カッペ都市

 就職先の片田舎を連休に飛び出して、皮田は実家のある東京に帰った。



 「クソ暑いなかご苦労なこって」



 田舎勤めに慣れた彼は、自分もその一部なのも忘れて人混みにウンザリしていた。しかも環境が変わると人間関係をリセットする癖から地元に友人はなく、ただ何となく時間潰しに駅に出ただけという始末の悪さ。



 考えもなくブラつく途中、不埒な目的地を思い付いた。そこえ向かう途中タピオカ飲料屋の屋台にたかる若者を見つけた。世俗と隔たりのある場所で生活していただけに、「本当にこういう連中もいるんだな」なんて、ちょっとした感動さえ覚える。



 さらに足を進めていると信じられないものに出くわす。路地裏のガードレールに腰掛ける女と、そいつにむかって後ろからスマホを構える女。レール女はスマホに対してそっぽを向いてる。どちらも歳は若く、JKかJDくらいだろう。


 かなり面食らったがすぐにピンときた。SNS気取った構図、無駄な色彩加工のカッコつけた画像はこうやって撮られるのか。


 「こういうカッコつけの裏側が一番ダサいな、良いもん見れたわ(笑)」と思いながら目的地に向かった。それは中古のAVショップ。



 好みの素人青姦盗撮もののコーナに向かおうとした。べらぼうに狭い店内で、棚と棚の間隔はひと一人分といったところか。だから途中の小太り中年が邪魔で仕方ない。マッサージものは皮田も嫌いではない。しかし今日は素人青姦盗撮もの。さっきの女二人組くらいの歳のに決めている。


 手始めに咳払いを仕掛けた。動かない舌打ちをする。これもダメ。仕方なくお互いの体温が仄かに感じられるくらい近づいて、プレッシャーによる撃退を試みた。これには堪らず中年も道を譲る。近寄った際に気づいたが、ヤツはイヤホンをしていたから音系の攻めはムダだったのね。


 目当ての区画でたっぷり30分物色して、なにも買わずに帰る。その後、そそられたもののタイトルを検索してサンプル画像と動画で三発もいたした。



 タピオカ、インスタ、中年、皮田。世の中で一番マトモなのは誰なのか。少なからず女連中が経済を回しているのは間違いない。

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