥がお出ましになった!我等が神々の大将軍万歳!!」
「ミカエル総帥万歳!!」
遠く地平線の彼方まで続くのではないかという神々の大軍。こんなにも壮大な光景は今までに見た事が無い。
この日、ミカエルの元にはエジプトの神々をはじめオリュンポスやインド、メソポタミアやマヤの神々、遠くは東アジアの神々の軍勢が集結したのであった。
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