第19話 ヒロインと悪役令嬢【上】
ローズ様と一緒に住んでいする屋敷から1kmほど離れた場所に、少し木々がなく、円形に拡がっている場所があります。
丸太が置かれており、座って休憩できるペースににってるので、ハンター達が少し休憩するのに使ってたりします。
私は座り、ハンターギルドの売店で買った新聞を広げて見ました。
号外に書かれている内容は大きく分けて3つ。
【デッシュティル王国に政変。アルギレ・グシャバル・シーン・ガキャミラが新国王となったこと】
【ヴァシリアム第一王子は行方不明】
【「憤怒」魔王が出現か?】
私がローズ様を連れ去ってから、あの国で何が起こったのでしょう。
ヴァシリアム第一王子は行方不明で、よりによってあのアルギレが新国王だなんて……。
政変で行方不明ということは、最悪、死亡している可能性すらあります。
……ローズ様の婚約者で、私の腹違いの兄、ヴァシリアム第一王子。
ローズ様とはとても仲が良くて羨ましかった。私の事も、アイツの所為で色々とありますが、普通に友達として接してきてくれた。
ただ卒業後に、結婚すると聞いて我慢ではなかったんです。
アイツの事がちらついて、ローズ様を攫ってしまいました。
少し反省はありますが、後悔は――してません。
ローズ様と一緒にいられて甘えて来てくれる状況に、私はとても幸福を感じてます。
せめて生きてるか確認したいですね。
一応は血の繋がった兄で、ローズ様の婚約者で、学園にいた時は友達だった訳ですから……。
でも、それをするには少しローズ様の元を離れてデッシュティル王国へ行かなければなりません。
ローズ様とあまり長時間は離れたくありませんし、この事をローズ様にどう説明すれば良いのでしょう。
そして、もし最悪の結果、政変に巻き込まれて死亡してたら。
間違いなくローズ様はデッシュティル王国へ向かう。
私が施している武力・魔力の封印も、怒りで解除する。七神獣の力と国が保有している宝具の合せ技でも、本気で怒ったローズ様の力を封じ続ける事は難しい。
でも、言わなければ、ローズ様は私の事を怒るでしょう。失望するでしょう。
それだけは絶対に避けたいです。
次に気になるのが、アルギレ・グシャバル・シーン・ガキャミラが新国王になったということです。
よく新国王になんてのに、成れたというのが正直な感想です、
『平民のくせによく名誉あるデッシュティル王立学園に入学できたもんだなぁ、その可愛さで試験官相手に寝たのか』
『へへ。平民らしく、貴族に奉仕をしな。勿論、お前が試験官にしたような奉仕をな!』
下卑た笑いに、人の体を舐め回すような視線。
ハッキリ言って生理的に無理でした。
私はきちんと試験を受けた上で、入学をしました。全ては、私の父親。母さんを孕ませて、微々たる金で国外追放したあの男に贖罪を求めるため……。
アイツの元には正々堂々と行くつもりでした。下手な手段を使っていけば負けのような気がしたからです。
アルギレの態度は不快でしたが、アイツが治める国なのだから、こういうのが居ても不思議じゃなかったです。
言う事を聞いて奉仕をすれば、騒ぎにはならないでしょうが、身体を売ってまで残ろうとは思いませんでした。
セルフィスさんに「せっかくなんで高等教育を受けてくれば? 特待生でタダなんだし」と言われて入学したけど。
私は指先に魔力を溜めて、アルギレを消し飛ばそうとすると、横からアルギレに対してドロップキックをしてきた女性がいました。
そうです。ローズ様です
『エクスデスさん、大丈夫だった? ひどい事されなかった?』
ローズ様はとても心配そうに話しかけてきたくれました。
でも、その時の私は、アイツの所為で貴族に対する不信感、アルギレによる呼び出し、そしてローズ様がナナザイの気配があった事で、お礼は言いましたが、冷たくしてしまったのです。
それからローズ様は、なにかがある度に、私の前に現れては、助けてくれました。
七神獣と契約して以来、こんなにも他人に助けてもらう事なんてなく、ローズ様は私にとってヒーローとなりました。
でも、ローズ様とは一度だけ仲違いをした事がありました。
私を付けている不審者がいるようで、ローズ様が協力してくれたんです。
ローズ様は直ぐにその不審者を捕まえてくれましたが、その正体に私は愕然としました。
この国に来て贖罪をさせたかった相手、デウス・バーナン・クルシュルド・デッシュティル国王だったんです。
色々な感情が湧き上がってきて、私は戦闘形態である「天神地祇」となりました。
光り輝く神剣を持ち、私の父親に斬りかかりました。
それを信じられないことに、ローズは護身用の剣で受け止めたんです。
『シュベァイル様。邪魔、しないで下さい。そいつは、そいつだけはぁぁぁぁ』
『――ダメ。こんなクズで下衆でも、こんなのでも、国王だからっ。エクスデスさん、殺す以外の方法を』
『殺す以外に、母さんに償わせる方法なんてありません。当時、10歳だった母さんを、平民ですら数日普通に過ごしたらなくなる金をもたせて、国外追放した、ソイツを許す方法なんて――ない!!』
ローズ様の剣に亀裂が入り砕け散りました。
『――ッ』
『シュベァイル様の事を、ようやく信じてみようと思えたのに――。そんなクズを必死で庇うなんて。シュベァイル様なんて大嫌いです……っ!!』
七属性の魔力を神剣に宿らせると、空間すら粉砕する圧倒的な魔力を放出するようになります。
ローズ様が庇う以上、アイツを殺すのは、ほぼ不可能。
なら、ローズ様ごと消し飛ばすしかないと、当時の私は考えました。考えてしまったんです。
――絶技・遮二無二――
全てを飲み込むほどの高魔力の光が、ローズ様とデウス国王を飲み込みました。
私は結果を見ることが出来ず、そのまま逃げたのです。
そして私はガミーニウ中立自治国にある孤児院に帰りました。
一ヶ月後、ディスペリア帝国の襲撃で、デウス国王が死亡した事を知って、私はあの男に贖罪をさせるという目標がなくなったんです。
しばらく目標を見つけることが出来ずに、空を見上てボーとする日が続きました。
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