第19話 試作品!
次の日。
「今日は何をしようかしら」
「奥様、リアグランスの試作品ができたそうですよ」
「あら、そうなのね!」
サフィに支度をしてもらっている時に、サフィがそう言った。
リアグランスとは一言で言うと柔軟剤の香りだけバージョンだ。というか、香り決めて5日で試作品とか仕事早すぎない?とりあえず楽しみ!
支度を終え、朝食を食べる。その後フレデリクを捕まえた。
「試作品ができたそうね?」
「はい。今朝ちょうど」
「それならまだ試していないわよね?」
「え?あぁ、はい」
ふっふっふ。やったわ。それなら、
「じゃあ私が試したいわ!」
リアグランスは私が発案したし!まぁ、柔軟剤の発案者は前世の誰かだけど。そこは置いておこう。この世界では私が発案者、そういうこと!
「奥様ならそういうと思いましたよ」
フレデリクは若干呆れながらも楽しそうそう言う。
あ、サフィはもう薄々わかっていたみたいで、遠い目をしていました。ごめんねサフィ。
来たのはここに住んで2回目の洗濯スペース。今回はサフィだけじゃなくてもちろんフレデリクもいる。
「奥様、こちらがリアグランスです」
そう言って、フレデリクが手に持っていた金属製のボトルを渡してくる。
さて、どうやって使おうか…。なるべく香りをつけたいよね。うーん、でも前世の洗濯機の構造とか知らない…。確か、前世の母は一緒に入れていたよね?でも一緒に入れると効果半減しそうなんだけど。
「どう使うのがいいかしら」
「そうですね、成分的に付けて軽くゆすぐ程度でよろしいかと」
「なるほどね」
じゃあ、先に液体石鹸で洗って流した後にリアグランスを水に薄めてつけようかな。
早速、クッションカバーを桶に張った水に入れて液体石鹸で洗う。この前やったみたいに、布と布をこすり合わせる。ただし、自分に水が飛んでこないように、ね!前より成長したかな?
「お上手ですね」
「ふふ、ありがとう。でもみんなには遠く及ばないわ」
やったぁ、フレデリクから褒められた!1回やったことあるからね、変なことはしないよ。まぁ、使用人さんのように素早く丁寧にはできないけど。
洗い終わって水で流し、再び桶に水を3分の1を張ってリアグランスを少し入れる。
入れた瞬間ふわっと良い匂いがした。これは金木犀の香りね。この前嗅いだ時より薄まっててもうちょっとマイルドになっているけど、これくらいの方がほのかに香るって感じで鼻に優しいかも。
クッションカバーを入れて、馴染ませたあと、水で軽くゆすぐ。リアグランスを全部落とさないように…と。最後に絞って終了。
「こんなものかしらね」
「良いと思います。では次はこちらを」
そう言って、また別の金属ボトルを渡してくる。
え、いつの間に!?というか、フレデリクの後ろに見える台に後4つ同じような容器が見えるんですが…!?全部やれと。ふふ、やってやるわよ!
ちなみにサフィは遠い目をしていた。
「任せてちょうだい!」
よーし、やるぞー!
あれから5つ全部試しました。石鹸の香り、ヒノキの香り、フローラル系の香り2つ、シトラス系の香り。フローラル系とシトラス系は前世でよく嗅いだなぁって理由で選んだやつである。
5つのクッションカバーを皺を伸ばして干す。よし!この仕事終了!
「乾くのが楽しみね」
「そうですね。乾いたら奥様の元に持っていきます」
「ありがとう。よろしくね」
「ではこれにて失礼いたします」
そう言って、フレデリクは台を押して戻っていった。
なんかいいなぁ、こういうの。前世の知識を活用して公爵夫人しているって感じ!少しは立派な公爵夫人に近付けたかな。
そして昼過ぎ。
昼食を食べて次は何をしようかなーと考えていると、フレデリクが一通の手紙を持ってきた。
「奥様宛てにこちらが届いております」
「あら、何かしら」
手紙を受け取り、蝋風を見る。封蝋は王家ではなかった。ひとまずセーフ。何がセーフかわからないけど。えーっと、この家紋どこの家だったかなぁ。見たことあるってことは身分の高い家なんだろうけど…。
「シャルム公爵家からの手紙ですね」
どこの家のだったかなぁと考えていると、後ろからサフィがそっと教えてくれる。
ナイスよサフィ。ありがとう。
シャルム公爵家…だとしたらマリーナル様かな?そういえば、舞踏会でいつかお茶しましょうって言っていたし。
封を切って手紙を読む。うん、予想通りだね!
手紙には形式的に色々書いてあるけど、まぁ簡単に意訳すると、都合が合えば3日後シャルム公爵邸でお茶会しましょう、ちなみに2人でねって書いてあった。
「サフィ、3日後って何もないわよね?」
「そうですね」
おっけい。じゃあ行けるね!わーい、友人と遊ぶの今世初!正確にはお茶会だけど。前世でいうと、友人とカフェ行こう!みたいな感じかな。私は行ったことなかったけど。引きこもりだったし。てへっ。
まぁ、シャルム公爵邸でのお茶会なんで粗相即離縁はかかっているけど。それよりも楽しみが勝る。
「お茶会の誘いですか?」
「そうよ。フレデリク、後でルイド様に確認を取っておいてくれるかしら?」
「ご自分でおっしゃってみてはいかがですか?夫婦ですし」
危ない。手に持っている手紙落とすところだった。
なんて無茶振りを!?あのルイド様に自分から話しかけろと!?え、無理無理無理。あれ、そういえば「おかえりなさいませ」以外で自分から話しかけたことないような?あったとしても1回くらいだよね?
「フレデリクは鬼なのかしら?」
夫婦って言っても仮面だよ!お飾りだよ!他人の距離感から1ミリも動いていないよ!
「まぁ、挑戦してみてください。もし無理なら前日にでも伝えておきますので」
つまり今日明日明後日の3日間で言えよってことですね!ちくしょう!
「うぅ…頑張ってみるわ…」
9割無理だと思うけど。まぁ、ルイド様が話しかけてきた後すぐに言えばいいかな。あれ、そもそもルイド様が話しかけてくることなんてほぼなくない?え、何この無理ゲー。前世でテストの日程間違えてノー勉で挑んだ時より無理ゲー…。
その後、立派な公爵夫人修行の一環として屋敷に飾る花を選んだり、ハンカチに刺繍を施したりしていると、再びフレデリクがやってきた。5つのクッションカバーを置いた台を押しながら。
「あら、乾いたのね!」
「はい。どうでしょうか?」
一番右に手前に置いてあったクッションカバーを取り、匂いを嗅いでみる。
「うん、いいんじゃないかしら!」
ほのかに香る金木犀の香り。良い感じね!
他のクッションカバーの匂いもほのかな感じでとても良さげだった。ただ…
「香水が好きな女性には匂いが弱すぎるかしら?」
すっかり忘れていたけど、私が丁度良いからといって他の人が丁度良いとは限らない。人の感性は人それぞれだし。
「そこは匂いの強さを分けて売り出したら良いでしょう」
なるほど、自分の好きな匂いを好きな強さでってことですね!それならよさそう!そもそもこれが香水好き貴族に受け入れられるかは別として。
「それはいいわね!」
「ではこれをもう少し改良して本格的に作り始めます」
もう十分な気がするけど、まだ改良するのね。さすがフレデリク。楽しみだなぁ。
「よろしくね」
「はい。お任せください」
そう言ってフレデリクは台を押して戻っていった。
「楽しみですね、奥様」
「えぇ、とても楽しみよ」
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