ϵ( 'Θ' )϶サカナヘン🐟

32.とある集落、付近の川辺

◇ ◇ ◇ ◇ ◇



目の前には広めの大きな澄んだ川が広がっており、水面は太陽の光でキラキラと反射して輝いている。


『魚、中々釣れないなぁ。つれない奴だ。魚だけに』


などと下らないことを言いながら、川辺にて2人の金髪の若いエルフの男女が釣りをしていた。


『俺先戻ってるわ』

『あーそう。わかった』


男のエルフは、バケツと釣竿を抱えて去っていった。女のエルフは退屈そうに座ったままその場に残る。


『あー釣れねーなー。久し振りにキングシラスとか食いてえなあ』


その時、唐突に釣竿が何かに引っ張られる。


『おー、なんか来たか!!?』


釣竿がズシっと引っ張られる。稀にみるかなりの大物だ。これは逃すわけにはいかない。


『待ってろ大物、今釣り上げてやる!』


エルフは手慣れた釣師のごとく、グイグイと獲物を近づけていく。


『今だ』


エルフが思い切り引っ張り獲物を釣り上げる。その釣り上げたよく分からない形の薄汚れた何かは、グタッと目の前に横たわった。


真っ黒に汚れている上に、ゴミも沢山纏っていて形も判別が難しい


『・・・・・ん?なんだこれ、見たことねーぞ。まあいいか。釣れたものなら、きっと食べれるだろ。それにしても重そうだ』


その薄汚れた何かは、エルフと同じくらいの大きさがあった。


『こりゃバケツにも入らねえな…』


エルフはバケツや釣り道具と、その巨大な何かを抱えると、釣りを終えて帰路についた。





〜エルフの集落〜


外周を獣除けの軽い木の柵で囲われ、その中には数多くの木の家が建っているエルフ族の集落だ。


帰宅したエルフの女は、自宅の玄関の木の扉を開けると、家で寛いでいる家族たちに向けて声を上げる。


『帰ったぞー、今晩の夕飯は得体の知れない…多分巨大魚だ』

『おお!あの後釣れたのか!』


一足先に帰っていた男のエルフこと、彼女の兄が感嘆の声を上げた。


エルフの女はそれを床に放り投げる。その何かを見た弟たちは、すかさず騒ぎ出した。


『いやー!得体の知れない物食いたくないよー』

『弟たち、好き嫌いは良くないぞー』

『好き嫌いじゃなくて危機回避だよー』

『これから洗うから、そしたらきっと綺麗な巨大魚が出てくるさ』


その時、得体の知れないそれは、床の上でピクッと動いた。


『!?』


みんなの視線がそれに向かう。


『▓▓▓▓』


それは突然、謎の言語を発した。


『これ何か話してないか!?』


エルフ兄弟たちがどよめく。


『ばあちゃーん!うちらじゃなんて言ってるかわからんからあれお願い!』

『ま、か、せなさ、い』


部屋の奥、リビングの方からエルフの老婆がヨボヨボとゆっくり歩いてきた。


老婆はゆっくりとした手つきで、空中に顔程の大きさの魔法陣を描いていく。


『げん、ご、りかい、はつ、どう!』


老婆が描いた魔法陣が空中で光る。その何かと老婆に対して、言語理解魔法が発動する。


『これ、で、わたし、わか、る』

『▓▓▓▓』

『ふむ、ふむ』


老婆は言語理解魔法によって、謎の言語を理解する。


『ばあちゃん!これ、なんだった?』

『うむ、これの、しょうたいは、魔石だ』

『魔石なの!?』


言われてみれば、微かに魔力を放っているようだった。


それを聞いたエルフ兄弟たちは驚きどよめく。これ程大きい魔石は、滅多にお目にかかれない上に、魔石に意思まで宿っているとなると、これはもう相当のレアケースだからだ。


『でもこんな形の魔石なんてあるかなぁ』

『ばあちゃん、この石、属性はなんて言ってる?』

『きい、て、みる…。▓▓▓?』

『▓▓▓』


『なる、ほど。こいつは、闇属性の、石だそう、だ』

『それは驚いた。それにしても、喋る上に私たちみたいな形の魔石なんて、珍しいな』


その時、様子を見ていた弟が虫けらの如く喚いた。


『ばあ!僕も闇の魔石と会話したい!』

『こら弟!そこまでばあちゃんに負担かけるんじゃないよ!』

『いい、のよ、かんたんに、でき、る』


するとエルフの女も手のひらを返したように嬉々として叫ぶ。


『マジ!?じゃあたしも会話したい!』

『まっ、て、お、れ』


老婆は再び空中に魔法陣を描いていく。そして今度は、その魔法陣をスーッと自称闇の魔石に纏わり付くように貼り付ける。


『げん、ご、ほんやく、こてい、まほうじん』


老婆の合図で、言語翻訳魔法が発動する。


『これ、で、みん、な、わか、る』

『ばばあ、すげー!』

『よし、もう一回何か話してくれ!お前は、喋れる魔石なのか?』


すると、その薄汚れた何かは、ゆっくりと口を開く。


『違う』


『じゃ、お前は一体、何なんだ?』


『俺は、石田

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