第25話冥皇の指輪
ずっと降り続いていた雨は、ミカエルが意識を取り戻した夜には小康状態となり翌朝は久しぶりの晴天となった。
いつもは昼過ぎまで寝ているサリエルとタルタロスだが、この日は天使達よりも早く起きミカエルの部屋を訪ねた。
「兄上、私達はこれでおいとまします」
「私は置いて行くのか?」
「天使達に後ろ髪を引かれている貴方を強引に連れ戻しても意味がありません。取り敢えず先にルシフェルから冠を継承します」
「ルシフェルとは連絡が取れぬ。パルミアのバル神殿に向かったはずだが」
サリエルは目を閉じて、千里眼でパルミア全域を探してみたが兄らしき者は居ない。
「パルミアなら、ここからそう離れてはいない。足を運んでみましょう」
サリエルはミカエルの右手を取ると、自分が何時もはめていた指輪を握らせた。
「これは、我がミトラス一族が代々大切にしてきた指輪です。私との繋がりを保つためにお受け取りください」
「真鍮か綺麗な指輪だな」
「只の指輪ではありません。精霊を閉じ込め、使役出来る魔法の指輪です」
「そんな大層な物を私に託していいのか?」
「一つだけ約束して欲しい。今後、貴方に危害を加えたり、意に沿わぬ精霊が居ようとも消滅させたりしないと」
「この指輪に封印しろというのか......」
「どんなに敵対している精霊でも、その指輪に封印されてしまったら持ち主の意のままに操られてしまう恐ろしい指輪です」
サリエルがミカエルの右手を強く握る。
「封印しても、使役するかしないかは貴方次第です」
「お前は私に試練を置いていく気だな。大したものだ」
「では、これで失礼いたします。またお会いしましょう」
「......ありがとう」
兄が投げ掛けた感謝の言葉にサリエルは振り返らずに微笑んだ。
サリエルとタルタロスが神殿を出ると、冥界の使者達が馬車を用意して待っていた。
「迎えなど頼んでいないはずだが?」
「皇子、今貴方を冥界へ入れる訳にはいきません」
使者達の表情が固い。サリエルはただならぬ様子に眉間にシワを寄せて尋ねた。
「冥界で何かあったか?」
「カウティス皇子が貴方に宣戦布告をしました」
「ルシフェルが!!何故だ!?」
「カウティス皇子は今冥界に居ます。詳しくは説明出来かねますが、ハーデス様が事が落ち着くまで皇子には地上に居て頂きたいとの事です」
「ハーデスめ私を謀りおって!宣戦布告された者が戦地に居なくてどうする!!」
「落ち着いてください。奴等の力や兵器など我々の前では塵も同じです。皇子が出るまでも無いとのハーデス様のご判断です」
「取り敢えずはエジプトまで行きオシリス様のご実家に身を寄せて頂きます」
使者達は矢継ぎ早に言うと、サリエルとタルタロスを馬車に押し込んだ。
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