番外編 タカシの聖域4 依頼主
◇ ◇ ◇
〜タカシの納品の合流地点〜
「はい。やって来ました」
始まりの森の奥深く。ザワザワと静かに揺らめく木々は、これから起こる不吉な何かを暗示しているようだった。
浮遊カメラも、常に俺を的確な位置から録画し続けている。準備は万全だ。
前方の洞窟を指差して実況をする。
「あの洞窟の奥が、合流ゴホッ、あーあー…合流地点らしい、です」
3Dマップの目的地はそこを示していた。
「ギルドでも曰く付きの、この怪しいクエスト[タカシの納品]。一体どんな試練が待ち受けゴヒッ。あー…、待ち受けているのでしょうか」
何か特殊なイベントなのであれば、視聴回数も稼げるだろう。急上昇ランキングに載って有名なれたら・・・。
「右手に[松明]」
暗い洞窟の入り口を松明で照らす。
俺はドキドキしながら、浮遊カメラと共に洞窟へと足を進める…。
暫く歩くと、前方に薄汚れたローブを顔まで覆った1人の人物が松明の灯りによって照らし出された。
現在地は、合流地点と一致している。
「あの、貴方が、依頼主さん…でしょうか」
『・・・・・』
「あの、すみません。貴方が、依…」
突如、洞窟の奥から吹き抜けた風によってその人物のローブが風に晒され、依頼主の顔を覆っていたローブが剥がされた。
依頼主の隠されていた顔が、露わになる。
…一目見てわかった。こいつはやばい。悪魔的天敵。俺は全身に寒気を感じた。
思えば、最初から怪しかった。だが、まさか本当にそうだとは、思わなかったのだ。
『お前…じゃあ!』
顔が露わになったローブの人物はそう叫ぶ。
『タカシ!観念しなさい!仕事しなさい!』
「いやぁぁぁぁ!」
何でこんなところにババアがいやがるんだ!!この依頼は、俺というタカシを釣るための、罠だったっていうのか!?にしても、機械音痴のあのババアがVRに参戦だと!?
咄嗟にババアのステータスを覗くも、レベルまで見た段階で閲覧をブロックされる。機械音痴の癖に!
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[名前]たかしひ
[職業]格闘家
[レベル]15
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機械音痴のババアがこんな高レベルになる方法なんて、一つしかない。課金だ。こいつ、俺を連れ戻すために相当な重課金しやがった。これじゃあ元も子もねえ。俺が一体何の為に動画なんて投稿してるのか、わかってんのかよ。
兎に角、カメラは絶対に守り抜く。
『タカシ!聞いてるの?早く家に帰ってきなさい!グローブ特有スキル〈発動〉!』
直後、魔力で加速した大量の石つぶてが飛翔してきた。ババアが拳を振りかぶる度に、何度も何度も散弾の様に飛んでくる。
「やめろババア!カメラが壊れる!」
石の散弾を受ける度、HPは数パーセントずつ、確実に減少していく。
しかもこの散弾のスキル、たしか激レア装備のやつじゃないか。最近家の家具が減っている気はしていたが、ババアいつの間に廃課金者になってたんだ。
『ババアは失礼よっ!』
再び勢いよく散弾が俺めがけて飛んでくる。
「落ち着けよ!」
俺は約1立方メートルの正方形の石ブロックを、ババアの攻撃を遮る様に3メートルほど奥に2段重ねで設置して散弾を防ぐ。
「〈連続設置〉!」
俺はババアの足止めの為、次々と洞窟内に凡ゆる材料で大量のブロックを設置すると、一目散に逃げる。
もうすぐ洞窟の外だ、あと数十メートル!
『▒▒▒▒』
その時、冷たい女性の声が小さく響いた。
ハッと冷静さを取り戻し洞窟の出口の方を見ると、裾に黒い線のある白いローブの魔導師らしき女性が立っていた。
こんな時に、何だあいつは?プレイヤー?NPC?敵か味方か?
『▒▒▒▒…面白い仕組みだ。君たちはこうやって唱えるだけで、魔法を行使しているのだろう』
「ステータス〈看破〉だ!」
俺は出口へと走りながらも、奴のステータスを覗こうとする。
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全く覗けないだと…俺よりレベルの高い上級プレイヤーか!?
『タカシィィ!まてぇぇぇぇ!!』
前には謎の女性プレイヤーがいるが、背後からはババアが迫ってくる。
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