第18話 ヒロインとハンターギルド
ガミーニウ中立自治国。
私とローズ様が一緒にいる屋敷から10kmほど離れた場所にある中規模の街「ミーユル」に来た。
街の規模は中規模ですが、色々な食材や珍しい物を売ってたりするので、昔から良く利用してました。
更にここから東に20kmほど行くと、ガミーニウ中立自治国最大の都市「デルドナ」がありますが、そこには「色欲」魔王がいる噂があるので、あまり行きたくありません。
私は神子で、悪魔は討伐するべき天敵ですけど、自分から討伐する気にはなりません。昔なら分かりませんでしたけどね。
ミーユルに来たのは、食材の買い込みと、ハンターギルドの依頼を受けてお金を稼ぐこと。
ローズ様を監禁してますが、可能な限り不便はかけたくないです。
私は馴染みの八百屋や食材を販売している店を周り、一ヶ月ほどの食材を購入しました。
――ローズ様は、お刺身でしたっけ? それがお好きなようなので、海魚と醤油を買いたかったですが、魚の方は海から離れているため、今回は入荷されてませんでした。
後は、調味料や、ちょっとしたオモチャを購入しました。
後はハンターギルドで、適当な依頼を受けて達成するだけです。
ハンターギルドは、五階建の建物で、街の中でも目立つ中心部付近にあります。
もう少しで夕方になるためか、1階エントランには人が疎らです。
一階は食事も出来る場所。二階と三階は、依頼受諾や報告場所。四階から上はギルドマスターの執務室やギルド職員の作業スペースとなってます。
私は三階に向いました。
私のランクはA。
ハンターはランク制に分かれてます。
上級はA・Bランク。中級はC・Dランク。下級はE・Fランクという形です。
番外で、超級のSランク。一点特化のExクラスもありますが、本当にそっちは極々少数です。今まで遭ったこともありません。
三階はギルド職員がいるだけで、他のハンターはいません。
当然といえば当然。
三階は上級以上のハンターのみが依頼を受けられるスペースなので、二階と比べるとあまり人がいません。
一人の女性と目が合った。
私は踵を返して、中級以下ハンターの依頼観覧場所になっている二階へいこうとすると、
「アリアちゃん。お待ちしてました!」
ギルド職員。アリータ・ノルウェン。
私がまだ下級Fランク……つまりハンターになったばかりの頃からの顔見知り。
「指名依頼がたくさん来てますっ。絶対に受けてください!」
「――いやです。どうせパーティー出席とか、七神獣の神子と繋がっているってアピールしたい貴族連中からでしょう。受けませんよ」
「そう言わずにっ。ハンターギルド所属している中でも、指名依頼達成率がアリアちゃんが最下位で、、このままだとランクダウンになるかも」
「別に良いですよ。元々上級になるつもりは無かったのに、そっちが勝手に上位に組みしたんですよね?」
「うっ。そう、ですけど、アリアちゃんのような神子さまを、中級や下級に置いておくなんて出来る訳がなくて、ですね」
アリータさんは言いにくそうに顔を俯ける。
……アリータさんは悪くない事は知ってる。悪いのはギルドマスターですよね。
私はため息を吐いて、指名依頼の回覧をすることにしました。
案の定、ロクでもない依頼ばかり。嫌になります。
【緊急依頼クエスト。上位ハンター:アリア・クラウン・エクスデス】
【ミリシタノ山岳地帯において、全長約150メートルの超大型魔物、サイクロプス出現】
【対応可能なハンターが少なく、このままでは市街地にまで到達する可能性あり】
全長150メートル超えの魔物なんて初めて聞きました。
七大罪の大魔神王みたいなのがいるのですから、居ても不思議ではないけどね。
「アリータさん。コレを受けます。指名依頼の件は、これで終わりで良いですよね?」
