第6話 (元)悪役令嬢と孤児院 【2】
孤児院につくとアリアはとても人気者だ。
10人ほどの子供が、アリアを慕って周りを囲っている。
うんうん、アリアは本当に良い子なんだよ。……私に対しては、最近、ちょっと行き過ぎな点もあるけど、根は良い子なの。
「セルフィスさんは居る?」
「セルフィス院長は、街へ買い物に行った」
「最近、モンスターや動物が出ないので、お肉が少なくなってるので、その買い出しにいきました」
「そっか。――屋敷のローズ様の部屋の結界を強めにした方が良いですね」
しなくていいよ。
それと私が居るから魔物や動物が居なくなったって事は無いと思うよ。
魔物や動物は、本能で生きてるからね。魔王やらラスボスが住み着いたりしたら、危険を感じて逃げるかもしれないけど。
私は、今はラスボスじゃないし。アリアに監禁されている、どこにでも居る普通の公爵令嬢だから、無関係だと思う。
アリアが言ったセルフィスさんは、この孤児院を経営している女性。
元々この孤児院出身者で、ハンターとして魔物討伐やダンジョンを踏襲していたけど、30半ばで引退。
この孤児院の元々の経営者はもう年で、子供たちの面倒を見るのもキツくなっていたこともあり、そのまま引き継いだとか。
アリアにとってお姉さんポジションの人。
「グレイとアネイスとシューナは、狩りに行ったよ。今日こそは大物を獲ってくるんだって!」
「その三人なら、セルフィスさんに鍛えられてるし、よほどの事がない限りは大丈夫かな。うん」
子供たちが言うには、三人はこんな感じらしい。
グレイ(男)は剣士。
アネイス(女)は弓士。
シューナ(女)は攻撃よりも回復・サポート重視の魔術師。
確かにアリアが言った通り、よほどの事がなければなんとかなる編成だと思う。
それに慣れ親しんだ森でもある。土地勘もあるだろうし、弓士が居れば怪しい人物をいち早く見つけることもできるだろう。
「ローズ様。申し訳ないですけど、子供たちの世話をお願いしていいですか? 部屋でちょっと(ローズ様に使用する道具を)作成したいので」
「イイヨ。マカセテオイテ」
言葉と言葉の間に、妙なのが入った気がするけど、きっと気のせいだろう。
アリアは子供たちに「ローズ様を困らせないようにしっかり言うことを聞いて大人しくしていてくださいね」と言って聞かせて屋敷へと入っていった。
妙に黒いオーラが出ており、子供たちは首を何度か縦に振り了解の意を示した。
「おっかねぇ。あんな黒いアリアねーちゃん見たの久しぶりだぜ」
「前は男子にお風呂を覗かれた時だっけ」
「あ、あれは、事故だったんだ」
ませたエロガキがいる。
アリアのお風呂を覗くとか、私がその場にいたら素粒子レベルまで分解して崩壊させる魔法を唱えてるよ。
ただ気持ちは分からなくない。アリアは同性の私から見てもとても魅力的だ。
「ゲーム」においてローズがアリアに嫌がらせをしたのも、アリアが自分より美しかったのが要因の1つ。
考えてみれば、そんな美少女のアリアに監禁されるのは一種の勝ち組じゃない?
多少の不自由はあるけど、きちんと衣食住ある。
それに身体を互いにくっつけ合う時は少し怖いけど、それ以外は優しくしてくれる。
あれ、特に問題はない気がしてきた。
アリアにこのまま溺れていって、従順だったらとっても優しくしてくれるだろうし……。
思いだす。アリアの肌、白くて、とても綺麗で、胸もほどよい大きさ、お互いの胸を重ねて擦った際も気持ちよく、それにくびれも素晴らして、正に女子の理想の体型。
「ローズ様。ローズ様!」
「ぅん。どうかした?」
「大丈夫? なんかとっても変な感じだったよ」
「あー、うん、ごめんね。ちょっと意識がだめな方に傾いてた。ありがとう」
話しかけてきてくれた子供の頭を撫でる。
危なかった。意識が本当にだめな方に行きかけてた。
もしアリアが居たら、そのまま私は、私でなくなってたかも知れない。
私はノーマル。両刀遣いでもそっち系の女子じゃない。
――よしっ。OK、たぶん、きっと問題なし。
「アリアの部屋を覗いて怒られたこと無いの?」
「アリアねーちゃんの部屋って凄く頑丈で、開けることできないんだー」
「部屋の扉に、綺麗な七色の宝石が埋め込まれててね。セルフィス院長は、「やりすぎよ」って困惑してた」
「そ、そうなんだ」
それって七神獣の力が籠った宝玉だよね。
「ゲーム」の二周目において裏ボスであるナナザイ戦で使用された術。
物理・魔法・因果律などあらゆるモノの干渉を防ぐ絶対防御。「ゲーム」ではナナザイのインチキ攻撃による1ターンキル攻撃を防ぐのに絶対必要だった。
それを部屋の入り口に仕掛けたってことは、アリアの部屋は現状どんな力を持ってしても押し入ったり破壊することは不可能。
例え孤児院が木っ端微塵になってもアリアの部屋だけはそのまま残る。
そこで疑問が1つ。
絶対防御の術を使用してまで隠したいものを部屋においてあるってこと。それがナニか。
勇気と無謀の違いが分からない青二才なら、確かめるために部屋に突撃するだろうけど、私はしないよ。
どう考えてもヤバイもん。
絶対見たら後悔する。私の直感がビリビリって拒否反応を起こしてるしっ。
部屋に入ったら、多分、もう二度とこんな風に青い空の下を歩ける気がしない。
私はそんな最悪な自身の未来予想図を払拭するため、無邪気な子供たちと遊ぶことを決めた。
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