ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
3章7話 ナイショ話、そして可能性(3)
3章7話 ナイショ話、そして可能性(3)
「――は? ロイ、その……大丈夫か?」
いがみ合っているとはいえ、流石に発言が突拍子もなかったからだろう。
あのレナードでさえロイのことを、言葉を選ぼうとして、しかし適切な言葉が思い付かなくて、最終的には一部言葉を濁して心配してくる。
だが、アリシアとエルヴィスはそんな心配なんてしていない。
むしろ、逆だった。
「レナード、黙れ。なんとなく察するが、これは今日一番で重要な話になるぞ」
「面白くなってきましたね。少しはこちらが有利になるような情報が出てくるとよいのですが」
あの生意気なレナードを、黙れと、たった一言でエルヴィスは実際に黙らせる。
かの有名な聖剣使いにそう睨まれて、流石のレナードだとしても注意されたとおりに黙るしかなかった。
翻って、アリシアは微笑みを浮かべたままだったが、先刻までとは打って変わり、まるで全てを見透かすような
そんなオーバーメイジとキングダムセイバーを対面に、ロイは語るべきを語り始めた。
◇ ◆ ◇ ◆
「――以上が、ボクの持っている情報の全てです」
「マジ、かよ……」
ありありと愕然をその
一方で、いくつか有益な情報があったからだろう。アリシアはますますにこやかになっていて、逆にエルヴィスは静かに目を瞑って腕を組んでいる。
それで、いくらかの時が経っただろうか。
誰も喋らないがゆえに、かなり長く感じたその時間。その流れを再開させたのは、瞑っていた目を開き、組んでいた腕をほどいたエルヴィスだった。
「まず、最初に言っておきたいことがある」
「はい」
「よくオレたちにそれを伝えてくれた。不安もあっただろう。緊張もあっただろう。だが、それでもオレとアリシアを信頼して秘密を打ち明けてくれたことに、オレは最上の礼を述べる。ありがとう」
「私も似たような感じです。ロイさんが明かしてくれた秘密は、誇張抜きに世界の根底に関わる情報です。今後、魔王軍と戦う時、どのような形になるかはわかりませんが、きっと役に立つことでしょう」
友達ならともかく、七星団の人間にこのような秘密を明かすことを、ロイは今まで躊躇っていた。
あまりことを大きくしたくなかったのだ。七星団、つまり王族直属の団体の人間に伝えたら、本気で王家や貴族や七星団の上層部が混乱すると思ったし、仮にその情報が間違っていたら、むしろ罪悪感を覚えることになるからだ。
これを察して、2人ともロイに優しい言葉を告げる。
しかし、2人が優しい雰囲気を出していたのは、そこまでだった。
次の刹那、アリシアもエルヴィスも、物事を慎重に考え始める。
自明だ。
特務十二星座部隊のメンバーは別に強いだけで参謀というわけではない。しかしそれでも、彼らにはかなり強い発言力がある。それに所属する2人がこの情報をどうするかは、非常に繊細な問題だった。
「さてさて、エルヴィスさん。私はこのことを、特務十二星座部隊のみなさんの前でも公言せず、貴族や大臣はもちろん、七星団の最上層部にも極力秘密にしておいた方がよろしいと思いますが?」
「そうだな、仮に誰かに裏で伝えるとしたら――国王陛下と、エドと、ニコラスのじぃさんだけだろう」
瞬間、エルヴィスはレナードに視線を送った。
対してレナードもそれに頷く。
それは当然、お前も決して今のことを誰にも言うな、という意味のアイコンタクトだった
つい先ほどまで半信半疑だった彼も、もう、信じざるを得なかった。
「さて、ロイ」
「は、はい!」
「お前がもともとこの世界の住人ではない。その神様の女の子とやらに転生させてもらった。この事実から派生する全ての事実、これについてオレたち以外に誰に話した?」
「婚約者であるシーリーンとアリス、妹と姉であるイヴとマリア、イヴの友達でボクのことも本物の友達と思ってくれているリタって女の子とティナって女の子、最後に、ボクの身の回りのお世話をしてくれるメイドのクリスティーナの7人です」
「そうか」
「あと――ボクが自分から告白したわけではありませんが、国王陛下には、隠していたのに看破されました」
「看破された、か。それは逆に幸運かもな。基本的に情報の伝達は一番下の人間から、中間管理職を通過して、さらに大臣なんかの上層部を経て、かなり厳選されたモノが国王陛下に届くようになっている」
「そうですね。これは長年続いている組織の体制であり、一概にダメと断言するわけにはいきませんが――」
「――あぁ、これに関して言えば、中間管理職を全員ふっ飛ばして、直接、国王陛下に届けられて一切文句のない情報だろう。あのお方は聡明だ。オレたち以上に、この機密事項を丁寧に扱ってくれること間違いない」
「だからこそ、私とエルヴィスさんがしくじるわけにはいきませんねぇ」
すると、エルヴィスがロイに視線を合わせてきた。
「ロイ、わかっていると思うが、もうこれ以上、このことを誰にも喋ってはいけない。自慢したくなる気持ちもわかるが、先ほど挙げてくれた7人以外に、もう友達が増えても喋ってはいけない」
「はいっ、わかりました」
「同様にレナードも、だ」
「あぁ、了解です」
すると、エルヴィスは今度、腕を組んで目を瞑るのではなく、肘をテーブルに付き、片手で口元を隠すような姿勢になった。まず間違いなく、再び考え事をしているのだろう。
正直、エルヴィスが考え始めたこのタイミングで切り出すのは気が引けた。が、腰が引けつつも、ロイは彼にとあることを訊いてみる。
「あの、エルヴィスさん、少しよろしいですか?」
「ん? どうした? 疑問があるならぜひとも訊いてくれてかまわないぞ?」
「えぇ、やはり伺いたいことがあるのですが……ボクにこれ以上、友達が増えても今のことを広めてはいけない、っていうのは充分に理解できます。でも、なぜ他の特務十二星座部隊のメンバーにも隠すのですか?」
瞬間、エルヴィスの顔に陰りができる。
「簡単なことだ。ロイの妹、イヴが察知するまで、特務十二星座部隊、その中でも光属性の魔術に最も長けたカーディナルのセシリア、さらに運命や神の意向ですら感知できるイザベル、彼女らでも魔王軍の魔術の痕跡のことを知覚できかった」
「つまり、私たちは出し抜かれた、ということです」
「……オイ、ロイ、それってよォ」
「まさか、エルヴィスさん……」
「簡単なクイズですよ」
「特務十二星座部隊が出し抜かれたということは、王国の領土にすでに、特務十二星座部隊と同じレベルの魔術師が存在しているということだ。それで、じゃあ特務十二星座部隊レベルの魔術師はどこにいるか、という問題だ」
「「…………ッッ」」
ロイとレナード、彼らは2人揃って絶望した。
そんな少年たちに、エルヴィスは努めて冷静に言い放つ。
「あくまでも可能性の話だ。オレの伝えたいことが正しい可能性もあるし、間違っている可能性もある。つまり、どちらの可能性も捨てきれない。だが、重大さが桁違いだからな。オレとしては慎重になるのに越したことはないと考えていて、それゆえの発言だ。で、そう前置きした上でのことになるが――」
一回、エルヴィスは息を深く吸って、深く吐いた。
自分自身すらも落ち着かせるような動作をして、彼はいざ、ロイとレナードに自らの考えを告げる。
「――子どもでもわかる簡単な理屈だろ。特務十二星座部隊レベルの魔術師は、特務十二星座部隊の中に多くいる」
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