「は、はい。高難易度クエストの指名依頼ですので、問題はありません。魔物が居るのは、ミリシタノ山岳地帯。早馬で一週間ほど掛かりますが、馬はギルドで用意しましょうか?」
「構いません。それに現地に行くつもりはありませんから」
「え?」
冗談じゃないです。
ミリシタノ山岳地帯は早馬でも一週間かかる距離。普通に飛んでいっても3日から4日は必要。
ローズ様は今日中に帰るって言ってるのに、そんな遠くに行く訳にはいきません。
最近のローズ様は、とても甘え上手になってきてとても可愛いんです。
こう、私が弱い所を刺激してくるので、ついつい過度に接してしまいますが、ローズ様はきちんと受け入れてくれます。
今日はオモチャも買ったので、特に楽しめるのに、サイクロプス如きにローズ様との一時ほ邪魔されたくないです。
「『千里図』展開」
遠くの物を見る魔法。千里眼は自分でしか見えませんが、千里図は空中に半透明な図を映し出して、自分以外の人にも見せることが出来ます。
ただ、これは上空からの映像しか見えないので、千里眼のように対個人を見るには向かないですね。
どちらかと言うと戦争において、敵の軍を見たり、敵国の動向監視するのに使用される事が多い魔法となってます。
因みに発動するには、Bランク以上の魔法師が最低10名は必要です。
場所は依頼書に記されていたので、その場所まで映像を移動させます。
そこには確かに巨大なサイクロプスが居ました。
上空からの映像では、右手に巨大な棍棒を持ち、一歩踏み出すごとに地面が揺れてます。
この魔物の前には、確かに人間なんて蟻みたいなものでしょう
私は千里図に写っているサイクロプスにロックオン。
魔法陣を展開させ、一撃を放つ
――天罰式・断罪剣――
天から墜ちる巨大な剣が、サイクロプスを一刀両断。
これで終わりです。
「では、指定依頼のノルマ達成で良いですね? 討伐料金は、私の口座に振り込んでおいてください」
「わ、わかり、ました」
驚愕した表情のアリータさん。
……この人も、他の人と同じように私を怪物か化物扱いをするんでしょうか?
長い付き合いの人がそうなると、少し、堪えます。
でも、私は、あの悪魔みたいな事にはならない。なりたくありません。
悪魔が道を外した時には、ローズ様みたいな方が居なかったから、ああなったんです。
私には、ローズ様がいる。
ローズ様が居てくれれて、きちんと見てくれるなら、他人がどんなに偏見で見てきても平気。
私はアリータさんの顔を見ることなく、階段を降りた。
先程までと違いエントランスはかなり騒ぎになっていた。
私は無関係ですよ、ね?
少し気になって耳を澄ませる。
「一大事だ! デッシュティル王国に政変が起こったぞっ」
「数日後に王位に就くはずだったヴァシリアム第一王子は行方不明?」
「政変で次の国王になったのは、悪名高きガキャミラ公爵家の長男アルギレ・グシャバル・シーン・ガキャミラかよ」
「えぇ、アレが国王になるの? 最悪なんだけど……。当分、デッシュティル王国に行くの辞めよっと」
「私の従姉妹。デッシュティル王国にいるけど、早めに避難させようかなぁ」
「ディスペリア帝国が一年前の戦争で負けてようやく落ち着いてきたと思ったら、次はデッシュティル王国かよ。中々落ち着かないな――」
「おいおい、お前等、それよりも重大案件があるだろ。「憤怒」魔王が顕れたんだぞっ」
「それは誤報じゃないのか? 今まで何人の自称「魔王」が現れたんだよ」
「そうね。証拠もない不確か「魔王」よりも、ハンター活動に影響のあるデッシュティル王国の政変らついての情報を集めていかないと」
ハンターギルドのエントランスは喧騒に包まれた。
売店で急遽販売され始めた号外新聞を手に取り、お金を店員に渡すと私は慌てて外へと出ました。
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