第17話 お茶会!

 あの買い物から2日後。

 あの後、ちゃんとアクセサリーも買ってもらいました。ネックレスとブレスレット。上品だけど可愛らしい感じ。

 昨日の夕方、ドレスとアクセサリーが届いた。仕事早い。無茶振りしてすみませんね…。


 ちなみに今日はお義母様と王妃様とお茶会です。もう一度言います。王妃様とお茶会です。

 えぇ…。なにそれこわぁ。粗相即離縁案件すぎる。もしかして私を離縁させる要因を作るためにセッティングした…?


「はぁ…」


「奥様、元気を出してください。とってもお綺麗ですよ?」


「いや、そうじゃなくて…」


 お茶会気が重い。ただでさえ社交苦手なのに、今回は相手が王妃様。王妃様だよ?この国の母だよ?無理無理無理。


 ちなみに今、新しいドレスとアクセサリーを付けています。とても綺麗。やっぱりこのデザインと形好きだわぁ。でも値段考えたら気が遠くなるわぁ。まぁ、言うて今世の実家はそれなりの身分で資産もそれなりにあるから、このドレスはちょっとレベルアップしたなぁくらいなんだけど、前世の感覚的にね?桁が違いすぎるよね。


「はい、できましたよ」


「ありがとうサフィ」


 今日の髪形はサイドは残して、後ろ髪を抜け感シニヨンである。サイドは軽く巻いてある。サフィすごい。ちなみに私は何も指示していない。だってこういうのわからないんだもん。


「よし、行きましょう」


「はい」


 サフィを連れて、部屋を出て玄関に行く。玄関で少し待っていると、お義母様が来た。

 お義母様は落ち着いた深い青の上品なドレスを着ていた。めちゃくちゃ大人の女性!て感じ。すごい。私も将来こういう年の取り方できるかなぁ。


「フィリアちゃん、よく似合っているわよ!」


「ありがとうございます。お義母様もとてもお似合いですね」


「あらぁ!嬉しいわ~!」


 お義母様はそう言って笑顔を浮かべる。見た目は落ち着いた大人の女性って感じなのに口を開くとおばちゃん感。うん、なんか良いね!私は見た目も口開いてもどことなく漂うモブ感あるのに。立派な公爵夫人修行して、モブ感消さなきゃ…!


 そうひっそりと決意して馬車に乗り込んだ。



 王宮に着いた。

 お久しぶりですね王宮。この間の舞踏会振りじゃないかな?あの時は大変だった…。


 王宮内をしばらく歩き、ひとつの部屋に入る。その部屋は中庭に出れる部屋らしく、大きな窓が開いていた。

 わぁ…綺麗。さすが王宮。中庭には色とりどりの花が咲いていて、緑の葉は日の光を葉びて輝いていた。


「綺麗ですね」


「そうね。ここは王妃様の趣向が凝らされているのよ!」


「そうなんですね」


 王妃様のセンス素晴らし…。さすが王妃様。はっ、立派な公爵夫人になるにはこういうセンスも磨かなければならないのでは…!?


 しばらくすると、王妃様が部屋に入ってきた。私とお義母様は立ち上がり一礼する。


「本日はお招きいただきありがとうございます」


「ありがとうございます」


 お義母様を倣ってお礼の言葉を口にする。王妃様は優しい笑みを浮かべてこう言った。


「よく来てくれたわね。ソーウィラはいつも通りでいいわよ。貴女に堅苦しい態度は似合わないわ」


「ではそうさせてもらうわ!」


 お義母様の態度が一気に元に戻る。堅苦しい態度に似合うも似合わないもないと思うんですけど…!?敬語がなくなるほど仲良いんだ…。さすがユースエン公爵家。


「ふふ、驚いているわね。実はソーウィラとは幼馴染なのよ」


 私が固まっていると、王妃様がそう優しく教えてくれた。

 なるほど、幼馴染なのか。そりゃそうか、王妃様は結婚する前まで貴族の令嬢だったんだから。


「そうそう、ソフィアに紹介するわ!新しい娘のフィリアちゃんよ!」


 ソフィアとは王妃様の名前だ。…名前!?まさかの名前呼び捨て!?幼馴染とはいえそこまでできるの!?すげぇ。


 お義母様に紹介されたので、私は一礼をする。


「フィリアと申します」


「フィリアちゃんね!お久しぶり。ソーウィラの相手疲れるでしょ」


 そう言って、クスクス笑う。

 …フィリアちゃん…ちゃん!?


「あら、失礼しちゃうわ!」


 お義母様がわざとらしく怒ったふりをする。


「ふふ。冗談よ」


 王妃様、なかなかお茶目な性格してますね?お義母様の反応を楽しんでますね?そしてたぶん私は話に入れないやつですね?


 それにしても王妃様綺麗だなぁ。そりゃそうか、攻略対象の生みの母だもんね。ルイド様は人間味のある圧倒的美だけど、王太子殿下は綺麗な好青年って感じである。


「そうそう、フィリアちゃん。マリーと仲良くなったようね?」


 危ない。飲みかけていた紅茶を吹き出す所だった。話に入れないやつだと思って油断してたわ…。そして、マリーって誰!?


「あ、ごめんなさいね。マリーはマリーナル・シャルムのことよ」


 困っていると、王妃様が優しく捕捉してくれた。すみませんねぇ。


「はい。この前の舞踏会で少しお話させていただきました」


「ふふ、あの子結構自分に素直になれないけど心根は優しい子だから、これからも仲良くしてあげてね?」


「はい」


 王妃様もマリーナル様がツンデレなのわかっているんですね。それに仲良さそう。よかったぁ…乙女ゲームでは王妃様はマリーナル様を意地悪いと疎ましく思っていたから。アリリスさんがルイド様ルートに行ったから、関係は良好になったのかな?


「そういえば、王太子殿下の挙式は何時かしら?」


 マリーナル様の名を聞いて思い出したのか、お義母様が質問する。

 …そんなずかずかと聞いていいんですか!?さすがお義母様…。


「あの子たちがお互いの気持ちに気づいた時かしら。もう、2人とも素直になれないんだから」


 王妃様はそう言って楽しそうに笑う。困ったわっていうリアクションしているけど思いっきり楽しんでますね!

 そして王太子殿下とマリーナル様、上手くいっていると思ったのにお互い自分の気持ち伝えてないのか…。これだからツンデレは可愛い。


 いいなぁ、お互い好き同士って。私とルイド様なんて好き?そんな単語は辞書にないぜ?って感じだもんなぁ。ルイド様好き?て聞かれたら好きでも嫌いでもない、普通って答える自信があるわ。


「それは楽しみねぇ!」


「でしょう?」


 そう言ってキャッキャと笑い合う王妃様とお義母様。

 親バージョンの恋バナですねこれ。恋バナかぁ…前世でそういう話してなかったなぁ。一回友人の恋愛相談に乗ったけど、相談する相手間違えた…て言われたっけ。あの後どうなったんだろうね?


「うちの子も王太子殿下を見習ってほしいわ!」


 不意にお義母様がそう呟く。

 危ない、カップ落とすところだった。え、不仲なこと王妃様に言っていいんですか!?それ即離縁になりません!?いや、不仲っていうかそもそも仲がないようなものだけど!


「あらあら、ユースエン公爵殿はこんなに可愛らしい奥様がいるのにねぇ。もったいないわ」


「でしょう!ルイドと王太子殿下は同い年なのになんでこんなに差が出るのかしらね?」


 今度はれっきとしたママ友トーク…に近い何かを始める2人。

 王妃様、可愛らしい奥様なんてお世辞ありがとうございます。嬉しいので受け取っておきます。


 王妃様とお義母様はしばらくお互いの息子について話をした。幼馴染が同い年の子を持つとこうなるのか。とにかく色々すごかった。ただひとつわかったのは、お互い自分の子と相手の子が大好きであるということ。

 こういうママ友いいなぁ。…そういえばルイド様、お世継ぎどうするんだろうね?


「さてと、私たちはここらで失礼するわ!今日はありがとう、楽しかったわよ!」


「こちらこそありがとう。また王都に来た時に話しましょうね。フィリアちゃんもありがとう。またお茶しましょう」


「こちらこそありがとうございます。楽しかったです」


 一礼して王妃様と別れる。

 「またお茶しましょう」はこの際スルーしよう。そうしよう。



 この時私は忘れていた、ここがあの王宮だってことを。


 馬車が止めてあるところまでしばらく歩いていると、不意に声をかけられた。


「あらぁ!お飾りのフィリア夫人じゃないですかぁ!」


 そうだった。ぶりっ子ヒロインアリリスさんは王宮勤めのメイドだった…!

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