番外編 タカシの聖域3 底辺投稿者

ギルドのテレポートゲートをくぐると、洞窟のような、茶色い土で覆われた洞穴の様な場所に出た。


冷んやりとした空気感が、体全体を包む。


テレポートは最高だ。…間違えた。マジで間違えた。テレポートは成功だ…。


侵入された形跡もない。隠れ家は誰にも見つかっていなかったようだ。隠蔽魔法に加えて土で出入り口を塞いで隠しておいたお陰だ。


「土ブロック〈回収〉だ」


俺はそう唱えて、出入り口に設置して通路を塞いでいた土ブロックを即座に回収した。


出口の方に目をやると、カモフラージュの蔦や木や葉があり、その隙間から細く光が差し込んでいる。


「スキル〈俯瞰〉だ」


[ガッ]


ん、何だ!?世界が真っ黒に染まっている…。このスキルは、上空から自分を俯瞰した視点を得るものだ。数メートル上には森がある筈。どうして森が映らねえんだ!?


・・・ああ、俯瞰スキルが、洞窟の天井に引っかかってるっぽいな。そんな仕様だったのか。


「アイテムボックスから〈ビデオカメラ〉」


俺の手元に白い光と共に少しずつ、10秒程の時間をかけてプロペラの付いたビデオカメラが現れる。


これはゲーム内で売られているカメラの中でもトップクラスの高価なカメラだ。持続的に魔力を消費するが、浮遊したカメラを意思だけで自在に操り撮影することが可能である。


…子供の頃からずっと貯めてきたリアルマネーの貯金を崩して、課金してやっとの思いで購入したアイテムだ。正直もう買えない。


俺は洞穴から葉を掻き分けて森に出ると、徐ろにマスクをつける。そして、スキル気配探知と俯瞰にて近くに敵がいないことを確認していく。


[ビデオカメラ 起動]


掴んでいたプロペラつきビデオカメラを宙に軽く放ると、そのまま体制を整えて空中を浮遊しだした。


「よし、そろそろ始めるか…」


カメラは、丁度俺が画面に収まるように宙を移動する。


[録画 開始]


「…はい~、どうもこんにちは。タカシです。今日は、曰く付きと噂の、タカシを納品するクエストを・・・受注して、みました」


ババアと話す時の威勢は何処へ行ったのやら、俺はボソボソとカメラに向かって実況を始める。


「怪しい…クエストです、よね。俺が、謎を解いていきます…」


空中のウィンドウをタップして、クエストの集合場所を確認する。


「はい…。ここから少し、森の奥へ行ったところに依頼主がいるので、会いに行こうと思います…」


俺は黙ったまま、木々が生い茂る森の中を目的地に向かって黙々と歩き始める。


これじゃあダメだ。このままでは、たまにあるような、実況ってタイトルつけてるのに全然喋らないやつになってしまう。


「あの、みなさんこんにちは…」


ダメだ、これさっきも言ったし。先ずは黙っていた時間について弁明しなければ。実況初心者じゃあないってところを、見せてやる!


「えぇと…まだあまり実況に慣れてなくて、覚束ないところも、多々ありますが、これからも、よろしくお願いします…」


ああダメだ。ますます初心者っぽい。

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