第6話 絶望体験

 1/22 金曜日


 今日は石上君の家でお泊まりデート!今から彼の家に行くんだ。

 今日の夜はタコパって聞いたけど、明日の朝が確かじゃない気がするから、この山原優奈が豚バラのお肉作ってあげるんだ! そのためにも買い出ししないと!


 ◇◇◇◇


 ちょっと買い物に時間かかっちゃった。ここのスーパー学校帰りにセールになるから、近所のおばさんが大勢いて、ビックリしちゃった!

 取り敢えず買いたいもの買ったし、早く彼の家に行きたい!


 ◇◇◇◇


 石上君の家久しぶりだ。前は石上君が弾いてたピアノを正座で聞いてたっけ。

 彼、ピアノで何か凄い賞を取ってるって聞いてたけど、彼の弾くピアノは凄く聞きやすかった!

 賞状も飾ってたし、やっぱ石上君凄いや!



 そういえば、鍵は開けてるって言ってたから、勝手に上がってもいいんだよね……?


「お邪魔します。トイレ借りるね!」

 山原は家の鍵を閉め、玄関に荷物を置き、近くのトイレに駆け込んだ。


 買ったもの玄関に置くことになっちゃってるけど、まぁ大丈夫よね? 親しき仲にも礼儀ありって言葉がある通り、流石に冷蔵庫にはしまうべきだったかな……?


 ん? 廊下付近からコトコト聞こえる。もしかして、持っていってくれてるの? ヤバイ、天使! 早く天使に会いたい!



 ……あれ? ドアノブが回らない。えっ、これって出れない? まさか、そういうドッキリ? でも流石にトイレで閉じ込めは困るな。



 途端に石上の悲鳴が家中に響き渡った。

 それを聞き、これは只事ではないと理解した山原は、何度も扉の開閉を試みる。だが、ドアノブは何かに突っ掛かって、回らない。

 どうにかして助けを呼ぼうにも、ピアノの練習のためか殆どの部屋が防音だし、立て付けが悪いのかトイレの窓も開かない。おまけにスマホは廊下のバッグにある。


 壁を壊すなんて事が出来るわけもなく、ただ必死にドアノブを回す。

 開けと念じながら。助けたいと思いながら。

 願いが届いたのか、ほんの少しだけドアノブが回った。だか開く事は出来なかった。

 それに山原は気付き、少し希望を持った。壊さない力で、必要最低限回せれば良い。そう考えたのだ。


 その時、台所付近から何かを焼く音が聞こえた。意味が分からなかった。そしてドアノブへの集中が切れたからか、凄まじい刺激臭が山原を襲った。

 山原はトイレの中で気を失った。


 ◇◇◇◇


 目を覚ました。何分眠っていたかは私も知らない。臭いは余計臭くなっている気がする。そう思いドアノブを回してみた。……開いた。目の前に椅子があったけど、力を出して押しきり扉を開けた。


 扉が開いた事に感動すら覚えた山原は、廊下に置かれたままの自分のバッグを持ち、恐る恐るリビングに足を運んでいった。



 リビングに向かえば向かうほど、臭いはどんどん強くなっていた。

 リビングに入り、辺りを見渡すと石上は、無惨な姿で見つかった。


 グランドピアノの前に座り、ピアノの屋根の下に頭が入っていて、背中には骨の形をした何かが刺さっていた。致命傷はこれだと理解した山原はそれ以上彼を見ない様にした。


 そうして後ろに振り向いたら、机の上に私が買ってきた肉と野菜が、二皿分用意されていた。

 だけど、この肉……妙に丸い。普通の豚バラに、丸まったお肉……。

 何気なくそのお肉をひっくり返してみたら、見たことのある形があった。


「まさか……」

 山原は何かを察し、石上に近付き 彼の指を見た。

 それを見た山原は丸いお肉の事を理解し、震えながら警察に電話をかけた。

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