第8話 (元)悪役令嬢と「色欲」魔王の配下
逆召喚された私は、地面に放り投げられる形になった。
体中が痛い。かなり痛い。
この召喚術は人間用には作られてない、あくまで悪魔や精霊、幻想種を喚び出すためのもの。
それを人の身で使うと、当然ダメージを受ける。
理解りやすく例えるなら、海の中を何の装備をせずに高速強制移動させられた感じ。
下手すると死んでたかもしれない。
こうなったのは、アリアがしている手錠のせいだと思う。
手錠による私の魔力放出がカットされたけど、ナナザイを喚ぶための呪文は完成していた。
魔力不足による逆召喚。
昔、召喚術に関して習った時に、こういう事も起こりえるって聞いたことがある。
魔力だけはかなりある私には関係ないと思って油断していた。気をつけないと。
痛みがある身体を起こして周りを見た。
松明が壁に何本か設置された薄暗い洞窟のようでドーム状となっている場所だ
そこには悪人面の男達が10人近くいた。
そして壁際には、ショートカットの茜色の子が縛られて置かれていた。
……やばい。かなりやばい状態な気がしてきた。
――な、なんだ、こいつはいきなり現れやがった――転移術か。いや、人間のそれはお伽噺のハズだ――おい手には魔力封じ、首に武力封じがされてるぞ――なら、どこかの魔術師か魔法師が奴隷を使った実験に使ったんだろうよ――へへへ、こんな上玉をもったいないことをするぜ――さっき捕らえたガキは他に用途があるみたいだしな――コレは俺たちが有用に使ってやろうぜ――
下卑た笑みを浮かべる男達。
痛みが走る身体を、なんか立ち上がらせて男達を睨み付ける。
今の身体で、どれぐらい戦えるだろう。
この私がこんなに弱くなるなんて……。
「おい、なにを騒いでいる」
「ボス」
ボスと呼ばれた男が奥の方からやって来た。
一目で強いと分かった。一分の隙もない。
魔力・武力封じが無ければどうとでもなる相手だけど、今の私では絶対に勝てない相手だ。
でも、気持ちでは負けたくない。
私は威嚇するように、相手を睨みつけた。
「その女はどうした」
「突然、現れたんでさぁ。たぶんどこぞの術士が実験に奴隷を使ったんだろうって話をしてて――」
「ほう。奴隷にしては良い目をしてるじゃねぇか」
私を値踏みするかのような視線。
……ハッキリ言って気持ち悪い。
貴族の社交界には、公爵令嬢として何度も行ったことはあるけど、そこでも値踏みされる視線は受けたことはある。でも、これはその時に感じたものとは、また別種のヤツだ。
しばらく値踏みをしていた「ボス」は、手で指示を出す。
何をするつもり。
男が壁際に縛られて放置している女の子をボスの前まで連れて来た。
女の子は抵抗してるようだけど、縛られているためモゾモゾとするのが限界のようだ。
ボスの目の前まで女の子が連れてこられると、ボスの瞳が金色に爛々と輝く。
この魔力は七罪の一つ『色欲』に間違いない。
本来なら魔力に違いは分からないけど、私は七つの大罪を持つ古の大魔神王と契約しているため、七罪特有の魔力はなんとなくだけど分かる。
……そうか。私が此処に召喚されたのはコイツの所為か。ナナザイに近い魔力を持つ者が近隣に居たため、逆召喚になったんだ。
「あっ……あ、あぁあ、――っ……!!」
女の子の声が悲鳴から、娼婦が出すような淫靡な声へと変わっていく。
膝から崩れ落ちると、男がナイフを取り出し女の子を縛っていた縄を斬る。
「その身体の疼きを止めたかったら、あの女を犯せ。そうすればその疼きも治まるぞ」
「ハァ、ハァハァアア――ぁぁ」
女の子は息を荒くしながら、私の方へとふらつきながらやって来た
そして女の子は、私をその場に押し倒す。
――っぅ、背中が、岩に当たって痛い。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。がまんできないがまんできないの」
胸元の服を手で思いっきり引きちぎった。
「きゃっ」
私の胸が露となり、男達の視線を強烈に感じる。
