第15話 お義母様!
「大奥様がいらっしゃいました」
え!?お義母様が!?来た!?え、近々って次の日なの!?次の日はないと思っていたんだけど…!?
「ど、どうしよう…」
「落ち着いてください。玄関に参りましょう」
後ろに控えていたサフィがそう言ってくれた。
「そうね」
ありがとうサフィ。おかげで少し冷静になれたわ。
サフィとソルディエを伴い玄関に向かう。フレデリクはいつの間にかいなくなっていた。相変わらず仕事早い。
玄関について少し待つと、扉が開き、一人の綺麗な女性が入ってきた。
お義母様だ…お久しぶりのお義母様だ…相変わらずお美しいですね!本当に46歳です!?いまだに20後半って言ってもいけますよね!ごめんなさい、20後半は盛りました。それにしても、血筋だなぁ。こんなに美しい人の息子はそりゃ美しいわ。
「お久しぶりでございます、お義母様。ようこそいらっしゃいました」
「あらぁ、お久しぶりね!少し見ない間に綺麗になっちゃって!」
「ありがとうございます」
よかった…あんたなんかにお義母様と言われる筋合いはないわ!て言われるかと思った。それにしても、前世にいたお喋りなおばちゃんみたいな性格でしたっけ?いや、これはどちらかと言うと親戚のおばさん?前世引きこもりでも親戚のおばさんが来たら一応挨拶していた。
「フィリアちゃんはもうお昼食べたかしら?」
「いえ、まだです」
そういえば、ずっと色々な匂いを嗅いでいて昼ご飯のこと忘れていたなぁ。もうそんな時間か…。というか、匂い嗅ぎすぎて全く食欲わかないんだけど。むしろ今なら何食べてもまずくなりそう。
私の答えにお義母様は目を輝かせて
「よかったわ!一緒に食べましょう」
「あ、ハイ」
そう提案してきた。
無理です。私にはあのキラッキラの目をしたお義母様の提案を断ることはできない…!しかしさすが親子、キラッキラ加減がそっくり。
そして、急遽の食事マナーテストです。うえぇ…上手くできるかなぁ…。
なぜか私は今、庭園の片隅にある東屋に来ていた。お義母様と。侍女はソルディエとサフィのみ。
こんなところに東屋なんてあったんだ…。ちゃんと手入れされていて綺麗にはしてあるみたいだけど。それにしてもだいぶ隠れた場所にあるなぁ。
公爵夫人たるものちゃんと屋敷のことは把握してなきゃだめよね。
「さすがソルディエね!綺麗にしていてくれてありがとう」
「いえ、それがご命令なので」
やっぱりお喋りなおばちゃん感がぬぐえない。ここはソルディエが綺麗にしていたのね。
「さて、フィリアちゃん!昼ご飯食べましょ!」
「あ、はい」
お義母様の声とともに、食べやすいサンドイッチと紅茶が用意される。
…サンドイッチの綺麗な食べ方とは。というか、お義母様って東屋でサンドイッチ食べるんですね。高貴な方だからそういうことしなそうだと思っていた。人は見かけによらないね!そういや前世の強面教師が虫苦手だったなぁ。
外に来たおかげか、鼻が元に戻って食欲がわいてきた。
「いただきまーす!」
「いただきます」
手前に置かれたサンドイッチをお義母様を真似して食べる。サンドイッチをこんなに上品に綺麗に食べる人初めて見た…。
いくらか食べた後、お義母様が口を開いた。
「ここ、気づかなかったでしょ?」
おっと、紅茶吹き出す所だった。いきなりぶっこんできたね!?これはあれか、屋敷の中のこともわかってないの!?みたいなやつ…?いや、それはないか。
「はい。お恥ずかしながら…」
「いいのよ!ここは私と一部の使用人しか知らないのだから。たぶんルイドもルーエレイトも知らないと思うわ!」
ルーエレイト様っていうのはお義父様の名前。つまり前ユースエン公爵。
…てそうじゃなかった。え、ここルイド様たち知らないの!?
「そうなんですか…」
「そうよ!ここはね、私が若い頃ひとりになりたいときに来れるように作ったのよ。疲れて一人になりたいときとか、あとルーエレイトと喧嘩しちゃったときとか!」
あぁ、なるほど。だからお義父様も知らないのか。そしてやっぱりお義母様も公爵夫人として振る舞うことに疲れることがあったんだ。
「ルイドにも教えていないから、フィリアちゃんも一人になりたいときにここを使ってね!喧嘩した時とか相手はここを知らないから気が済むまで居れるわよ!」
そう言って親指を立てる。なかなかお茶目な人ですね!
「そうなんですね。ありがとうございます」
ルイド様と喧嘩なんてしないと思うけど。だって最初から喧嘩してるみたいな距離だし。いや、してないけど。
でも、一人になりたいときか…。確かにこれからそういう気分になることはありそうだなぁ。社交とか社交とか社交とか。
「…やっぱり上手くいってないみたいね?」
不意にお義母様がそう聞いてきた。
おっと、紅茶吹き出す所だった。だから、いきなりぶっこむのやめてください。
そして私何も言っていないのによくわかったね!?これは怒られるパターン…?
「申し訳ございません…」
「フィリアちゃんが謝ることはないのよ!たぶんそうだろうと思っていたから。あの子、本当女性に興味持たないからねぇ。小さいときから、ずっと勉学や武闘ばっかりで。働きだすとずっと仕事一筋なのよ!」
ルイド様って小さいときからそうなんだ。もうこれ筋金入りだね!むしろ鉄!いや、ダイアモンド!
て、そうじゃなくて。
「そういえば、婚約者を選ばなかったんですか…?」
今まで忘れていたけど、身分が高い人は小さいときから婚約者がいる人が多いよね?王太子殿下とマリーナル様も小さい頃に婚約していたはず。ユースエン公爵家となると、婚約者選ぶと思うんだけどなぁ。私の実家のフォルト伯爵家はそこそこ身分高いけど、私自身が引きこもりだったせいか婚約者はいなかった。だけど跡継ぎの兄にはいた。
「最初は選ぼうかと思ったんだけど、あの子が決めた人にしようってルーエレイトと話したのよ!まぁ、そのせいでだいぶ待ったんだけどね!」
「そうなんですね」
お義母様は、まったくもう~といいつつ慈愛に満ちた目をしている。愛されているねぇ、ルイド様。
というか、あの子が決めた人にしようってことは、つまりは恋愛結婚を認めていたんだ。よくそれで恋愛せずに仕事一筋できたね!?さすがダイアモンド入りの仕事人…。
「まぁ、結果的に可愛い可愛いフィリアちゃん見つけてきたからいいのよ!…フィリアちゃんはそのせいで、辛い思いしているだろうけど」
「いえ。わかっていて嫁いだので、辛くはないですわ」
わかっていて嫁いだっていうか、わからせて嫁がされた?拒否権なかったからね!まぁ別にこのまま引きこもって誰かに嫁いでも同じような感じになっただろうし。前世思い出したのは予想外だったけど。
「フィリアちゃんは優しい子ね。こんな子が娘になるなんて、嬉しいわ!ルジアナも他国に嫁いで、身近にいる娘がほしかったのよ」
ルイド様には他国に嫁いだルジアナ様という姉がいる。嫁いだのは5年前だったかな。だいぶニュースになったから、引きこもりの私のもとにも入ってきた。
あと、身近って言ってもお義母様は領地にいるから来るのにはそれなりの時間がかかる。まぁ、他国に比べたら身近か。同じ国内だし。
「私でよかったのですか?」
引きこもりだし、お飾りの妻だし、社交苦手だし。あれ?良いところなくない?
「フィリアちゃんでよかったのよ!」
「…ありがとうございます」
素直に嬉しい。これは良く思われているってことでいいのかな?前世の母と祖母は仲悪かったから、嫁姑問題は実は不安だった。
「そうそう、フィリアちゃん」
「なんですか?」
「明日お買い物に行きましょう!」
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