第12話 条件交流

 2/22 月曜日


 久しく登校したが、理科室は事件の事などなかったかのように蘇っていた。

 長時間の工事に感謝しながら教室へと向かった。


 ◇◇◇◇


 朝のホームルーム。担任ではなく学年主任の人が来たため、嫌な予感がした。


「先日、上道かんだちくんと相吉澤あいよしざわさんが亡くなりました。皆さんの担任の能海のうみはショックで休みを取っています。安全のため、このクラスはこれから卒業式まで休み。外出をなるべく自粛してください。御協力よろしくお願いします」


 まさかの2人も亡くなったことに衝撃だった。学年主任の先生も多くは語らず去っていった。よく見ると、この教室には監視カメラがあらゆる所にあった。この教室なら安心であるな。


 取り敢えず、事件を把握しないことには推理はできない。先生に情報を聞こう。

 俺は教室を出ていき、学年主任の先生の前に立ち話を試みた。


「すみません。事件について教えてくれませんか?」

「そんなもの君に話す必要ない。早く受験勉強に精を出しなさい」

 先生は俺を追い越し、職員室へ足早に戻ろうとしていた。


「俺は! 死んでしまった人のために事件を解かないといけないんです!」

 先生が足を止めた。

「お前が? 冗談はやめろ。この犯人はかなり賢い。大人が本気で考えても、未だ答えに辿り着いてない。お前に何ができるんだ」


 俺は言った。

「そんなのやってみないと分からないじゃないですか。しかも俺は、犯人はまだでも、犯人の手口は殆ど解明してます。俺に話を聞かせてください」

 こうべを垂れる。先生は仕方なさそうに振り返り、解いた事件の話を聞かせてほしいと言い、代わりに今回の事件について教えてもらった。


 ◇◇◇◇


 2/20 土曜日


 今、職員室から出てきたのは、松原まつばら 穂乃花ほのか。家庭科担当の先生で、家庭科部の顧問です。

 現在12:45。もう集合時間のため、部室の2階にある被服室に向かいます。


 被服室手前に着いた時、準備室からミシンの音が聞こえました。

「あれ? 準備室でなにかやってるのかな?」

 なんなのか不思議に感じ、でも恐怖など覚えず扉を開けたら、途端相吉澤さんが部屋の奥で地面に倒れました。倒れたと言うよりと言う表現がこの場合は適切なのでしょう。

 “悪ふざけ”なのかと思いましたけれど、後からむせる様な血の臭いに驚き、その場からすぐに離れ、先生を呼びに職員室に走りました。


 先生を連れてきて、もう一度被服準備室を訪れました。

「あれ? 私こんなに扉開けましたっけ?」

 その扉は全開で、扉の真ん中には斧が床に刺さってました。

「相吉澤!? なんて酷い。すぐに警察と救急車を呼べ!」

 は、はい。と返事をしてその疑問を一旦忘れ、警察と救急車を急いで呼んだのです。


 ◇◇◇◇


 2/22 月曜日


 放課後、松原先生から相吉澤さんの話を聞かせてもらった。

 学年主任からは上道くんの話を聞いた。ピーナッツアレルギーによるアナフィラキシーショックらしい。どちらも事件だと先生は言っていた。


 そして俺は、いままでの推理を先生に話した。かなり驚かれていた。そして、本日はお時間頂きありがとうございました。そう言い現場の被服準備室へと向かった。



 被服準備室前。ここで事件があったんだよな。外側はいつもの風景って感じがする。

 扉は、丸型の握って手首を回すタイプのもの。部屋の中は、真ん中に会議室に使われそうな机が1台あり、左右に何か入っているだろうか分からない棚がある。そして奥には窓がありカーテンが風で揺れ動かされている。


 当然ながら、現場といっても死体発見時と状況が完全に一致するとは言えない。というより、その可能性の方が低いだろう。


 まずは、話を思い出してみよう。この机の上にミシンがあったと仮定する。部屋の奥、窓側で相吉澤さんが落ちたと言っていた。

 えっと、あれ? あの会話で得た情報これくらいってマジ?

 あとは、扉が全開になったって話だけど、深い関係はなさそうかな。現場の扉を全開にするだなんてメリットが考えられないし。

 そして、斧は凶器なのか? もしそうなら、あんな場所に置くか? 自分がこの部屋にいて、これで殺しました。と言っているようにしか見えないぞ。


 取り敢えず、『落ちてきた』とはどういうことか考えるところからだな。被服準備室は2階にあるから、3階から落ちたという考えでいいのか? だとしてそれを見て、最初に倒れたという風に感じるのだろうか。それ以前に3階から2階に落とすことって出来るのか?


 こちら側の窓にベランダはない。3階か4階から落としたとして、どうやってそこに落とすんだ? この事件も分からないことだらけだな。疑問が山ほど出てくる。


 発見現場は確かにここだったけど、もしかしたら犯行現場はここじゃない可能性もあるよな。簡単に言うと、別の場所で殺して死体を移動した可能性がある。ということだ。


 そう考えた俺は、部屋の奥の右側にある扉に手をかけた。部屋の向こうは被服室だ。扉を開けて正面を見ると、非常時用の階段に繋がっているドアのガラスが割られていた。

 侵入口はここかと思ったが、階段の降りたところには、階段の下りと同じ方向の監視カメラがある。ここからの侵入は厳しいだろう。

 なら監視カメラの後ろ側つまり、階段の逆側からなら縄や梯子を使って侵入出来そうだ。


 ん? なんだこれ。近くの被服机(長方形の白い机)の脚に擦った傷が2つついている。別の脚にも2つ擦った傷がある。この傷的に多分縛り付けられたのかと考える。2つの傷の幅は俺の足の大きさ(25.5cm)くらい離れてるな。


 よし。色々疑問も出てきたし、先生に質問したいところもある。取り敢えず松原先生に話を聞こう。

 俺は職員室に向かった。



「3年の加涌です。松原先生に用があって来ました」

 暫くして松原先生が出てきた。

「用ってあの話ですよね。ここじゃあれなので、向こうで話します」

 話してくれると言ってくれて安心した。が、すぐに条件を出してきた。


「ところでなんですけど、私も冬休みの時に何があったのか知りたいのです!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る