第25話 パーティー!
そんなこんなしながらやってきました。王太子殿下生誕パーティー。
「はぁ…」
私は今、この前ルイド様と注文しに行った薄オレンジ色のドレスを着て、同じく注文したアクセサリーをつけている。
髪をセットしていたサフィは呆れたような顔をしていた。
「何度目のため息ですか…」
「だって、粗相即離縁よこれ」
王太子殿下生誕パーティーでしょう?おそらく今までで一番粗相即離縁案件すぎる!
そしておそらく来るであろうアリリスさん。
「はい、できましたよ」
「ありがとう」
今日の髪形はアップだ。さすがにパーティーがパーティーなので、すっきりした方がいいということだった。
「はぁ…。うん、行きますか」
ちょっと気持ちを切り替えよう。うん、パーティーに行けば友人のマリー様に会える!…あ、マリー様って王太子殿下の婚約者だった。つまり忙しい…!
案の定無言…でもなかったがほぼ無言のような時間を馬車で過ごし、会場に入る。
そういや最近ルイド様と一言二言は喋るようになりました!お出掛け効果です!といっても、今日はどうだった?楽しかったですわ。て感じだけど。まぁ、前に比べたら進歩よね。赤の他人距離が顔見知り距離くらいには縮まったんじゃないかな?
会場に入った後は、そのまま王太子殿下の元に行く。マリー様も斜め後ろに控えていた。
「本日はお誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます」
祝いの言葉を述べ、頭を下げる。
それにしても、さすが乙女ゲームの主役級だなぁ。何回見ても爽やかイケメンである。というか、前世で王太子殿下ルートにいったから、見飽きるくらい見たんだけどね!
「ありがとう。今日は楽しんで」
「はい」
王太子殿下の言葉をもらったので、その場を離れる。
えーっと、この後は一回ルイド様の踊るんだよね。その後は自由時間…というなの地獄。
「この曲が終わったら踊る」
「わかりましたわ」
端でルイド様と今かかっている音楽が終わるのを待つ。
「…似合っているな、そのドレス」
おっと危ない。一瞬バランスを崩すかと思った。…はい!?今なんと!?ルイド様が褒めた!?初だよ初!というかルイド様が選んだんだからね!似合ってなかったら困るよ!
「ありがとうございます。ルイド様のおかげですわ」
表情には出さずににこやかに答える。あ、夫婦っぽい。そうだ、ここは社交だ。仲良さそうな感じを醸し出さなくては!
「よし、行くか」
「はい」
そう言って、ルイド様にエスコートされながら、ダンスの輪に入る。
戦場に行く気分。足踏まないようにしようっと。…まって、今からの曲テンポ速くない!?ルイド様、ダンス上手だからきっとリードしてくれるはず!よろしくルイド様!
にこやかな笑顔を浮かべながら、足を踏まないように踊る。ルイド様はというと、それはもうキラッキラした笑みを湛えながら軽やかに踊ってらっしゃる。おうふ、前も思ったけどこの顔面でその笑顔はだめですわー。そりゃたくさんの令嬢が寄ってたかってくるわけだ。
目の奥にめんどくさいの感情が読み取れますけどね!私もめんどくさい!
なんとか足を踏まずににこやかにダンスを終え、端にはける。ふぅ、一仕事終了。後はどう過ごそうかなぁ。アリリスさんは今のところ見当たらないけど。
「じゃあ、私はこれで。時間になったら呼びに来る」
「あ、はい」
ルイド様はそう言って、どこかに行ってしまわれた。多分今から貴族様がたの腹の探り合いとやらに身を投じるんだろうなぁ。頑張れ。
さてと、どうしようかなぁ。マリー様はまだ忙しそうだし…。今日は話すの無理かなぁ。
とりあえず、飲み物取りに行くか。
オレンジジュースを取って、壁の近くに寄る。周りの視線が刺さるけど、気にしない気にしない。
「ふぅ」
今回は本当にどうしようかなぁ。前は友人欲しいなぁなんて思っていたけど、マリー様という素晴らしい友人ができたし…。人脈作りはしといたほうがいいかもしれないけど、そもそも結婚したときに何もしなくていいって言ってもらっているからなぁ。つまりあれだ、1人大切な友人ができたから他に作る気なくなっちゃった、みたいな。
あ、ルイド様観察しようかなぁ。…いたいた。おぉ、自分よりも一回り二回り上の貴族たちとにこやかに話してらっしゃる。すごいなぁ。…話している内容は怖いので考えないようにしよう。
「何か食べようかしら」
せっかく美味しそうなお菓子とか用意されているし、この前食べてなかったし、時間つぶしに一つをゆっくり食べよう。
そう決めて、お菓子が乗っている机の方へと歩き出した時だった。
ガッシャァアアン
後ろで何か盛大な音が聞こえた。
「…え」
後ろを振り向くと、盛大に転んでいるアリリスさん。その付近に散らばるコップだったものたち。
…うわぁ、嫌な予感がする。これあれだ、フィリア夫人が足をかけてきたんですぅ!て言うやつだ。
アリリスさんは顔をあげて、涙目でこう言った。
「フィリア夫人が足をかけてきたんですぅ!」
と。それはそれは庇護欲をそそるような顔をしながら。もちろん喋り方はぶりっ子で。
はい、正解!一語一句違わずに当たったよ!私すご。
そしてひとつ言いたい。アリリスさんの先にいたのにどうやって足をかけれると?
