第31話 目覚め!
「ん…」
「フィリア!」
目を開けると、ルイド様の顔が見えた。頬に涙が伝った跡がある。
「ルイド、様…?」
えっと、これは無事に目覚めることができたということ…?やったぁ!体はびっくりするほどだるいけど!
「サフィ、急いで医官を」
「はい!」
ルイド様の指示により、サフィが急いで部屋を出ていく。
「えっと…」
起きて早々ルイド様と二人きりとか難易度高くないですか!?まぁでも起きれて良かった!もうルイド様悲しい顔していないし!…していないよね?
「お茶会中に毒で倒れたんだ」
「ご心配、おかけしました…」
やっぱり毒だったかー。あの変な味って毒のせいだったのかー。
…そういえば、これって粗相即離縁に入るんですかね?
「…よかった」
「へ?」
「フィリアが目を覚ましてくれて本当によかった」
そう言って、私の手を握る。その手はエスコートの時みたいに、温かかった。
「ルイド様…」
こんなに心配してくれたんだ…。なんだかちょっと嬉しいなぁ。
「…あ、ところで、ルイド様」
体がだるすぎて長く喋れないんだけど!不便だなぁ。
「なんだ?」
「これって、粗相、即離縁に、なりますか?」
王妃様のお茶会で盛大に倒れちゃったし…。危機管理もできないのかってなるのかなぁ。でも、無理ありすぎない?まさか殺されかけるとは思わないじゃん?
ルイド様は私の言葉に一瞬キョトンとした。
「そんなわけなかろう。ふっ、この状態でも相変わらず面白いんだな」
と言って、クスクス笑い始めた。
失礼な!こっちは死活問題だよ!?あと、面白いって何ですか!しかも相変わらずって!
「それは、よかった、です」
まぁとりあえず、粗相即離縁にはならないみたいなのでよかった。
「体調はどうだ?」
「体が、すごく、だるいです」
この体のだるさどうにかならないかなぁ。毒盛られたんだからしょうがないといえばしょうがないんだけど。うん、健康体って素晴らしいね!
「そうか」
その時、ドタドタドタッと音がして、扉が開いた。
中に入ってきたのは白髪のおじいちゃんとサフィだ。たぶんあの白髪おじいちゃんが医官かな?すごい音したけど。
「体調はどうですかな?」
「体がだるいようだ」
白髪おじいちゃんがそう尋ねると、私が答える前にルイド様が答える。
確かにさっき体調伝えたけど!でもありがとうございます!正直喋るの大変なんです!さっきまでルイド様と話してたけどね!
「ふむふむ。まだ完全に毒が抜けきっていないようです。3日はここで治療しましょう」
「わかった」
白髪おじいちゃんがそう告げる。あ、会話はもう全部ルイド様に任せましたー。
3日かぁ。3日もお城にいるのか…粗相しそうで怖いわー。まぁ、体調が急変するかもしれないもんね。体を大事にするよ。だってもう悲しんでいる顔見たくないし。
「毒を中和する薬を出しますね。体調が戻るのは明日以降ですな」
うげぇ、少なくとも明日までは体がだるいのか…。なんだその地獄。もうこうなったら寝まくるしかないよね!任せて!だらだら寝るのは得意よ!
「というわけだ。私も仕事の合間に来る。ゆっくり休むように」
「はい」
そう言って、ルイド様と白髪おじいちゃんは部屋から出て行った。
仕事の合間に来てくれるんですね!たぶん明日当たりから暇になりそうだったからよかった!
「奥様、よかったです…」
「サフィ…心配、かけたわね」
部屋に残ったサフィは再び目に涙をいっぱい溜めてこちらに寄ってきた。
「もう、知らせを聞いた時は心臓が止まるかと思いましたよ。奥様が気を失っている間、生きた心地もしませんでしたし…」
「ごめん、なさいね。…どれくらい、気を失って、いたのかしら?」
体感的にそんなに時間経ってないように感じるけど、サフィの隈がひどいし…。
「2日間です」
「そうなの」
…2日か。2日!?てことはサフィ、あなた2日も寝てないってこと!?いや、寝たとしても、絶対そんなに寝てない!隈が物語っている!
