第4話 料理!

「さぁ、料理を作るわよ!」


 厨房に入り、腕まくりをする。前世の知識を使って料理をして立派な公爵夫人にならなくては。


「あの、これは…」


「料理長、申し訳ございません…。奥様、何を作るおつもりですか…?」


 困惑する料理長にサフィが頭を下げる。許せサフィ、これも立派な公爵夫人になるためだ。


「ずばり、肉じゃがよ!」


「肉、じゃが…?」


 前世の知識的に、おふくろの味といって肉じゃがが挙げられることが多かった気がする。つまり肉じゃがは主婦の味、そう、公爵夫人の味だ。


「ええっと、肉とじゃがいもと玉ねぎと人参…だったかな」


 ちなみに作り方はわからない。作ったことないんだもん。でもたぶん適当な大きさに切って鍋に入れて醤油をいれるだけだよね?そんな感じで作っていたのを遠くから見ていた記憶がある。


「さて、切るわよ」


 じゃがいもをまな板に置き、包丁を手に持つ。…包丁ってどうやって持つんだっけ。前世で包丁なんて一回も持ったことがない。母に禁止されていた。


「奥様、その持ち方は危ないです…。下からじゃなくて上から握るんですよ」


「こう?」


「あぁ!刃の所は持たないでください!」


 えぇ、上から持ったのに。

 サフィが包丁の持ち方の見本を見せてくれる。なるほどそうするのね!これでまた1つ学んだ。


 さて、次はじゃがいもだけど…どうやって皮剥くんだろう?食べる時、皮なんてついてなかったよね。

 あ!そういえば、刃を横にして滑らせていたような気がする!


「…何をやっているんですか?」


「皮を剥いているの。変ね、全然剥けないわ」


 刃を横にして皮に滑らせているけど、ただただ滑るだけで剥ける気配がまるでない。このやり方じゃなかったのかなぁ。


「でしたら、こうですよ…」


 隣でサフィがお手本を見せてくれる。あぁ!なるおど!ちょっとだけ刺すのか。


「…て、包丁は危ないですから料理人たちがやります。奥様は指示をしてください」


「そうね。ちょっと今の私には難しかったわ」


 これからは包丁さばきの練習をしなくては。


「で、じゃがいもをどうするのですか?」


「大きめに切ってちょうだい」


 私がそう言うと、料理長が素早く皮を剥き、大きめに切る。おお、すごい。立派な公爵夫人になるためにはこんな風に包丁を使わなくては。


「次はどうするのですか?」


 えーっと、どうだったかなぁ。前世の知識的に人参もじゃがいもと同じくらいの大きさだったような。玉ねぎは細かったっけ…?


「にんじんも大きく切ってちょうだい。玉ねぎは細く」


 私がそう言うと、料理長が手際よく2つの材料を切っていく。

 そうそう!たしかこんな形してた!


「お肉はどれを使うんですか?」


「へ?肉に種類あるの…?」


 え、初耳なんですけど。確かに食べる時色々な形の肉があったような。全部「お肉」て種類だと思ってた…。スーパーなんて行ったことなかったもんなぁ。それより部屋にこもっていたかったし。


「…主に使われているのは牛肉と豚肉と鶏肉です」


「そうなのね!」


 どれを使っていたんだろう。確か、前世の記憶的に肉じゃがに入っていたのは薄くて細々したものだったような?


「薄くて細かいお肉よ!」


「牛肉ですね」


 なるほど、肉じゃがには牛肉を入れるのね。覚えた覚えた。次からは大丈夫なはず!


「これらの材料をどうするのですか?」


 えーっと、前世の知識的には、全部鍋に入れてたような。


「全部鍋の中に入れるわ」


「煮るんですね」


 そうそう、煮てた煮てた。


 私は切った野菜とお肉を鍋に入れ、コンロの上に置く。

 …どうやって火をつけるんだろう?なんかこのつっぱりを回してたような?


