しわくちゃ武勇伝

 「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが~」と聞いて何の出だしかわかるだろうか。童話の多くがこうである気がする。


 老人が出てきて、そこからなにかが起きていく。あとは動物や容疑で登場人物を賄っていく。


 ここで若い男女が出てきては、話に肉感がついて生々しく、子供を寝かしつけるどころではないと言うことか。


 やはり昔の家庭では老人が子供を寝かしつける役目を負っていたからではないだろうか、それがこれほどまでら卯人を話の軸に据えられる理由になったのは。


 年を取って若いときほど自由の利かなくなった身体。ややもすれば姥捨て山に放られるような厄介者。ままならない自分を物語のなかでは生き生きとした主人公に仕立てる。


 桃から生まれた子には鬼を懲らしめる力を、竹から現れた子には朝廷を騒がす美しさを持つまでに育て上げた張本人。


 ときには余りある親切心で被害者になることも。しかし彼らは尽くした子や動物によって報われる。


 そこには枯れた身ながら尽きぬ夢が、そして諦めが。それらを夢枕の孫に聞かせてやる心中はいかようであるか。


 翻ってヘンゼルとグレーテルや白雪姫あたりを考えると、白人の年寄りの強かさが凄みのあるワシ鼻とともに思い出される。

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