門が前
仕事の関係で集まりがあり、コース料理を食べていた。その中の一品で茶碗蒸しが目につく。正直あまり好きではない。食い応えがなく全体的に味が単調、そしてなにより私の嫌いな椎茸が入っていることが多いからだ。
匙でいらっていると、ご多分に漏れず椎茸が出土する。出されたものだし観念して口にいれると、歯応えがシャッキリとしている。「椎茸ではなくエリンギか、洒落たものを」と感心して噛んでいると、旨味が止めどなく湧いてくる。
隣にいた先輩にその胸を伝えると「貧乏な家庭で苦労したんだな」と笑いながら言われた。私が口にしたのはエリンギではなく松茸だった。
別に家は貧しくはなかったが、松茸は初めて食べた。二切れ目は「なるほど、これが松茸か」と贅沢に浸れている気がしてくる。
ただ一切れ目、知らないで食べたそれは、やたらうまいがエリンギにしか思えなかったのも事実である。
上等なものを食べるときは上等な心づもりが必要なのだろう。ドレスコードのある飲食店に縁のない私にとっては勉強になった。
その天、神社は親切だ。拝殿にたどり着く前に真っ赤な鳥居が我が物顔で鎮座している。ところによっては長い階段を上らされるまでもある。あれだけ偉そうに門構えを張られて、行くだけで苦労させられては有り難みも感ぜらるる。
神社よりも門構えにあるから、こちらも心構えができるというもの。
人間も同様で肩書きを突きつけられると、萎縮させられることしきりである。
なにか事件があるとどこぞの大学の法学部教授が法律について解説を始める。しかしその内容は法学部の一年生でも知っているような内容であることも多い。
だからといって、その辺の学生を引っ張ってきてテレビでしゃべらせる言うのも様にはならない。
やはり法律事務所か大学名が表示されて初めて、素人もわからない話にもなにか教わった気分になってウンウンうなずく気分にさせられる。
私も小説家になろうの大賞かなにかを肩書きに、なにか傍若無人な振る舞いをしてみたいものだ。
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