「フィリア夫人が…フィリア夫人がぁ…!」
そう言ってアリリスさんはポロポロと涙をこぼす。
「…はぁ」
周りの視線が痛い。そりゃあんなに盛大な音が鳴ったもんね?見るよね?今の光景を見られたら完全に私が悪役じゃないですか!何もやっていないのに!
アリリスさんの覚えておけよ、はこういう事だったのかなぁ。あー、頭が痛い。この後どうしようか…。社交苦手の私にこれは酷すぎない?確かに絡まれそうだなぁ…とは思っていたけど、こんな盛大に絡んでくるとは思わないでしょ普通!確かにゲーム内のイベントでも転んでコップ割ってたけど!
「大丈夫?怪我はない?」
とりあえずこのまま固まっていても私が怪しまれるだけなんで、困ったような表情を作ってアリリスさんに手を差し伸べる。
アリリスさんは戸惑った表情を一瞬浮かべて、また元の庇護欲を掻き立てるような悲しい表情をした。
「自分で足をかけてきたのに、そうやって私が自分で転んだように錯覚させるんですかぁ…?」
「…どっちがだよ」
「え…?」
おっと、危ない危ない。思わず前世の喋り方が出てしまった。幸い周りがざわざわしていたのと、私の声が低く小さかったので聞こえていないみたいだけど。
いやだって、ねぇ。自分で転んでおいて、私が転ばしたように錯覚させてるのアリリスさんでしょう?どっちがだよ…て話だよ!
「もしかしたら、このドレスに躓いてしまったのかもしれないわね。ルイド様が選んでくれたもので、私は普段こういう形を着ないから後ろに配慮できなかったわ」
ルイド様と後ろの言葉をさりげなく強調してそう言う。
アリリスさんはルイド様の言葉に反応して、周りは後ろの言葉に反応する。
「違いますぅ!足をかけてきたんですぅ!」
一瞬動揺したみたいだけど、周りのざわめきを聞いて、すぐに元に戻る。
あー、頭痛い…。
その時だった。
「そこまでよ」
凛とした声が後ろから聞こえた。
うん、この光景どこかで見たことあるぞ。
後ろを振り向くと、案の定マリー様がいました。あ、ひと段落ついたんですね…?
「マリー様」
「フィリアも大変ね…。あなた、何をしているの?早く片付けて戻りなさい」
マリー様は私の前に立ち、アリリスさんに厳しくそう言う。
「フィリア夫人が転ばせてきたんですぅ!」
「あら?私が見ている限り自分からわざと転んだようにしか見えなかったのだけど。それにフィリア夫人の後ろにいたじゃない。そこのあなたも見ていたわよね?」
「は、はい!確かにフィリア夫人はこっちに行こうとして、その後ろでそのメイドが自分から転びに行ってました!」
マリー様に急遽話を振られた近くにいた子息は最初こそ驚いたが、はっきりとそう告げる。
こうなればもうアリリスさんに言い逃れる術はなかった。アリリスさんは顔を真っ青にして、急いでコップだったものを片づけて去って行った。
おぉ、逃げ足はっや。
「うるさくしてしまったわね。みんなは引き続き楽しんでちょうだい」
マリー様がそう言うと、見物人たちはわっと散っていった。すげぇ。
「申し訳ありませんマリー様」
「何を言っているのよ。フィリアは何も悪くないんだから謝らないの」
「はい…。助けていただき、ありがとうございます!」
謝罪ではなくて感謝の言葉を口にすると、マリー様は顔を赤くしてこう言った。
「べ、別にフィリアを助けようと思ってやったわけではないわ!殿下のパーティーを煩くされたのが嫌だっただけよ!」
これだからツンデレは可愛い!ツンデレ最強!
「そうですか」
自然と口の端が上がり、にこやかにそう言った。マリー様はそれを見て、まんざらでもなさそうな顔をした。
マリー様はまだやることがあるようで、王太子殿下の元に戻っていった。
忙しい中来てくれたんですね…本当にありがたい…!良い友人を持てたなぁ。
あと、たぶん皆の反応を見る限り私が足をかけたって思っている人は少なそう。よかったぁ。これ、勘違いされていたら粗相即離縁だったわー。あ、もしかしてアリリスさんそれを狙った…?
「はぁ…」
もう今日はここでおとなしくしておこうかな。お菓子食べる気なくなったわぁ。
その時だった。
「フィリア夫人、よければお話しませんか?」
急に男性3人に囲まれた。
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