第5話 庭掃除!
「奥様…何をなさるのですか…?」
現在私はユースエン公爵邸の広い庭にある花壇に来ている。庭っていうか庭園だよね。前世思い出して気づいたけど、この屋敷大きすぎる。前世思い出す前に嫁いできたときも、大きいなぁとは思っていたけど、大きすぎる。前世の家何件分よ…。
「なにって、草むしりよ」
「奥様ぁ…」
えーっと、前世の知識的に、草むしりはどうやってたんだっけ。あ。そうそう、確か夏休み明けとか運動会前とかに皆で草むしりと小石拾いやっていたわね。私はずっと小石拾いだったけど。友人が、草むしりは草負けするから無理~て言ってた。
確かあの時みんなは草を上に引っ張っていた。
「まずはこれね」
どれが草かわからないけど、たぶん花がついていないのは草でしょう。
「奥様、それは草ではありません…」
「あら、そうなの。じゃあ、こっち?」
「それも違います…。ここらへんは庭師が草を全部取っているみたいで草はありませんよ」
「そうだったの」
ユースエン公爵家の庭師、すごいなぁ。
しかし、こうなったら別の所で草をむしるしかないよね。どこか草があるところあるかなぁ。
「サフィ、どこか草が生えている場所あるかしら?」
こうなったら聞いちゃおう。ここの庭は広すぎて下手したら迷ってしまうわ。
「そうですね…。庭師に聞いてみます」
「よろしくね」
サフィが近くで様子を見ていた庭師に声をかける。あの人、庭師長かな?
「奥様、草はあちらの方にあるそうです」
「ではそちらに行きましょう」
サフィに連れられて移動をする。着いたのは広い花壇の端っこだ。
「ここです」
「ここね。さぁ、むしるわよ」
しゃがんで草を持ち上に引っ張る。ブチっといい音がして草の上部分が千切れた。
「奥様、根からとってください…」
「根ね。わかったわ」
でもどうやって根から取るのかなぁ。みんなどうしてたっけ…あ、なんか刃が付いたものを使っていたような。確かあれは、鎌…?
「サフィ、鎌がほしいわ」
「鎌は危険ですのでおやめください…。こうするんですよ」
サフィがお手本を見せてくれる。なるほど、根元の方を持つのか。
根本を持って引っ張る。ブチッと音がして根本が千切れた。あれ、おかしいなぁ。
「あれぇ?」
「…て、奥様。草むしりは庭師の仕事ですよ?」
「そうなのね」
庭師の仕事かぁ。それなら仕事を取るわけにはいかないよね。
さて、次は何があるかなぁ。
「次は庭の掃き掃除ね!」
「奥様ぁ…」
さっき屋敷内の床を掃いたし、これはもういけるでしょう!
ほうきを用意し、葉っぱが散らかっている場所に連れてきてもらった。といってもほとんど落ちていないが。
早速、さっき屋敷でやったみたいに方向を定めて掃く。うんうん、成長している。だんだん立派な公爵夫人になってきているんじゃない?
「サフィ!どうかしら?」
「良いと思いますよ」
やったぁ!サフィに褒められたということはやっぱりできているんだな。
「…て奥様。これも庭師の仕事ですぅ…」
「あら、そうなの」
庭師の仕事を取るわけにもいかないしなぁ。他に何かあったっけ。前世の知識的に何か花に関すること…。あ、そうだわ。
「では次は花に水やりね」
「どうしましょう…」
サフィが項垂れる。ごめんねサフィ、これも立派な公爵夫人になるためよ。
ジョウロを持ってきて、水を入れる。たくさん水をかけたいから満タンに入れよう。
「奥様…」
「あ、持てないわ」
「ですよね」
満タンに入れるとこんなに重くなるのか…次からは量を減らそう。というか、水って結構重いのね…。
半分くらい水を減らし、ジョウロを持ってみると、まだ重たかったがなんとか持てた。
「これを、かければいいのねっ」
「ご自分が濡れないようにお気をつけてください…」
「わかっているわ」
ゆっくりとジョウロを傾け、花に水をあげる。おぉ、これ楽しいわね。元気よく育ってほしい。いっぱい水をあげればその分だけ元気に育つのかな?
