16・ありそうな会議
〜とある会議室〜
『皆の者、よくぞ集まってくれた』
ここは、薄暗い偉そうな部屋に、楕円形に近いテーブルの周りを囲うように偉そうに椅子が配置された、異種族達が集まる重要な会議の場。
出席した全員が椅子に座り、丁度これから話し合いが始まるところだ。
『ところでよぉ、最強種族魔族の俺たちを差し置いて、どうして人族ごときが仕切ってやがる?』
そう言って、赤髪の魔族らしき男がドガッと机を蹴り飛ばす。
『落ち着け、ヴァロルド。少なくともこの場では、我ら魔族と他種族は、皆平等なのだ。それに』
『でもそれならよぉ、あいつじゃなくて、俺が仕切っても良いわけだぁ?』
そう言い放つヴァロルドに対して、エルフ族の一人が注意する。
『あら、感情的な貴方が会議を進めようとすると、いつもぜんぜーん進まなくなるのをお忘れで?』
『ネメシアァ!てめーは黙ってろ!』
『落ち着けヴァロルド!』
『全員静かにしろ!第33回異種族会議の時に、会議の進行は人族のエドワーズ様が務めると決めただろう!それすら守れないとでも言うのか!!』
そう叫んだ人族の一人アニストンに、人族のエドワーズが静かに言う。
『まあまあ、落ち着けアニストン。貴様まで熱くなってどうする』
『申し訳ない…』
『あら、私はずっと冷静だわ』
『ネメシア静かに』
『すいません大妖精様』
『はっ!大妖精とやらに一言言われれば静かになるんだなぁネメシア!』
『落ち着けヴァロルド!いつまで経っても会議が進まん!』
『チッ』
『兎に角、全員一旦落ち着け。今は、我々が争っている場合ではないのだ。事態は一刻を争う。熱くならずに、冷静に会議を進めよう』
その時、奥でかろうじて座っていた、全身が溶岩に包まれたかのような外見の、小さな目のある大きなスライムのような、マグマ族のマグマニュートがぬもっと粘土のような手を挙げた。
『どうぞ、マグマニュートさん』
『アノォ、ワタシ、全身マグマナノデェ、ドウシテモ、熱クナッチャウンデスケド』
その刹那、ヴァロルドが立ち上がり叫ぶ。
『もうやってらんねーよ!俺は俺のやり方でやらせてもらう』
『落ち着けヴァロルド!』
ヴァロルドは、転送魔法陣でその場から姿を消した。もう一人の魔族は頭を抱えて、困った素振りを見せながら、大きくため息をついた。
『…せいせいしたわ』
ネメシアが小さな声で呟く。
それから数秒後、場の雰囲気は落ち着きを取り戻し、再びエドワーズが話し始める。
『あ、マグマニュートさんは熱くても別に良いので』
一言そう注意すると、エドワーズは立ち上がり、手元の資料を見ながら言う。
『では本題に入ろう。本題というのは他でもない、約一週間程前に西大陸に突如として出現した、大型の古代アーティファクトについてだ』
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