女の子は舌を出して乳首を甘噛みしながら、優しく揉んできた。
拙いながらも妙に上手で、私はなんとか喘ぎ声を出さないようにするのが精一杯だった。
たぶん『色欲』の魔力の影響のためだろう。いつもよりも感度が高い気がする。
「ひとりだけはだかははずかしいですよね。わたしもぬぎます」
「だ、だめ。男に見られるっ」
「はずかしいけど、はずかしいのもなんかきもちよくて、ハァハァ、がまんできないよ」
女の子は上半身の軽装な上着と下半身のショートパンツと下着を一気に脱ぎ捨てた。
年相応の膨らんでいる胸。全体的にまだ子供らしい体付き。
『色欲』の魔力の所為で幼さと淫靡さが混ざり合い、私も妙な気分になる。
やばい。ほんとうにやばい。このままだと雰囲気に流される。
「おねえさんもぬご。はだかになろ。はずかしいけど、とてもきもちいいよ」
「だ、だめ。しっかり、んっ、――んん」
女の子の舌かせ口の中に入り言葉を封じられる。
しかも無駄に上手っ。この子、本当にディープキス初めてなの? 「色欲」の悪魔たち怖い。
「ボス。俺たちも加わっていいか。あんなの見せられたら我慢できねえよ」
「好きにすると良い。お前たちの色欲に忠実な姿は嫌いじゃないぞ」
ボスは嗤いながら男達に許可をした。
ディープキスが終わり。女の子の口が口元から胸元へ、そして下半身へと移動する。
「来ないでっ。きたら、殺すっ」
「ハハハ。ガキに好きなようにされて感じまくってるクセに、よくそんな態度を取れるな」
「心配しなくても、ガキ共々、天国を味合わせてやるよ。もうまともなコトじゃ、感じられなくなるしれないがなぁ」
下卑た笑みを浮かべ、男共は嘲笑しながら近寄ってくる。
魔力を発動させようにも、腕輪が邪魔をして発動させることができない。武力も首輪で封じられているので無理。
このまま何もできないまま犯されるの……。
それだけは絶対に、イヤ、だ。
私に触れていいのヒロインのアリアと、契約しているナナザイ、だけだ!!
「 ぁ 」
黒い刃のカタチをした光が奔り男達を斬り裂く。
空間が歪み、そこからは全身黒ずくめの、なぜかメイド服を来たナナザイが姿を表した。
ナナザイは無言で、男達を黒い刃で斬り裂いていき、男達は成すすべもなく殺されていく。
抵抗するために剣を抜くのもいるが、剣と一緒に肉体も一瞬で斬られる。
10人ほどいた男達は、瞬く間に肉片となって地面に落ちた。
「おいおい、ご主人サマ。こんな薄暗い洞窟で浮気かヨ」
「浮気じゃないわよ! そもそも浮気って何よっ。この子は「色欲」の魔力に当てられて、仕方なくっ」
「ふぅん、「色欲」の魔力、ネ」
ナナザイが女の子に触れると、纏っていたイヤらしい淫靡な雰囲気は消え、目をパチパチさせて、自分と私の姿を確認する。
「あ、あれ、私、わたし、あっ、あああああ、――――」
女の子は、「色欲」の魔力に当てられている期間の記憶があるのか、酷く動揺して、そしてふらつき倒れる所を慌てて支えた。
洞窟全体が揺れる。
ボスの方を見ると、足で思いっきり地面を踏み込んだみたいだ。地面にかなりの亀裂が奔っている。
「キサマ、悪魔か。俺が誰の命令で動いているのか分かってるのか」
「分かってるヨ。その魔力からして「色欲」魔王からの命令しょ」
「ふっ。確かに俺は「色欲」魔王さまの直属配下の一人で、命令を下さったのも魔王様からだ。だがっ、今回の命令の大本は、更に上の御方。我ら、全ての悪魔の始祖にして根源、七つの大罪を所有する至高にして最強の悪魔、古の大魔神王さまからの命令だ。それを邪魔する意味は分かっているのだろうな!!」
……。
………………おい、こら。
ナナザイ! お前が今回の黒幕ってことぉ。
「ナナザイぃ。どういうことか説明してもらおうかしら。勿論、私が納得出来るきちんとしたカタチでね!」
ナナザイに向けてとびっきりの良い笑顔を向けて言ってやった。
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