ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
4章8話 答え合わせ、そして動き始める戦争へのカウントダウン(4)
4章8話 答え合わせ、そして動き始める戦争へのカウントダウン(4)
炎を吐きながら思考するリザードマン。
このままでは攻撃と防御の平行線だ。リザードマンの考え通り、無論、持久戦に持ち込めばロイが火傷を負っている以上、確かに彼の勝ちだろう。だが、路地裏で行われているとはいえ、誰かがこの殺し合いに気付いて七星団の団員に通報されたら厄介だ。
ならば、答えは出ているようなものだった。
リザードマンは炎を吐いている間、ずっと手に持っていたナイフのグリップに力を入れ直して、ロイに向かって突っ走る。
炎の息は中距離向きの攻撃だ。彼我の距離はもともと10mぐらいである。
しかしその距離は文字通り一瞬で詰まった。
本気でロイを殺すつもりのリザードマン。
翻ってロイもリザードマンを殺そうと聖剣に力を込める。
そして、
「「――――ッッ!」」
再度、甲高い金属音を撃ち鳴らす聖剣とナイフ。
言わずもがな、重さも、リーチも、頑丈さも、性能も、聖剣とただのナイフでは比べるべくもない。
だが現実として、リザードマンは上手くナイフを閃かせて、ロイの斬撃をものの見事にあしらい続けた。
(~~――~~…………――~~ッッ!)
とはいえ、ロイも負けてはいない。
単純な刃物の扱いで負けたことはショックだったが、それを気にするのは今ではない。ここで生還しなければ今後の成長もありえないと弁えて、聖剣のスキルを十全に使いこなしてリザードマンと互角の戦いを繰り広げる。
(ナイフの長所は小回りが利くこと! 接近を許したのは作戦の内だけど、これ以上はもう懐に入れさせない!)
(聖剣の長所はなんらかのスキルを持っているということ! だが! 1つ1つを的確に対処していけば、充分に対応可能なスキルだろう!)
改めて、斬撃舞踏をロイは4つとも、全てリザードマンの顔面に撃とうとする。
そのうち2つをリザードマンは躱して、1つナイフで軌道を逸らし、最後の1つは持ち前の顔の鱗で無効化した。
「やはりそちらも、持久戦に持ち込まれるとマズイですよね! 殺し合いが長引きそうなら突っ込んでくると思いましたよ!」
「どうやら考えがあるらしいが――その足で、どこまで上手く立ち回れる!?」
そう、聖剣を持っているロイがナイフ使いを相手に剣術で互角の戦いしかできていないのは、やはり足を自由に動かせないのが理由である。
最初は相手のナイフの動きに慣れていないだけだったが、今に至ってはそれが些事に思えるほどのハンデが彼にはある。
だが、それでも、ロイは虎視眈々と勝利への道筋を用意し終えた。
嗚呼、そうだ。実のところ、リザードマンを倒せる作戦はもう思い付いている。
(だからあとは! 彼がボクの想定どおりの攻撃を仕掛けてくれるか否かだ!)
命がけの剣の撃ち合い。一瞬の油断は即ち敗北で、敗北とは死亡に他ならない。
瞬きの1回すら惜しむような気が遠くなるほどの剣戟の果て、ロイの顔には苦渋が浮かぶ。
こい、こい、こい!
再三、ロイは脳内でリザードマンのとある一撃を待ち続けた。
翻って、リザードマンの方も少しずつ額に汗をかき始めた。
一般的な常識として、人間という種族は獣混じりの種族よりも体力がない。
だが、目の前のこの少年はどうだ?
リザードマンは焦燥感に駆られ始める。見たところ人間だというのに、リザードマンである自分と体力でタメを張っているではないか、と。
凄まじいの一言だ。体力はもちろんだが、並大抵の努力では、ここまでの精神力は身に付かないだろう。
殺意を向けられても冷静さを失わず、実際に足を焼かれても戦意を失わず、こうして刃と刃で音を鳴らし合っても、劣勢か否かは置いておいて、パフォーマンスが全く落ちない。
敵とはいえ、見習わなければならないモノが確かにあった。
しかし――、
(悪いな、こちらには炎の息がある!)
瞬間、リザードマンはナイフで聖剣の相手をしながら大きく息を吸った。
そしてそのモーションにロイは戦慄を隠せない。
間違いなく、炎の息を使うつもりだ。
それを確信した瞬間、ロイの目に勝利を確信した光が宿る。
「――ッ、DAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
「詠唱追憶! 【光り瞬く白き円盾】!」
今度はリザードマンが戦慄する番だった。
炎の息はリザードマンの口から放出される。
だからこそ、ロイは彼の口先からすぐそばのところにピンポイントで、必要最小限の大きさの魔術防壁を展開した。
その結果、炎の息は一種の壁にぶつかり逆流する。
即ち、ロイの策略によってリザードマンは自らの炎を自らの身体で受けてしまった。
しかし――、
「残念だな、あと少し足りない」
リザードマンの鱗には斬撃に対する耐性だけではなく、炎に対する耐性もあった、ということだろう。
ゆえに自分の炎が逆流してきても、ノーガードで耐えることが可能だった。
そして、その発言のほんの1秒後、ロイの魔術防壁は熱に耐えられず破壊されてしまう。
好機到来。リザードマンはトドメの一撃、最後の炎を吐こうとして、壊れてしまった魔術防壁の向こう側を一瞥した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます