第7話 ダンス!
次の日。
「おはようございます、奥様。…今日は落ちませんでしたね」
「ばっちりよ」
ちゃんとベッドの真ん中で寝ました。私は学習するからね!
「サフィ、今日の予定は何かしら?」
サフィに身支度をしてもらっている間に尋ねる。いやまぁ、尋ねるまでもなくわかるんだけどね。
「ダンスレッスンです」
ですよねー。昨日ルイド様に言われた王家主催の舞踏会は1週間後。それまでに人様の前に出ても恥ずかしくないダンスを身に付けなければならない。
ちなみに、今世ダンスなんてほとんどしてません。基本中の基本と基本の型だけ覚えた。何せ引きこもっていたし。…今考えればよく引きこもれていたよなぁ。王家主催とかもあっただろうに。
サフィによってダンスレッスン用のドレスに着替えた私は朝食を取り、ダンス練習室に行く。さすが公爵家…ダンス練習室なんてあるんだ…。すご、壁が一面鏡。
「奥様、おはようございます。本日はよろしくお願いします」
部屋の中に先にいた侍女長のソルディエが挨拶をする。
「おはよう。…ダンスの先生はソルディエなのね?」
「奥様、ソルディエ様は少し前まで淑女教育の先生をなさっていたんですよ」
「あら、そうなの」
あれ、でもソルディエって厳しそうなイメージがあるんだけど。あ、もしかして私終了のお知らせ…?
「よろしくね。…実はほとんどダンスができないの。1週間でなんとかなるかしら?」
「奥様が頑張ってさえくだされば、何とかいたします」
「できる限り頑張るわ。即離縁にならないために…!」
粗相をすれば即離縁。せっかく立派な公爵夫人になろうと決めたのに即離縁は悲しすぎる。
「それはないと思いますが…。まぁいいでしょう。とりあえず、一回踊ってみてください」
「はーい」
「相手方は私が務めます」
そういってサフィが前に立つ。
え、サフィってリーダー(男方)できるの、すご!?
「先に謝っておくわ、ごめんね?」
「不安しか残りません…」
足踏むわ、ごめんよサフィ。さすがに前世の知識でダンスはカバーできない。だって見たこともやったこともないからね!
音楽が流れ、サフィと組む。えーっと、どうするんだっけ。あ、そうそう、こうだわ。
ホップステップジャンピング!じゃなくて、ワンツースリー、ワンツースリー、アンドゥトロワ…これは違うか。いや、違わないか。あれ、どっち…?というか、ホップステップジャンピングも3拍子だよね?
「はい、そこまでです」
ソルディエの一言に、私たちは動きを止め、音楽も止まった。
久しぶりに踊ったけど、我ながら上手くできたんじゃないかな。だって3回しか足を踏んでないし!
「奥様…これから1週間みっちり練習ですね」
「あ、やっぱり?」
どうやらソルディエ的には全くだめなようでした。上手くいったと思ったんだけどなぁ…。
「まず姿勢と笑顔は絶対です。勢いだけは謎にありましたが…」
「とりあえずやってみよう精神」
「そうですか、それは大事ですね。では、まず基本的なことから始めましょうか」
ソルディエの笑顔が怖い。真っ黒です。なに、公爵家の侍女さんって黒い何かを自分の中に飼ってるの…?
とりあえずまぁ、一言言えるのは
地獄のダンスレッスン開始!
___数時間後。
「か、顔が攣りそう…あと背中と足」
「昼休憩にしましょうか」
「はーい…」
くたくたです。ずっと笑顔で背筋伸ばしっぱなし立ちっぱなしは引きこもりにはきつい。
本当に表情筋プルプルしてる。
「奥様、お疲れ様です。朝よりだいぶ上手になられましたよ!」
「ほ、本当…?」
「はい!」
ありがとうサフィ。褒めてくれるのはあなただけよ…。あー、サフィの優しさが身に染みる。
「昼ご飯を食べましょう。しっかり食べないと、昼から持ちません」
「あ、昼からもあるんだったー…」
ひゃー、地獄。生き地獄ってまさにこのことでは…?生き地獄って言葉の意味知らないけど。たぶんこんな感じ…。
「これも立派な公爵夫人になるために必要な事ですよ。頑張りましょうね!」
「そうね…即離縁は勘弁…」
「どうしてすぐに離縁の考え方になるんでしょう…」
お昼ご飯を食べ、ダンス練習室でまったり午前中の復習をしていると、ソルディエが入ってきた。
何事も復習大事って前世の先生が言ってた。ただしがっつりではなくまったりだけど。
「さぁ、始めますよ」
「お、お手柔らかに」
地獄のダンスレッスン午後の部スタート!
____夕方。
「今日はこのくらいにしましょう」
「あ、アリガトウゴザイマシタ」
ソルディエが練習室から出ていくのを確認して、その場に座り込む。
も、もう無理。足が動かない…。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だと信じたいわ」
表情筋も足も背中も腕も限界。腕ってリーダーに添えるだけなのになんでこんなに疲れているんだろう…。無意識に力入っているんだろうなぁ。
「奥様はだいぶ上達なさっていますよ。自信を持ってください。舞踏会で旦那様を見返しちゃいましょう!」
「そ、そうね」
私よりサフィの方がやる気に満ち溢れているんだけどそれは。そして見返すとは。あれ、私別にルイド様から見下されてないよね?ない、よね…?あれ?
まぁ、このダンスも立派な公爵夫人になるためには必要だし、どちらにせよ頑張らないと。前世の知識使えないの不利だなぁ。
…あれ、昨日前世の知識使って立派な公爵夫人になろうと色々やったけど、最終的に全部サフィに教えてもらってなかったっけ?…まぁ、いいでしょう。気にしない気にしない。
「あと奥様、そろそろ旦那様がお帰りになるころかと」
「あ…」
バタバタで体を拭いて着替えて髪を整えて玄関前に行く。
さすが優秀な専属侍女だわ。間に合った。
「おかえりなさいませ」
「…あぁ」
ルイド様はそういっていつも通り書斎に行く。はい、サフィは黒いオーラしまってー。
「足、ガックガクなんですけど…」
「早くダイニングに行って座りましょう」
ダイニングに行って席に座る。ふぅ、座るって素晴らしい。
ルイド様も席に着き、夕食を食べる。無言でねっ。なんだか今日の夕食はいつも以上に美味しいわぁ…運動した後のご飯ってこんなに美味しかったんだ…。前世も今世も運動なんてほとんどしてなかったからなぁ。
相変わらず先に食べ終わったルイド様は書斎に戻られる。そして相変わらず後ろでサフィが黒いオーラを発している。
「ごちそうさまでした」
部屋に戻ると、すぐに湯浴みをする。さっぱり~。すっきり~。気持ちい~。
「奥様、明日に疲れが残らないようにマッサージします」
「あら、それはありがたいわ。よろしくね」
「はい」
サフィの厚意に甘えてマッサージをしてもらう。
うい~気持ちい~。疲れた体に染みわたるわぁ。サフィ、マッサージも上手なのね…え、優秀すぎない?私にはもったいなさすぎない?こんな素晴らしい専属侍女を持てて幸せです。公爵夫人も悪くない、かも…すやぁ
「あら?…ふふ、おやすみなさい。奥様」
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