「サフィも、休んで…倒れ、るわよ」
「倒れた本人が何を言っているんですか。でも、今日はちゃんと寝れそうです」
そう言って、サフィは優しい笑顔を見せる。
よかったよかった。…待てよ、2日?ルイド様この2日どうしていたんだろう?
「ルイド様は、この2日…」
「旦那様もこの2日、ほとんどこちらにいましたよ。どうしても抜けれない会議には参加していたみたいですけど。恐らく王妃様が国王陛下に何か言ったんでしょうね…。旦那様が特に何か言われることもなかったですし」
「そうなの…」
それはたぶん王妃様だね!恐らく、妻が殺されかけて倒れているんだから見舞いに行かせてやって!みたいなことを陛下に言ってそう。そしてルイド様、2日間ほとんど居てくれたんだ…。陛下が助言した?それでも、なんだか嬉しい。
やっぱり私、大切にされているんだなぁ。
「さてと、奥様はもうお休みください」
「そう、するわ」
私は再び、今度は自分の意志で目を閉じた。
そういえば、アリリスさんどうなったんだろうね?
一日後。
「もうだいぶよくなったわ」
「それはよかったです」
体はまだだるいけど、昨日に比べたらすごくよくなった。ちゃんと喋れるし!白髪おじいちゃんすごい!
「サフィはちゃんと休めた?」
「はい。おかげさまで」
「それはよかったわ」
昨日より顔色がよくなっているし、よかったよかった。たくさん心配をかけてしまったなぁ。ま、今こうして生きているからいっか。
コンコン、と扉がノックされる。
「王妃様が参られました」
それとともに向こうから侍女の声がする。
え、王妃様…!?あ、そういえば倒れたのお茶会中だったー!
「失礼するわよ」
扉が開き、王妃様が入ってくる。王妃様は体を起こしていた私を見ると、胸を撫でおろした。
心配かけてごめんなさい。
「体調はどう?」
「まだ少しきついですが、だいぶ良くなりましたわ」
「それはよかったわ。…ごめんなさいね、私の開いたお茶会でこんなことになるなんて」
そう言って、王妃様は顔を曇らせる。まぁ、そうなるのも無理ないよね。でもひとつ言いたい、王妃様は全く悪くないよ!あれ?この場合って悪いのはアリリスさんだけなのかな?元をたどれば私とルイド様にも行きつきそう。
「気を落とさないでください。私は大丈夫ですから。…またお茶会に誘ってください」
私がそう言うと、王妃様はとてもやさしく笑った。
うんうん、王妃様には笑顔が似合うよ!だって顔面素晴らしいもん!
「えぇ、もちろんよ。そうね、今度はマリーと私たち3人とかどうかしら?」
「とても良いと思いますわ」
粗相即離縁案件には変わりないけど、でも王妃様とマリー様ならだいぶ気が楽だし楽しそう!王妃様とマリー様の絡みも見れるし!
「ふふ。じゃあフィリアちゃんの体調が良くなったら誘うわね」
「はい!」
そうして王妃様は戻っていった。
お忙しい中来てくださりありがとうございます!たくさんの人に心配をかけてしまったなぁ。
王妃様が出て行ってすぐ、コンコン、と扉がノックされる。
「マリーナル・シャルム様がいらっしゃいました」
と告げられる。
マリー様も来てくれたの!?わぁ、嬉しい!
「もう起きて大丈夫ですの?」
扉が開き、マリー様が入ってくる。
「はい、もう大丈夫ですわ」
安心してもらえるように、にっこりと微笑む。マリー様はそんな私を見て、顔を下に向けてしまった。
え!?まさか変な顔してしまった!?笑ったつもりなのに!
「マリー様?」
名前を呼んでみると、マリー様は顔をがばっと上げた。涙目だった。
「もう!心配したんだから!勝手に倒れないでよ!」
デレきましたー!可愛い!…じゃなかった。マリー様にも心配かけてしまった。申し訳ない…。
それにしても、勝手に倒れないでよ…か。そういえば前世で高熱で倒れた時、友人もそんなこと言っていたなぁ。無理して学校行って案の定倒れたんだっけ。我ながらあの時は無茶したわー。でもね、勝手に倒れないでよも中々の無茶振りだと思うんだ。実際私は前世は死んでしまったし。
「理愛はいつもそうなんだから…」
「え」
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