8.早朝、ギルド、明智に遭遇
ミノタウルスにやられてから約72時間後の夜。俺と石田はウィンドギルド内にあるテーブルで向かい合って椅子に座り、石田がやられてからの事や、盾術の事などについて話し合っていた。
・ ・ ・ ・ ・
「まあ、ログイン不可期間も終わったことだし、明日の朝から頑張って、佐藤たちにも追いつこうぜ」
『ああ、おけまる水産。今度はCランク魔物には気をつけような笑』
「じゃ、おやすみ」
『おやすみ』
石田は最後に、そう言った。
次の日。
ピコン
[おい、石田]
[ワルゲーやろうぜ]
[ウィンドギルドで待ってるから]
早朝。俺はアプリ連携をしてゲーム内でも使えるようになったライーンで、石田にメッセージを送信する。ウィンドギルドの椅子に座り冒険者たちをぼんやりと眺めながら、注文した軽い食事アイスティーとサンドウィッチを頬張っていた。
このゲームでは食事は必須ではないが、リアルな味がすることは、地味に凄い売りでもあった。
「結構美味いな」
これは料理好きの人たちがワルゲーにはまるのも納得できる。無添加食品であれば尚良いのだが、今度問い合わせて聞いてみよう。ミノタウルスの肉とか、一体どんな味がするんだろう。
因みにワールドゲームの時間帯は、日本の現実時間とリンクしている。窓から外を見ると、丁度太陽のような明るい星が昇ってきており、ギルド内に朝の涼しげな風が吹いている。
『お、凪も来てたのか』
強そうな皮装備の聖騎士明智が、座ってる俺に話しかけてきた。
『で、調子はどうよ』
「調子も何も、あの後すぐミノタウルスにやられて、やっとログインできるようになったところだよ」
『それは、本当ご愁傷様でした笑 てことは、まだレベルも1か?』
「いいや、一応レベルは3かな。ミノタウルスの攻撃を防ぎまくってたら、経験値ゲットしてたらしいね」
『倒してないのに防御だけでレベル上がるとかすごいな』
まあ確かに、言葉だけで聞けばすごいかもしれないが、ミノタウルスは遥かに格上だったし、防いだ回数も一度や二度ではなく、職業が意味不明にも盾術だったからこそ可能だった回数だ。決して簡単なレベル上げ方法ではないだろうな。
それに、本来の職業ならば攻撃を盾で受ける必要があるから防御も中々難しいだろうが、俺は盾がなくても防げたんだから。調子乗ってたら死んだけど。
「それよりも」
俺は明智を見て言う。
「何だよその強そうな防具は」
『これか?ミノタウルスアーマー』
「は!?もうミノタウルス倒せんの」
『凪と石田がミノタウルスに惨殺されたって聞いたから、佐藤たちと始まりの森行ってさ、8人で倒したわ』
「すげえ」
8人とか、レイドボス並やん。知らんけど。それに加えて勇者や聖騎士などの強力な職業に、魔術師などのバランスの良いパーティー。冷静に考えれば、ミノタウルスを倒したことも納得できる。
『で、俺たちのGWギルドランクも、EからDランクに昇格した』
「まじかよ!」
『ミノタウルスを繰り返し討伐したからね。8人とはいえ安易じゃなかったけどさ』
「それでもあれを倒せるのはすごいよ。ワールドゲームの中でも、お前ら結構トップの強さなんじゃないか?」
『いいや、全然そんなことはないよ。なんせ、もう既にBランクの奴らも一部いるらしい。ワールドゲームトッププレイヤーでネット検索してみればわかる』
そう言われて気になった俺はウィンドウを操作して、検索エンジンゴーグルことGogglesでネット検索をかける。
[ワールドゲーム トッププレイヤー]
すると、ワールドゲームにおける現在の最強プレイヤーの名前や職業などが出てきた。
[最新の最強プレイヤー一覧]
ーBランクー
[炎の拳闘士 ホムラ]
[時魔術師 ルリ]
[暗殺者 漆黒の翼ポセイドン]
[タンク ひよこまんじゅう]
[魔物使い ミノタウルス隊長]
[職業不明 宿屋ブレイカー]
明智の言う通り、既にBランクの猛者たちがいた。それでも、社会現象になっている程のこのゲームで未だに6名と言うのは、怖ろしいほど少ない。
「それで、職業不明ってのは何だ?武器とか戦い方からわからないのか?」
『宿屋ブレイカーのことか。あいつは、町の宿屋の看板に超強化魔法をかけて近接戦闘してるらしく、どうも職業が不明らしい』
「何だそれ!?町の看板盗んだらギルド登録できないだろ」
『ネットでは、その驚異的な身体能力と魔法技術で、ギルド職員をねじ伏せたって話になってる』
「ドクン」
世の中には、末恐ろしい奴がいるものだ。
『そういえば、もう一つネットで話題になってるのが、とあるプレイヤーのインスタグラマアの話なんだけど、その人が投稿した動画に出てくる漆黒の人型モンスターが、夢の国の住人に酷似してて、ワールドゲームの運営が訴えられるんじゃないかって、専門家が危険視してたぜ』
犯人、石田やん。
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