「奥様、水をあげすぎです…」
「そうなの。いっぱい水をあげればいいわけではないのね」
「何事も適量が大事ですよ…て、奥様、水やりも庭師の仕事です」
「あらぁ…」
これも庭師の仕事なのかぁ。じゃあ仕方ないわね…。
「そうね、次は何をしようかしら…」
「では、屋敷に飾る花を選んでみてはいかがですかな?奥様」
次何をしようか悩んでいると、遠くから見ていた庭師長が声をかけてきた。
なるほど、そういう仕事も立派な公爵夫人になるためには必要なのね!
「ではそうしましょう」
「よかった…」
サフィが何やら胸を撫でおろす。何だろう?まぁ、いいか。
庭師長に連れられて、ひとつの小さな建物に入る。小さなっていっても前世の私の家くらいだ。…うん、小さくないねそれ。
中には色とりどりの花が置いてあった。
「わぁ…綺麗」
「この中からお好きな花をいくつか選んでください」
「わかったわ」
ひとつひとつ花を見る。結構色々な種類があるわね…うーん、難しい。
「あ」
目に留まったのは、水色の可憐な花。なんだかとても輝いて見えた。
「これにしますか?」
「これにするわ」
「どちらに飾りましょう」
「私の部屋に」
とても綺麗だけど、花自体が小さくて廊下やサロンには飾れない。でもこの花、私のストライクゾーンど真ん中だからどこかに飾りたい。じゃあ飾ればいいじゃない、そう、私の部屋に!
「かしこまりました。お次はどうしましょう」
「次はねぇ…」
それからいくつか花を選んだ。飾る場所に似合う花を見つけるのはなかなか難しい。こういうお屋敷のイメージはそれこそ前世でやった乙女ゲームの中くらいしかない。今世は今まで前世と同じように引きこもっていたし。
「奥様、そろそろ旦那様がお帰りになられますよ」
「あら、もうそんな時間なのね。ありがとう庭師長。おかげですこしだけ立派な公爵夫人になれた気がするわ」
「またいつでもいらしてくださいな。奥様、なかなか見る目がおありのようなので」
「ふふ、ありがとう」
やったぁ、褒められた!…これも前世の知識じゃない?乙女ゲームで培われた知識。つまり知識チートできた!
屋敷に戻り、服を着替え髪を整えてもらう。結構動いたから、服は汚れてしまったし髪も乱れてしまった。この姿のままルイド様をお迎えするのは失礼だよね。といっても会話なんて会話はしないし、ルイド様は私をほとんど見てくださらない。まぁ、体裁的に?
「サフィ、ルイド様が嫌いなのはわかるけど、そんなに態度に出さないで?」
さっきからサフィの機嫌が悪い。窓の外を見ては嫌そうな顔をする。もう、どんだけ嫌いなのよ…。というか、よく今まで解任させられなかったね…。まぁ、私の専属侍女となったからには解任なんてしないけど。
「無理です。奥様はいいのですか?全く奥様に見向きもされないのに…」
「ええ、構わないわ。それにこうなるのがわかっていて結婚したもの」
強制だったけどね!断れなかったけどね!気づいたら結婚式当日だったけどね!
まぁ、こんな良い暮らしができているから良しとしましょう。今後公爵夫人として大変になっていくのは置いといて。
といっても社交界にはあまり行かないつもりだ。結婚するにあたって、何か要望はあるか?て聞かれたときに即答で社交界行きたくないですって答えたからね。前世も今世もできるだけ引きこもりたいのだ。まさか、前世の記憶がないうちから引きこもり体質なのは驚いたが。さすが私。
「…旦那様が帰ってこられたようです」
「では、行きましょうか」
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