縦の糸、横の糸

 日本人だから英語は覚えても意味ないと済ませられるご時世ではない。ましてや英語を敵性語という年代なわけがない。


 しかし嫌いな英語というのはある。「アメリカン」だ。コーヒーのそれで、アメリカンとは即ち薄目のやつだ。


 なにをとっぽい言いぐさしやがって、と常々思っていたが、調べたら和製英語だった。


 緑茶なら出涸らしというみすぼらしい、詫びてくるような慎ましささえ感じられる表現がある(アメリカンとは毛色が違うのではあるが)。


 そいつがコーヒーなら肩を怒らせて風切るかのごとく「アメリカン」。言わせたこちらが負けたかのような気さえしてくる。


 なるほど、なんでも舶来語を使えば虎の威を借るなんとやらで、相手を圧倒できる気がしてきた。


 スティックリーディング(stick reading)→棒読み


 レッドアザー(red other)、クリムゾンアザー(crimson other)→赤の他人


 ううん、何やら凄みが出てきたぞ。いや、これじゃただのルー語か。


 そう言えば買うと売るはどちらも音読みで「バイ」。英語でどちらもbuy。


 地球は丸いと思わされるし、ちっとは親しみも感じてやれるではないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る