第24話 完成!
ルイド様とのお出掛けから1日経った。
「おはようございます…落ちましたね」
朝、いつも通りサフィが起こしに来て、呆れた顔をしながらそう言った。
私は久しぶりにベッドから落ちた。いや、だって昨日疲れすぎてね?真ん中に行く間もなく即寝落ちである。
「疲れすぎてね」
「楽しかったのでは?」
「楽しいと疲労は別よ、別」
確かに楽しかったけど!ドレスは好みだし、ご飯は美味しかったし、アクセサリーはキラキラしていたし!だけどまぁ、引きこもりだからね、外出ると疲れるよね!
サフィによって支度えおしてもらい、ダイニングに行って朝食を取る。朝食を取ってサロンでまったり今日の立派な公爵夫人修行は何をしようかなぁ…なんて考えていると、フレデリクがやってきた。5つのボトルを持って。
あれは…まさか…!
「それはリアグランスかしら?」
「はい。ついに完成いたしました」
おぉ!はっや!仕事早すぎ!でもこれであの香水をつけなくて済むとなると嬉しい!
「ここから売り出していきます。それで奥様に頼みがあるのですが…」
「何かしら?」
いやな予感しかしないけど。これあれだ、しゃ…
「王太子殿下生誕パーティーのドレスには使えませんが、それ以降の社交でつけていって宣伝してほしいのです」
あ、今度のやつには使えないのねー。そりゃ昨日頼んだばっかりですもんねー。届いてから洗う時間ないもんねー。ちなみにああいうドレスは優秀な使用人さんが特別な洗い方で洗うそうだ。つまり今度まで香水…!ちくしょう!
「わかったわ。…でも私、ほとんど社交行かないわよ?」
ルイド様にも何もしなくていいと言われてるし。王家主催以外は行かないよ?王家主催の社交もそんなに頻繁にあるわけじゃないし。
「多少は行ってもらいますよ?」
「え」
いやです!前世も今世も引きこもりの私に怖すぎる社交は無理です!あ、でもマリー様がいるなら行ってもいいかも?友人の力は偉大である。
「といっても、王宮でたまに開催されるお茶会くらいですよ」
そう言って、フレデリクはクスクス笑う。
あー、王家主催のお茶会ね…確かに王妃様とは顔見知りだから、他の社交に行くよりは気が楽…じゃないわ。王家主催って粗相即離縁すぎる。いや、他の家での社交も粗相即離縁だけど。というか社交自体が粗相即離縁!
「頑張るわ…」
これもリアグランスのため、そして立派な公爵夫人になるため…!やるしかないか。
「あ、そうだわ。ねぇ、フレデリク」
「もちろんいいですよ。ぜひ試してください」
そういえば…と思ってフレデリクに聞こうとしたら、全部言い終わらないうちに返事を出された。
なんで言いたいことが分かったの…!?確かに完成したリアグランス試そうと思ったけど!
あ、ちなみにサフィは遠い目をしています。ごめんねサフィ。
洗濯スペースに来て、クッションカバーをすぐに洗い始める。
ふふん、洗濯はもう3回目だから簡単なやつはばっちりよ!少しは立派な公爵夫人に近付けたかな!
「リアグランスをちょうだい」
「はい」
洗い終わったクッションカバーを桶に入れて、水を張りフレデリクから受け取ったリアグランスを少し入れる。その途端ふわっと香るヒノキの匂い。
ふむ、あまり試作品とは変わってなさそう?まぁ、変えたとして、ちょっとした成分だよね。
「よし、終わり!」
リアグランスの水割りに漬け込んだクッションカバーを軽くゆすぎ、洗濯終了!
「まだですよ?」
「デスヨネー」
立ち上がろうとしたとき、フレデリクが追加のクッションカバーとリアグランスの残り4つを差し出す。
そんな気がしたよ!試作品のときもそうだったもんね!やったるわ!