「奥様、それも料理人がやりますから…」


「あら、そうなの。ではよろしくね」


 料理長と場所を入れ替わる。料理長は、つっぱりみたいなものを回して火をつけた。ほうほう、そうするのか。


「この後は何をするんですか?」


「醤油を入れるわ」


「醤油…?」


 あ、まさかこの世界醤油がない…!?それは困ったなぁ。


「なんかこう、しょっぱくて味がある調味料よ」


「しょっぱい…塩ですか?」


「いや、塩じゃなくて、なんだろう…」


 醤油の説明難しいね!?しょっぱくて味がついた黒い液体以外どう説明しろと…。


「黒い液体よ」


「あぁ、でしたらこちらの黒バターですかな」


 鍋を見ていた料理長がそういってくる。

 いや、黒バターじゃなくて…黒バター!?バターって白じゃないの!?この世界には黒があるのか…。

 て、違う違う。今は醤油の話だ。あぁ、でもバターでもおいしそう。


「ちょっと違うけど、でもそれでいいわ」


「あと、水を入れましょうかね。このままでは鍋の底が焦げてしまいますよ」


「そうなのね」


 水なんて入れていたかな。まぁでもここは料理長に従った方がよさそうね。


 あ!そういえば、友人が塩肉じゃが美味しいって言っていたような。料理変更、今からは塩肉じゃがを作る!


「あと、塩を入れてちょうだい」


「結局塩入れるじゃないですか…」


 サフィが何やら言っているが気にしない気にしない。さっき思いついたんだもん、塩肉じゃが。


「この後はどうするんですか?」


「あとは煮るだけなはずよ」


 本来は醤油だけど、調味料を入れた後は特に何もしていなかったはず。


 しばらく料理長が煮込んでいるのを後ろから眺める。いつかは私もあんな風にならないと。立派な公爵夫人になるために。


「奥様、どうですかね?」


 料理長が小さな皿にお汁を入れて持ってくる。味見かぁ!味見は前世でもやっていた。


「んー…何か足りない」


「そうですか。ちょっとお待ちくださいね」


 料理長が鍋の中に何やら粉を入れる。そして再び持ってくる。


「いかがでしょう?」


「…!美味しいわ!」


 え、何これ美味しい!想像していた味とは全然違うけど、これはこれでありかも。これが、友人が言っていた塩肉じゃがなのか…!


「ではこれで完成としましょうかね。盛り付けてきますので、ダイニングでお待ちください」


「わかったわ」


 サフィと一緒にダイニングルームに行き、椅子に座る。


「ふふ、楽しみね」


「そうですね。あのようなレシピは初めて見ました。奥様はどこでご存知になったんですか?」


 あー、ここで前世っては言ってはいけないよね。変人だと思われちゃう。


「母の実家よ」


 ごめん母上の実家。作っているって体にしといてください。


「そうなんですね。…あと奥様。言い遅れましたが料理は料理人の仕事ですので、奥様がなさることではございません」


「そうなの!?」


「はい」


 そうか、そうだったのか。料理人さんのお仕事を奪うわけにはいかないよなぁ。


「お待たせしました。どうぞ」


 料理長が入ってきて、さっき作った塩肉じゃがとサラダとスープ、パンがテーブルをテーブルに並べる。ちなみに量は少なめだ。実を言うと小食で、最初のころに量を減らしてとお願いした。


「いただきます」


 肉じゃがを食べる。うん、美味しい。味が染みわたってる。

 その後、他の料理もしっかり食べた。美味しかった。料理長曰く、塩肉じゃがは今後改良を重ねてレシピのひとつに加えるらしい。やったね!そうそう、知識チートってこんな感じ。


「ごちそうさまでした」


 次は何をすればいいんだろう。掃除と料理じゃないもの…うーん。


「奥様、今日は天気が良いので庭をお散歩でもしませんか?」


 そう!それ!


「いいわね。では次は庭の手入れをしましょう!」


「奥様ぁ…なんでそうなるんですかぁ…」


 許してサフィ、これも立派な公爵夫人になるためよ!

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