1章8話 9時53分 第1特務執行隠密分隊、結成する!(1)



 シーリーン、アリス、イヴ、マリア。

 彼女たちが七星団の中央司令本部に入って真っ先に向かったのは、前回、入団試験の時に待合室としてあてがわれた会議室だった。


 しかし、4人がそこに入室して室内を見回しても、他に誰一人、団員はいない。

 あとからくるのだろうか? そう思い、とりあえず4人は固まって席に着く。


「誰もいないわね……」

「まぁ、まだ時間まで5分ぐらいありますからね」


 アリスが小首を傾げて呟き、それにマリアが静かに応じた。


「でも、お姉ちゃん? 配属先の上官さんがくるのは5分後かもしれなくても、わたしたちと同じ配属先になる人までいないのは、少しおかしいよ?」

「そうだよね……、試験に受かった人はシィたち以外にもいるはずだし。その人たちが5分前になのに誰もいないのはおかしいし」


 と、シーリーンが言ったその時だった。

 カーディナルの正装であるカズラを、不届きにもフリフリの甘ロリに改造したロリ巨乳の女の子が入ってきたのは。


「こんっ! にちっ! は~~~~っ♪ みんな~~? 元気してる~~? セッシーの名前はセシリア・ライヒハートだぞっ♪ よ・ろ・し・く・ね?」

「「「……は?」」」


 と、不審者を発見した時、そいつに送るような絶対零度のごとき視線を、シーリーンとアリスとマリアはセシリアに向ける。

 特に真面目なアリスに至っては、その「……は?」はどこは威圧的にキレている感じさえあった。


「…………っ、セシリアさんッッ」


 しかし、イヴだけは違った。

 イヴはセシリアが特務十二星座部隊の【処女】ということを知っている。


 実は3人もセシリアが特務十二星座部隊の一員ということを、アクアマリンの月第3部起19日水曜日1章6話のアルバートの発言で知っていてもおかしくなかったのだが、まさか、このような発言も外見もふざけている女の子が、王国最強の枢機卿とは、つゆにも考えられないだろう……。

 同じセシリア・ライヒハートでも、こいつと特務十二星座部隊の【処女】は同姓同名の別人、と、言われた方が、まだ現実味が高かった。


「さてさて! セッシーはぁ、なにから話したらいいのかなぁ?」


 セシリアはぶりっ子全開で4人の前に立つ。

 すると、ぶちキレそうなアリスを手で制して、最年長ということで、マリアは代表して彼女に訊いた。


「その……、ユニークな口調と外見ですけど、七星団の団員の方ですよね? なら、所属と役職をお伺いしても大丈夫ですかね?」

「およよ? イヴちゃんから聞いてなかったかな?」


「「「えっ? イヴちゃん?」」」

「まぁ! それもそっか! イヴちゃんがセッシーのことを知っていても、今日、ここに現れることは知らないはずだもんね!」


「うぅ……、ゴメンなさいだよぉ……」


 すると、セシリアは、にぱぁ、という、50手前という年齢の割には、まるで女子学生ように可憐で麗しい笑みを浮かべて、改めて、自己紹介を。


「えぇ~~っと、確か君はイヴちゃんのお姉ちゃんのマリアちゃん、だよね? うんうん! マリアちゃんの質問に答えるね♪ 改めて、セッシーはセシリア・ライヒハートっ! 特務十二星座部隊の序列第6位のカーディナルだぞっ!」


「ち、ちなみに……、称号は【処女】だよ……」

「が~~ん! イヴちゃんに隠しておきたかったことがバラされた!? うえぇぇぇん! ひどいよぉ、イヴちゃん! っていうかそれ! 前回言わなかったのに、どこで知ったの~~!?」


「そ、そもそも、セシリアさんに出会う前から、国王陛下がそんなふうにセシリアさんを紹介したから、知っていたんだよ……」

「うえぇぇぇん! 国王陛下のばかぁ!」


 かなりマイペースを貫くセシリアに対し、3人は呆然と口を開けるばかりだ。

 イヴに至っても、目の前の彼女に愛想笑いをするしかなくなっていた。


「イヴちゃん……」

「なに、アリスさん?」


「こんな人が、特務十二星座部隊の一員……?」

「あぁ~っ! アリスちゃん、ひっどぉ~い! こんな人、なんて言い方! もぉ、怒っちゃうぞ! ぷんぷんっ」


(いらっ!)

「あ、アリスさん……っ、落ち着いてください、ねっ?」


「う、うん……この人、ううん、このフェアリーさんが、特務十二星座部隊に所属している枢機卿さんだよ」

「うそぉ……」


 アリスは現実を認められなかった。


 第1に、こいつはカーディナルの正装であるカズラを改造している。

 第2に、言動が軍事力を持つ組織の上層部の団員のモノとは思えない。

 第3に――、


「この子……っ、私たちと大して年、変わらないじゃない……ッッ」

「う~ん、本当は言いたくないけどぉ、勘違いして自信をなくされても困るから言うね? セッシー、魔術で老化の進行を遅らせているから、もう50手前だぞ☆」


「えっ、そうなんですか!?」

「まぁ! 特務十二星座部隊に入ったのは君たちよりほんの少し上ぐらいの年齢だったけど!」


 セシリアは上げてから落とす。

 せっかくアリスがまだ自分にも希望がある、と、ポジティブになれそうだったのに、セシリアは笑いながら、特務十二星座部隊に入ったのは君たちよりほんの少し上ぐらいの年齢だった、と、実力の壁を叩きつけた。

 彼女は一応、コメディチックに言ったのだったが……。


「さてっ、重要なのはセッシーの自己紹介よりも、君たちの配属の話だよね!」

「あっ、話が脱線してしまい、すみせんでした……っ、続きをお願いします!」

「おっけーっ」


 一応、こんなふざけたヤツでも上官だったので、シーリーンは謝罪しておく。

 すると、ようやくセシリアは本題を切り出し始めた。


「まず、君たち4人の配属だけど、既存の部隊ではなく、新人4人で新しい部隊を組んでもらいます」


「「「「ええっ!?」」」」


「その名も、第1特務執行隠密分隊♪」


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