第41話死者の書5
日が昇る前に天使達は叩き起こされ、冥界の従者による取り調べが行われた。
ルシフェルは
天使達よりも遥かに体格が良い冥界の神々による尋問は、端から見たらただの虐めに等しい物であり、天使達の援助を受けていた小国の従者達は苦言を呈した。
「ネプトゥ、何であんな事を言ったのよ!」
人気の無い宮殿のバルコニー。アニがネプトゥの両肩を掴んで詰め寄る。
「あなたは私が死者の書を切り取ったと思っているのでしょ!」
アニとはうって変わって冷静なネプトゥ。アニを見据えて静かに語りかける。
「いい、アニは戴冠式が終わるまで沈黙を貫くの、戴冠式さえ終わればカウティスなんて用済みよ。おそらく父かハーデスが奴に罪を着せたまま処理するわ」
「私に好きな人を陥れろと言うの......」
涙をポロポロと流すアニ、ネプトゥは更に言葉を掛ける。
「明日、朝会でもう一度サリエル皇子がこの事を話題にあげるわ。貴方はただ黙って耐えなさい」
「血も涙も無いのね......流石は冥界の王女様だわ」
オシリスの王女であるネプトゥと男爵令嬢にしか過ぎないアニ。身分を越えた友情は何時までも続くものであって欲しかった。
次の日の朝会。何時もは居ない天使達がルシフェルに伴われ参加している。
「皇子、天使達には皆アリバイがあり、不審な者は居ませんでした」
「そうか」
ハーデスが取り調べの結果を報告すると、ルシフェルが一歩前に出てきた。
「サリエル皇子、私の下僕達は皆キツい取り調べに耐え、誠実に対応しました。どうか労いの言葉を」
「解っている。礼を言うぞ、ありがとう」
「しかし、取り調べはご存知の通り酷い内容でした。もはや私達は死者の書を切り取った犯人を許す事は出来ません」
ルシフェルは少し表情を固くしてサリエルに訴えた。
「冥界流の公正な尋問に文句を言われるのは
ハーデスもサリエルを見上げて訴える。
サリエルは額に手を当てため息をつくと、もう一度従者達に尋ねた。
「もう一度聞く、犯人に心当たりのある者は居ないか?」
アニは無表情でサリエルを見上げるネプトゥを見つめる。
(ねえネプトゥ、貴方は本当に冥界のためなら親友の思い人なんてどうでも良いの......)
オシリスとハーデスは冥界のためなら何でもする王だ。戴冠式が終わればルシフェルは用済み。オシリスの王女が同じ考えでも不思議な事ではない。
アニは悲しくて仕方がなかった。
火の無い所でも煙を立ててしまえる王様は、丁度いい時期に手に入れた濡れ衣を愛しの皇子様に着せて殺してしまうだろう。
「私が盗みました......。私が犯人です......」
アニは、震える手を一生懸命高く挙げた。
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