藪から医者
幸い五体満足で大きな病気もせず、食うのに困らずに生きてきた。健康について何かに縋るように思ったことはない。しかしこの世の中に健康に関して切羽詰まった御仁が大勢いらっしゃるようだ。普通の町医者に診てもらうのに不足を感じて暗中模索する様をしばしば耳にする。
ネギを首に巻く以上にくだらないコントのような民間療法があれば、1っ回抜いた血を濾過したのちにもう1度体に戻すという大儀なものも。ほかにも水を泡立てて水素水になりました、とホクホク顔で主張するのには笑わせてもらった。
これらの方法に親しんでいる人は2通り。先述の藁にも縋る思いで藪に手を突っ込む人と、体だけ人並み以上の人物である。
前者は非常に見るに忍びない。重病を患ったとき自分もオカルトじみたものに救いを見出すことがないとは言い切れない。逆にそういった人を金づるとしか思ってないような連中には業腹である。
一方で後者は見苦しい。現状に対してこれ以上何を望むのか。一生風邪にもかからないようになりたいのか、いや不老不死か。漫画の悪役もバカにできない業突く張りである。
何も大金を注ぎ込むだけが愚かではない。よくいるのが口では太っただ痩せただとのたまい、週末となるや嬉々として小便が甘くなること請け合いなケーキやらなんやらをSNSにあげているやつ。これじゃあ太りながら痩せたいと言っているようなものだ。
明日もわからぬ我が身のために尽くすものもいれば、流行っているというだけで町医者未満の連中に血を抜かれてケラケラしている健康優良児もいる。
どちらにしろ他人のあくせくする様を目にすると、包茎手術で48万を吹っ掛けられて、病院からトンづらぶっこいた自分がマシに思えてくる。
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