第26話 絡まれ!
「フィリア夫人、良ければお話しませんか?」
男性3人に囲まれました。たぶん見た目的にどこかの子息。一難去ってまた一難とはまさにこのことか…!なんで今日はこんなに絡まれるの!
私はにこやかな笑みを作る。
「何でしょうか?」
この前の舞踏会では話しかけられなかったから油断してたわぁ。そしてよくあの騒ぎの後に話しかけれるね!?そのメンタルすごいよ!私だったら無理!
「今日のドレスはとても綺麗ですね。よくお似合いです」
「ありがとうございます」
アルデさんがデザインしてくれたからね。
「ダンスもとてもお上手なんですね」
「そうですか、とても嬉しいですわ」
ルイド様のリードが上手いからね。あとソルディエが厳しかったからね。
「先ほどは見事でした。手を差し伸べるとは、お優しいのですね」
「いえ、そんなことはありませんわ」
あのまま放置していたら私が完全に悪役になっていたからね。
というか、主に一人しか喋らないんだ。あ、もしかしてこの喋っていない2人は取り巻き的な?そういう構図、令嬢の世界だけだと思っていた…。
「ちっ。そんなんだから見向きもされないんじゃないのか?」
私がにこやかに質問に答えていると、喋っていた子息が急に真顔になり舌打ちしてきた。
おぉ、公爵夫人に向かって舌打ちとため口はすごいメンタルですね!?私じゃなかったらぶちギレじゃないですか!?そして痛いところをついてきたね!
「そうですね」
あくまでもにこやかに淑女らしく。でもここで注意した方がいいのかなぁ。でも身分がよくわからないんだよねー。単純に私がなめられているのか、それともそういう態度がおっけーな身分なのか。でも、私の記憶にこんな人記憶にないからなぁ。…てことは今の私より下だな、うん。
「あと、その態度はいただけませんわ」
「ほう?ちゃんと注意はできるんですか。ただユースエン公爵様の隣で黙っているだけではないみたいですね」
その子息の口調は元に戻った。が、どうみてもこれ馬鹿にされていない?やめてよー…めんどくさいなぁ。これだから社交怖い。
「これでも公爵夫人なので」
私はにこやかに答える。馬鹿にされているなんて気にしていない感じで。
「へぇ。社交にほとんどでないのに」
だから痛いところを突くなー!社交無理!
「ルイド様からあまり出なくてよいと言われてますから」
だんだん頬が引きつってきた…。頑張れ私の表情筋!これも立派な公爵夫人に必要なスキルよ!
その後、しばらく嫌味を言われそれににこやかに返して、を繰り返した。
早くどこか行かないかなぁ…と思っていると、その子息がゲスな笑いを浮かべた。…え、次は何!?急にそんな笑みを湛えないで!?気色悪いから!
「あぁ、もったいないですね。こんなに良くできた方なのに、あんなやつの妻にさせられて。女性に興味がなくて大切にできないような屑な男にねぇ!」
ブチッ
こいつ、いま、なんつった?あんなやつ…?屑な男…?ほう?
「…ふざけんなよ」
「あ?何か言いました?」
私は作り笑いはそのままにして、その子息を冷ややかに見る。
「冗談はそれくらいにしてくれませんか。いくら冗談であってもルイド様の悪口は許せませんわ」
思ったよりも低い声が出る。うん、口調が崩れなかっただけ頑張ったよ私。さっき前世の口調出かけたけど。まぁ、聞こえなかったらセーフだセーフ。
「なんであんな屑な男を庇うんですか?実際、大切にされていないじゃないですか。お飾りにされて。私なら貴女を大切にするのに」
あー、なるほど。そういうことね。さっきまでのやり取りを通じて、私にルイド様の悪口を言っても大丈夫だと、少しでも使えると判断されたのかな。
「お断りしますわ」
「そんなに公爵夫人の座がいいんですか?」
「違います」
「じゃあなんでそんなにあいつを庇うんですか」
子息は若干苛立ちながら聞いてくる。
そんなの、決まっているじゃないか。単純明快で、それ以外はない、とても簡単な理由が。
「身内だからですわ」
距離感は確かに顔見知り程度だけど、ルイド様は私の夫。つまりは身内。身内を馬鹿にされたら、むかつくのは当たり前だよね?
もし、私がルイド様を嫌っていたら何とも思わなかったんだろうけど。私、ルイド様のことは嫌いじゃないからね!
だから、ルイド様の悪口言われたらむかついてしまうのはしょうがないよね。
「は?それだけですか?」
「えぇ。身内は大切ですから」
「そこまでだ」
不意に声が聞こえた。最近よく聞く声。この声は…
「ルイド様」
声のした方を見るとルイド様が立っていた。無表情で。
ルイド様、無表情こっわ!いつも無表情見ているけど、なんか今の無表情怖すぎない!?そして目が冷たい!さては、聞いていましたね!?
ちなみに子息たちは顔を青くしている。
「さっきから聞いていれば、私だけでなく私の妻も馬鹿にして。…許されると思うなよ」
「い、いえ、これは…!」
「私は何も…!」
「私も見ていただけです!」
ルイド様がそう冷たく言い放ち人睨みすると、子息たちはさらに顔を青くして何やら弁明を始めた。なんか見たことあるな、この光景。令嬢バージョンで。
「傍観者も同じだ。公爵家を冒涜とはよくやるよな」
そうルイド様が告げると、子息たちはダッシュで去って行った。
ルイド様、つっよ!
「えっと、ルイド様」
「大丈夫だったか?」
「あ、はい」
あれ、もしかしてルイド様は私を助けてくれた…?え!あのルイド様が!?帰る時に呼びに来る以外来ないはずのあのルイド様が!?
どちらにせよ、私は助かったから、お礼を言っておこう。
「あの、ルイド様。ありがとうございます」
「あぁ。…疲れてそうだな。もう今日は帰るか」
「はい」
あの後、王太子殿下に帰る挨拶をして、会場を出て馬車に乗った。
馬車に座って一息つく。
「ふぅ…」
今日のパーティーはいつも以上に疲れたわぁ。アリリスさんに冤罪吹っ掛けられて、子息たちに絡まれて…散々だなぁ。まぁでも、粗相即離縁がなかっただけましか。帰ったら即寝よう。たぶん明日はベッドから落ちるなぁ。
「そうだ。あいつらに言い返していたな」
「え、あ、はい。…だめでしたか?」
え、どうしよう。言い返しちゃだめだったかなぁ。…はっ、これは粗相即離縁なのでは!?でも身内を貶されたら言い返したくなるよね!前世でもそうだったなぁ。
ルイド様は少し表情を柔らかくして、こう言った。
「いや、感謝している」
「それならよかったです…っ!?」
え、今ルイド様なんて言った?感謝している?あのルイド様が感謝してくれたの!?
「どうした?」
「いえ、なんでもありませんわ」
やっぱ最近のルイド様おかしい…。まぁでもいっか。新たな一面を知れたってことで!
窓の外を眺めるルイド様の横顔をちらっと見る。…あの時のルイド様、すっごく怖かったけど、かっこよかったなぁ。それにルイド様が来た時安心した。やっぱ夫の存在は距離感はどうであれすごいんだなぁ…。
そう感じたパーティーだった。疲労感はすごいけどね!
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