18.ギルド、素材買取
俺は行き先を特別設定せずに、ビータイガーを横に連れてそのままゲートをくぐり、町へと入った。
ここは、超巨大都市始まりの町の最東端に位置する地区、
〜サイトータン地区〜
とは言っても、ゲームの中で作られた町だし、雰囲気や作り自体はウィンドギルド周辺と似たようなものだ。
深夜にしては活気のあるただの町。この時間帯のプレイヤーなだけあって、みんな結構強そうな装備をしている。一日ゲーム二時間までよ等の小学生たちは、とっくにスヤスヤしている時間だしな。
まずは、近くのギルドを目指そう。そこで色々と済まさなければならない事が渋滞している。
「行こうぜビータイガー!」
『ウ、ウガチュゥ』
「あ、でも俺召喚士じゃないのにビータイガー連れてて変に思われたら説明面倒くさいから、今回は一応ギルドの屋根の上とかで待っててくれ」
『ウ (り)』
〜近くのギルド〜
『あー眠い…明日も朝から用事あるのに、このバイト結構疲れるわ…。コンビニのバイトはやめようかしら、あのクソ店長、店長のクソクソクソあら!こんばんわ冒険者様!どうされましたか?』
…どうされましたか…だと?受付嬢の闇を見た気分だ。
「素材の買取をお願いしたい」
『はいわかりました。で、素材とやらはどこですか?』
「ここだ」
俺は、スキルアイテムボックスで、まずは数体のデス・スパイダーの素材を5秒程かけて全体をカウンターに出現させる。
『!?ちょ、今この素材、どこから出しましたか!!?今突然現れたように見えたんですけど!』
受付嬢が驚いて叫んだ。
「?…ただのアイテムボックスだぞ?ほら、こうやって簡単にアイテムを出し入れできるスキルだ。そんなに珍しいのか?」
俺が手のひらに魔物の魔石を出したりしまったりして見せると、受付嬢は思い出したように言う。
『あらやだ!そうでしたね、このゲームアイテムボックス普通にありましたね…。すみません、疲れてて寝ぼけてたようです。ああ、あのクソ店長も異空間にしまえれば良いのに』
あらやだこの子病んでる。
「それでまずは、これがデス・スパイダーの死骸だ」
俺は電子レンジ程の大きさのいくつかのクモの魔物の死骸をカウンターに置いた。虫は苦手だから、自分で持ってきた素材とはいえ、直視できないな。
その時、受付嬢が驚いて叫んだ。
『ちょっと!これ、確かにクモの魔物ですけど、デス・スパイダーの死骸じゃないですよ!!何ですかこの死骸は!』
「…は?これ、デス・スパイダーじゃないのか?」
『全然違いますよ!今、支部長を呼んできます!』
受付嬢はバタバタとギルドの奥へと駆けて行った。それから少しして、すぐに偉そうな支部長が出てきて、俺に尋ねてきた。
『君が、このクモの魔物を狩ったという、冒険者かね?』
「はい。俺です。これって、デス・スパイダーじゃないんですか?」
『…ああ、デス・スパイダーとは足の長さや色、特徴などが全然違う』
『では、この魔物は…』
受付嬢が緊張した顔つきで支部長に尋ねる。それに、支部長はゆっくりと答えた。
『そう、この魔物は、Dランク魔物の、ミニ・スパイダーだ』
「…ミニ・スパイダー?」
『そうだ。簡単に言えばデス・スパイダーの下位の魔物だ。つまりクソザコだ』
『クソザコ!?あの店長と同じですね!嬉しいな!』
『というか君たち、二人とも、スキル魔物図鑑くらい持ってるでしょ?それで確認すればわかるだろう』
「いえ、あの俺、虫が苦手で、こいつはあまり確認できてなくて」
『すみません、すっかり魔物図鑑のこと忘れてました…。ああどうしよう、またバイトクビにされちゃう』
わざわざ出てきた偉そうな支部長は、呆れながら言った。
『はぁ、全く。取り敢えず、このクモはクソザコスパイダーだから、一匹このくらいのゴールドで買い取らせてもらうよ』
「え、そんなに安いのか!?」
『どこのダンジョンにも生息してるような、クソザコだしねえ』
「マジかぁ」
俺はアイテムボックスから、他にも要らなそうな素材も出していく。
俺はキュルキュルと十数秒かけて、また別の魔物の死骸を出していく。とは言っても、こいつは元々死骸みたいなものだが。
カウンターに少しずつその魔物の全体が、人型の白い骸骨が現れていく。
「…ハイ・スケルトンの死骸だ。これも買い取ってくれ」
『君、違うぞ!これはハイ・スケルトンではない!』
『ということは支部長。まさか…!』
『この艶、そして輝き、形状、間違いない。Dランク魔物の、ロウ・スケルトンだ!つまりクソザコだ!一体につき、たったこれだけゴールドで買い取らせてもらおう』
「そ、それだけなのか!?」
『ああ、クソザコだからな』
「マジか…まあ、わかった」
俺は右手をカウンターの方に向け、アイテムボックスから、残りのロウ・スケルトンの死骸も売るために出していく。…全部で7体の骸骨が、カウンターの前に並んだ。
それを見た支部長が、驚きの声を上げて指をさした。
『おい君!その左から2番目の骸骨、ハイ・スケルトンだぞ!』
「何だって!この姿勢が悪いスケルトンのことか!?」
支部長が指した骸骨は、骸骨たちの中で唯一の猫背だった。こいつが本当に、ハイ・スケルトンなのだろうか?
『ああ間違いない。ハイ・スケルトンは、複数のロウ・スケルトンたちを束ねる長だ。集団を束ねる疲労やストレスから、姿勢が悪くなり、猫背になったと言われている』
「なるほど」
なるほど。
『というか、魔物図鑑で今からでも確認すれば気づけるだろう?自分でもあらためて確認すればどうだ?』
「…いや、こいつらが出てきてた時、俺怖くてうずくまってたから、魔物図鑑を開いて登録できてないんだ」
支部長は腕を組んで頷く。
『ふむ確かに、生きている魔物から魔物図鑑を開かないと、その魔物の登録も閲覧もできないからな。なるほど、やはりそんなルーキー装備にも関わらず、ハイ・スケルトンを持ってくるあたり、他の強い冒険者たちとパーティーを組んで手伝ってもらってる口か』
「まあ、そんな感じす」
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