「腰が…」
「休憩を挟みつつやったらよかったじゃないですか」
今は自分の部屋にいる。
あの後、残り4つを使って洗濯をした。一回も立ち上がることなくしゃがみこんで洗っていたため、腰がちょっと痛くなった。うへぇ、私も老いたなぁ…。いや、まったく月日立ってないけど。まだぴちぴちの18歳だけど。
「何をしようかしら」
うーん…掃除も料理も庭の手入れも使用人さんの仕事だしなぁ。なんかないかぁ。立派な公爵夫人修行…立派な公爵夫人修行…。
「リアグランスもできたことですし、裁縫をしたらどうですか?」
「あ、それいいわね!」
裁縫かぁ!あ、じゃあ、サロンにあるクッションカバーもこの際一新しようかな?だいぶ上達したんだよ!刺繍も!たぶん使用人さんは一人一枚私作のクッションカバー持っていると思う。あ、ルイド様?恐れ多くて無理です。
「光沢のある白の布に金の糸を用意してちょうだい。サロン用のクッションカバーを作るわよ」
「かしこまりました」
サロンはルイド様の目に触れるかもしれないと思って手を加えていないけど、今考えたらルイド様サロンにほとんどいないわ。いたとしても寛ぐことないわ。お仕事忙しそうだし。
サフィに布と糸を用意してもらって、手早く裁断等を終わらせる。そして針に糸を通してもらい、縫い始める。
たくさん裁縫やったけど、一度も自分で針に糸を通せたことはないです!もう最近は諦めてサフィにやってもらっている。
縫って~縫って~縫いまくって~。
「よし、こんな感じかな」
玉止めして、糸を切る。うん、だいぶ縫うの早くなったんじゃないかな!それに我ながらいい感じ!
さてと、ここからが骨折り作業!その名も、刺繍!
サフィに針に糸を通してもらって、さっき縫ったクッションカバーに針を刺す。よーし、やるぞー。
ちまちまチクチクちまちまチクチク。縫って縫って縫って縫って~。
あ、今回はユースエン公爵家の家紋にしました。サロンに飾るものだしね!客人も来るし、家紋がいかなぁ…て。ほとんど客人なんて来ないけど。客人には見られてもいいけど、ルイド様には見られたくないとは何ぞこれ。
刺繍すること1時間。ようやく完成した。
「ふぅ~。終わりね」
「本当奥様、裁縫お上手ですよね」
できたクッションカバーを見ながら、サフィが呟く。
おかしいなぁ、裁縫とお上手の間に「だけ」が入る気がするんだけど。ちゃんと洗濯もできるようになったよ!裁縫だけじゃないよ!
「あと2つほど作るわ」
作業すること数時間。ようやく3つ目が完成した。
「裁縫は好きだけど、さすがに疲れるわね」
できたクッションカバーをサフィに渡して、伸びをする。ボキボキといい音がなった。
「お疲れ様です。そういえば、先ほど執事長がクッションカバーが渇いたので、キリが付いたらサロンに来てほしいと言っていましたよ」
「あら、そうなの。それじゃあ行きましょう」
サロンにつくと、すでに執事長がリアグランスをつけたクッションカバーを用意していた。
「待たせたわね。どれどれ…」
近付いて、クッションカバーを持つ。ふんわりと香る、優しいヒノキの匂い。
「いい感じね!さすがフレデリクだわ」
「それは何よりです」
こんなに柔軟剤っぽくなるなんて…!さすがとしか言いようがない。
「ではこれを匂いの強さを分けて販売していきましょう。そして今後は種類を増やしていきます」
「よろしくね」
そう言うと、フレデリクはクッションカバーを持って一礼してサロンを出て行った。
「完成かぁ…」
「よかったですね、奥様」
この世界についに前世の知識をもとにした前世の製品もどきができたのかぁ。なんか不思議な感じ。まさかそれが柔軟剤もどきだとは思わなかったけど。うんうん、こういうのがしたかったのよ!上手くいけばユースエン公爵家のためになるし、少しは立派な公爵夫人になれたかな!
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