第24話エンジェル達
降り注ぐ雨の音の中に微かにハープの旋律が聴こえる。聞き覚えのある懐かしい調べ。
「誰ぞ居るか?」
「総帥、お目覚めですか!」
一週間の深い眠りに就いていたミカエル。意識を取り戻したはいいがサリエルに負わされた傷は治りが遅く、膿んでいる箇所もあった。
「サリエルは?弟はどうした?」
ミカエルは痛みに耐えながらも上体を起こして従者に問いかける。
「大丈夫です。誰か呼んで参りますので横になっていたください」
総帥が目覚めた事を知らされたウリエルは急いでミカエルの部屋へ駆け付けた。
「ミカエル様!」
「ウリエル。サリエルはまだ神殿に居るのか?」
「えっ......」
「弟が負った傷は大丈夫か?」
「大丈夫です。元気です」
ウリエルは白けた気分になったが表情には出さずに対応した。
サリエルがミカエルに負わされた傷は次の日にはふさがり跡形もなく消えてしまった。本来、不死身なはずの天使。それなのにサリエルが負わせた傷は未だにミカエルを苦しめている。
「あのハープは誰が奏でている?」
神殿の玉座の間では、サリエルが天使達に囲まれハープを奏でていた。
聴いた事の無い音楽。天使達はサリエルが恐いものの興味の方が勝り集まってきたようだ。
「やっとお目覚めですか?兄上」
ウリエルに支えられながら玉座の間にやって来たミカエルにサリエルが微笑む。
「この傷は治る事は無いのか?」
「時間は掛かるでしょうがいずれ癒えるでしょう」
「グリゴリの天使達の仇か?」
「グリゴリの天使達は、癒える事のない傷を負っている。そんな程度で仇を打った事にはなるまい」
サリエルはハープを奏でながら更に話し続ける。
「傷が癒えたら、強制的に冥界へ連れて行くつもりでしたが、ここに居る天使の何柱かは心底貴方に惚れ込んでいるようだ」
「そうだ、確かに総帥は弱い処があり判断を間違える事もある。だがルシフェルが居ない以上、我々は総帥の力におすがりするしかないのだ」
ウリエルが間を置かずにサリエルに返答する。
「我々には敵が多すぎる。頼む、我々から総帥を奪わないでくれ」
ウリエルは必死に懇願した。それに続いて他の天使達も次々にサリエルに懇願する。
「天使達は我々が思っているより愚かでか弱い。貴方からどんなに雑な扱いを受けようと、すがりつき従うのだ」
ミカエルは胸が押し潰されそうな感覚に陥った。
「貴方は私に勝ったのだから、もう十分に力を見せ付けたでしょう?次は力だけじゃない貴方の魅力で天使達の心を掴むがいい」
「......私に力以外の物など」
「既に気付いている者も居る。自信を持たねばいかんよ」
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