ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
2章14話 初対面、そしてデートのお誘い(2)
2章14話 初対面、そしてデートのお誘い(2)
「黒いローブを被った複数人の魔術師とか、あからさまだもんねぇ……」
「それがさっき、下にいた人たち?」
「うん……、えっと……人間かどうか、種族まではわからなかったけれど……」
なるべく、ロイはシーリーンの質問に言葉を選んで答えたつもりだった。
だがそれでも、シーリーンは怖くなって身をわずかに震わせる。自分たちが今、なにか事件に巻き込まれてしまっているかもしれなかったのだから、当然の反応だろう。
そんな彼女をベッドの隣に座っていた親友のアリスがそっと抱きしめた。
少しでも彼女の不安を和らげるために、あなたには私とロイがいると言わんばかりに。
「ご主人様、僭越ながら申し上げます。このような場合、常識的に考えて王国七星団に通報した方がよろしいかと」
「そうだね」
前述のとおり、ツァールトクヴェレの一部は魔族領と隣接している。
そのため、その境界線となっている無人地域の周囲には、常にそれなりの王国七星団が常駐しているはずだった。
魔族領に隣接しているこの地域で、少なくとも5人以上の不審者がうろついている。
それだけで通報すればすぐにやってきてくれるだろう。
しかも、今回は女の子が追われているという事情も加えることができる。
充分に通報に値する案件だ。
「ロイ、通報用のアーティファクトよ」
アリスはそう言ってから、ロイに向かって念話のアーティファクトを放った。
これは互いに登録した相手としか念話できないが、防犯意識上のため、通報時には登録の必要がなく、王国七星団に繋がるようになっていた。というよりも、アーティファクトは最初から王国七星団を登録していると言った方が正しいだろう。
しかし――、
『申し訳ございません。ただ今、七星団の中で動ける団員が限られておりまして、そちらまで手が回らない状況です。女の子を保護しているとのことですが、安全を確保できたならば、そちらの方で対処してくださると幸いです』
「は? いや……、手が回らないって、なんのための七星団だと……」
『詳しくは禁則事項なのですが、ただ今、王国七星団は第1級警戒態勢を引いているのです。ご理解ご協力のほど、よろしくお願いいたします』
「なっ……、それっ、て――ッッ」
それで一方的に念話は終了してしまった。
ひとまず、ロイは七星団の人と話した内容をここにいた全員に伝えることにする。
伝えるべき点は2つ、七星団の団員があまり動けない状況にあること。
そして、それが原因でこちらの通報が受理されないことだ。
「おかしいですわね」
と、ヴィキが静かに呟く。
一方でシーリーンとアリスはヴィキーほど落ち着いていなかった。
「おかしいどころじゃなくて、異常だと思うけど……」
「人手が足りないって、組織としての体制がガバガバじゃない……」
「公務員としてもはや非常識、国民から糾弾されても文句を言えないレベルでございます……」
いつもはメイドという立場なので、言葉遣いに気を付けているクリスティーナですら、そのように強めの言葉を口にした。
そこでふと、ロイは前世のことを思い出す。
彼の前世でいう警察、それにも通報というモノはあったが、警察が通報を無視するなんて、新聞で連日取り上げられるレベルの不祥事だ。
ザルとか、あるいはアリスの言うようにガバガバとか、その程度の話ではないのだ。
公的機関が通常の仕事の1つをどのような理由であれ放棄するなんて、国家としてありえない。クリスティーナの言うようにこのことが国民に広まれば、まず間違いなくバッシングが起きるだろう。
だが、それでも、警察が通報を無視するということはないが、人手が圧倒的に足りない時がある。
たとえば前世なら、大規模な自然災害があった時とかだ。
そして現世の場合、この国の情報を考慮するならば――、
(魔王軍にわずかでも動きがあった、とか――?)
いずれにしても、憶測の域は出ない。
あまり重大で、下手に人を混乱にさせることを憶測で言うべきではない。そう判断したロイは軽く頭を振って脳裏に浮かんだ考えを打ち消した。
「ところで、1つよろしいですの?」
不意にヴィキーがロイに話しかけた。あまりにもフレンドリーな感じである。
フレンドリーなのはむしろいいことなのだが、あまり今の状況に似つかわしくないのが嘆かわしい。
「? なにかな?」
だが、友好的に話しかけられたので、ロイも一応、同じぐらいの距離感で話す。
しかし、そんなロイの気遣いなんてつゆ知らず、ヴィキーはあろうことか、ロイの恋人であるシーリーンとアリスの前で、とんでもない爆弾発言をかました。
即ち――、
「あなた、明日、わたくしとデートしてくださらない?」
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