第27話 日常!
「…ということがあったのよ」
「大変でしたね」
疲労困憊のパーティーから一日が経った。
私は今、サフィとこの前お義母様から教えてもらった秘密の東屋に来ていた。疲れたからね!人気のないここでまったりしたくなったよね!それでサフィに昨日のことを聞いてもらっていた。
「本当よ…」
アリリスさんに悪役にされかけるし、子息たちにルイド様の悪口言われるし、ルイド様怖いし。あれ絶対怒ってた。あ、ということはいつものルイド様は怒っているわけではないということか。よかったぁ。
「女性に興味がなくて大切にできない、ね」
あの方たち確かそんなこと言ってたっけ。
「奥様に向かって堂々と旦那様を貶すのはすごいですね」
「そうね。思わずむかついてしまったわ」
淑女らしい口調を保てただけでも褒めてほしい。
「あれ?なら奥様、私にはむかついたことないんですか?私も散々旦那様が嫌いなオーラ出してますけど」
「あー、でもサフィは嫌っていながらも貶すことはしないじゃない」
「それはまぁ、雇ってくれているお方ですし。それに身分が違いすぎるので」
嫌いであっても貶さないなら何ともない。だって人にはどうしても好き嫌いがあるんだし!それにサフィがルイド様を嫌っている理由のひとつに絶対私入っているし。それに、サフィも身内だしね!主人と使用人で、家族でも何でもないけど、私の感覚では身内と同じ感じである。
「そこをわきまえていれば私はむかつかないわよ~」
私もたまに毒づいてるしね!決して嫌いなわけではないけども!勝手に結婚させられたんだからそれくらいは許してほしい。あ、矛盾してる?
「はい、わかりました」
「…それにしても、ルイド様が助けてくれるなんて思わなかったわ」
あの時のルイド様かっこよかったなぁ。あんなことされたら女性方はイチコロなのでは?あ、でも怖かったしどうなんだろう?聞いたことないくらい冷たい声していたぞ。
「そこは私も驚きました」
しかも馬車の中で、言い返したことについて感謝しているなんて言われてねぇ。あー、ルイド様のルートやっておけばよかったなぁ!やっておけば、どういう感じがわかったのに!なんで王太子殿下のルートに行ったんだ私!マリー様とお幸せにな!
「…はっ、これも立派な公爵夫人修行のおかげなのでは」
前よりましになったから声をかけてくれるようになったのか、そういうことだったのか!やったね!
「そういうことにしておきましょうか」
「それにしても、ここはいいところね」
人の流れがほとんどない、のんびりした空間。引きこもりの私には適しすぎている。これでゲームと漫画があったら最高だったなぁ。…あ、前世の友人の漫画借りたままだった。ごめんよ。
「さすが大奥様ですね」
「感謝しないといけないわね」」
ありがとうございます、お義母様!
あの後サフィと他愛もない話をしながら結構時間を潰して、屋敷に戻った。あ、ちゃんとソルディエには報告しているので、奥様がいなくなったーって騒ぎにはなってないよ!
「あ、旦那様が帰られたみたいです」
そして只今夕方である。サフィが窓の外からルイド様の馬車が入ってきたのを見て、そう告げる。
あれ?今日は黒いオーラ出ないのね?ルイド様が助けてくれたって言ったからちょっとは見直したのかなぁ。よかったね、ルイド様!
「では行きましょうか」
私は立ち上がり、サフィを連れて玄関に向かう。
今日は会話があるのかな、どうなのかな。私はあるに一票で!
「おかえりなさいませ」
ルイド様が入ってきたので、挨拶をいつも通りする。
「ただいま帰った。疲れは取れたか?」
「はい」
「それはよかった」
ルイド様はそう言うと、書斎に向かった。
やっぱり会話あったね!気遣ってくれたよ!優しいところもあるんですね!
ダイニングに行って、ルイド様を待つ。さてと、夕飯は会話あるのかなぁ。
「そういえば、王妃様からフィリア宛てにお茶会の招待状が来ていた」
料理を堪能していると、不意にルイド様が話しかけてきた。
おっと、危ない危ない。思わずカトラリーを落とすところだった。…王妃様からお茶会!?招待状!?まさか…!
「あ、はい」
「今回はさすがに行け。立て続けに断るのは無礼にあたる」
「わかりました」
はい、急遽粗相即離縁案件が到来しましたー!せっかく休まった心がもうすでに疲れましたー!
というか、立て続けに…て。前にも招待状来てたんですね。それを断ってくれてたんですね。ありがとうございます!
その後は特に会話をすることなく、ルイド様は食べ終わり書斎に戻っていった。
夕飯を食べ終わり、自室に戻って湯浴みを済ませ、領地の本を読んでいると、不意にドアがノックされた。許可を出すとドアが開き、フレデリクが入ってきた。一通の手紙を持って。
あれ、絶対招待状だ…!
「奥様、こちらが招待状です」
「ありがとう」
手紙を受け取り、中を確認する。そこには、1週間後に小規模のお茶会を開催することにしたからフィリア夫人も来てね、みたいなことが形式ばった言葉で書いてあった。
あ、やっぱり他にも何人か令嬢や夫人方が来るんですねー。
「そこで奥様、この機会を逃すわけにはいかないと思うんですよ」
「はい?」
手紙を読み終わって顔を上げると、フレデリクの目が光った。
あ、なんか嫌な予感がするわ。これはあれだ、リアグランスだ。
「リアグランスです。宣伝してきてくださいね。準備はしておきますので」
「が、頑張ってみるわ」
社交苦手の私には宣伝なんて無理なんだけどね!でもこれは頑張ってくれたフレデリクをはじめ開発チームのためにやるしかないよね!
もともと気が重かったお茶会がさらに気が重くなりましたとだけ言っておこう。
「では私はこれにて」
フレデリクはそう言うと、一礼して部屋を去って行った。
「粗相即離縁案件って、次から次へとやってくるわね…」
昨日、王太子殿下生誕パーティーをなんとか切り抜けたばっかりなのに!1週間後には王妃様と小規模のお茶会ですって!くぅ、これが公爵夫人に課せられた使命なのか…!
あ、王妃様とのお茶会ってつまりお城よね。アリリスさん来そうだわー。覚えとけよ、の内容はこの前で終わりかなぁ。でもあれ、失敗していたよね?まぁいいかー。
「でも離縁されていませんよ」
サフィがくすくす笑いながらそう言う。
「だって粗相してないもの。…してない、よね?」
「私に聞かれても困ります…」
あれ、してないよね?うん、してないはず。現に私はまだ公爵夫人だし!
「あ、お茶会は何を着て行こうかしら」
「そうですね…。薄紫色のカジュアルドレスなどいかがでしょうか」
「いいわね」
となると、つけるリアグランスはフローラル系のやつかな?あ、今度ラベンダーの香りを作ってもらおうかな。
そんなことを考えていると、再びドアがノックされた。許可を出すと、入ってきたのはまたもやフレデリクだった。今度は何も持っていない。
「どうしたのかしら?」
「旦那様がお呼びです」
私が尋ねると、フレデリクが申し訳なさそうにそう言った。
え、ルイド様がお呼び?私何かしたっけ!?まさか、知らない間に粗相していた…!?
「わかったわ」
フレデリクに連れられて、ルイド様の書斎に入る。ここに来たのはこれで2回目だね!相変わらず本や資料がいっぱい!
「お連れしました」
「あぁ」
ルイド様は返事をして、見ていた書類から顔を上げる。
「フィリア、3日後出掛ける。準備をしておくように」
お出掛け!?お出掛けですって!?王妃様との小規模お茶会の前にもう一つ粗相即離縁案件来ましたー!
「わかりましたわ」
「それだけだ」
「はい。では失礼いたします」
そう言い、書斎から出る。
お出掛けかぁ。今度はどこに行くんだろう?また洋服店と宝石店?さすがに何回も買ってもらうのは忍びないんだけど…!違うところを期待しよう!
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