ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章14話 15日0時 第1特務執行隠密分隊、初戦闘を始める!(2)
1章14話 15日0時 第1特務執行隠密分隊、初戦闘を始める!(2)
マリアがクリストフに意識を向けた一瞬、彼女の背後に何者かが突如現れ、地獄の業火のごとき炎の大剣、
燃え盛る紅は大気中の酸素を爆速で消費して、いざ、マリアの背中に一撃を負わせようと速攻で迫りくる。
マリアの身の丈を
これを喰らえば戦闘不能は免れず、たとえ治癒魔術を使用したとしても、マリアの色白な柔肌に、見るも無残な痛々しい火傷の跡が残ってしまうのは必定だ。
しかし、これは集団戦闘だ。
ゆえに、シーリーンは自分のことを忘れてもらっては困る、と、そう言いたげに黒曜石のごときあどけない黒目がちな双眸をギラ付かせて――ッッ!
「―― 詠唱零砕!
「…………っ!?」
光属性の魔術の天才、イヴではなく、シーリーンの【光り瞬く白き円盾】ごときで、まず間違いなくクリストフの援軍と思しき人間、つまり、魔王軍の軍人のアサルト魔術を完璧に防御できるはずがない。
ゆえに、シーリーンは【光り瞬く白き円盾】を立方体になるように展開した。そして、その立方体で【炎斬の剣】の先端を閉じ込める。
その結果起きるのは当然、酸素不足だ。
【炎斬の剣】の先端は酸素不足で鎮火して、敵は柄だけの状態になってしまった剣を振って、傍から見たら間抜けのように、シーリーン、及びマリアを斬りつけられずに空ぶってしまう。
「マリアさん! 【炎斬の剣】、無効化完了!」
「こちらもクリストフの物理透過を無効化完了! イヴちゃん!」
背中合わせの状態のシーリーンとマリア。
互いに互いの背後を守っている状態で、マリアはイヴの名前を叫んだ。
「
「なっ!?」
イヴは光属性が得意というだけで、他の魔術はそれほどではない。
だが、光と時間と空間は密接な関係にある。
ゆえに必然、光属性の魔術で空属性の魔術の真似事をするなど、実に造作もなく、イヴにとってそれは児戯に等しい応用だった。
要するに、自らの肉体を一時的に光に変換して、瞬間移動を果たす。
約0・0000001秒後、イヴは完全にクリストフの背後を
無論、マリアの魔術のおかげで、今は物理透過も施されていない。
しかし――、
「【
「甘い」
言わずもがな、【絶光七色】の速度は光速、イヴたちが暮らしている惑星を1秒間で7周以上できるスピードだ。
たかが人間に躱せる道理はない。否、竜人や幻想種にだって躱せる道理はないだろう。
竜の飛翔よりも速く、天使の福音よりも疾い。
たとえ死霊術を使い世界に対して自らの肉体を加速させたところで、この近距離、この位置関係、躱せるわけがないというのが条理というもの。
だが、眼前のクリストフは【絶光七色】を回避してみせた。
当然、現在、間違いなくイヴはクリストフの背後を獲っていた。彼が彼女の視線、目が向いている方向を把握して、事前に【絶光七色】の射線から外れるのは不可能と断言できる。
そして、だ。
イヴの光速魔術を回避したクリストフ、彼は肉体強化の魔術を発動して、近場の建物の屋根に跳躍した。
「イヴちゃんの【絶光七色】を回避した!?」
「そんな……っ、ありえませんよね!?」
翻り、シーリーンとマリアは新手の敵、クリストフの援軍との攻防の最中、隙を伺い、それができると跳躍してイヴの近くに着地する。
さらに一方、シーリーンとマリアに先刻、【炎斬の剣】で強襲した新手の敵、彼も同じく跳躍して、別の建物の屋根に移動していたクリストフの傍に着地した。
これでアリス以外、両陣営の各全員が1ヶ所ずつ集まったことになる。
そして道路にいる自分たちを見下すように、建物の上に立っている2人を睨み付けながら、イヴは『とある推測』を口にした。
「なるほど……。『人間が光速の攻撃を避けること』と『人間の肉体が光速で移動すること』は決して同義じゃないんだよ……」
「ど、どういうことですかね、イヴちゃん……?」
「簡単なことだよ。たとえば詠唱するだけで、この惑星から100億光年先の惑星に瞬間移動できる魔術があったとするよ? でも詠唱するのは人間の口なわけだから、魔術師本人の口の動きが光速を超えないと、一連の魔術動作は光速に届かない」
「ご名答だ、イヴ・モルゲンロート。陸上競技と一緒だよ。走り始めた瞬間とタイムが測られ始めた瞬間がまったく同時であるはずがない。銃声が鳴ったほんの一瞬後、スタートダッシュを切ろう、と、そう思ったわずかな時間もタイムに含まれるのと同じことさ」
「つまりあいつは【光化瞬動】でわたしが光速移動したあと、よし! 背後を獲ったから殺そう! と、そう考えている隙に射線から外れた、ってことだよ。言わずもがな、人間の思考、脳みそのシグナルの速度は光速じゃないから。ついでに指の動きも」
「そう、そして――」
すると、クリストフは自分の手のひらに闇の球体を召喚した。
単純だが、破壊力はそれなりにある闇のアサルト魔術である。
「位置関係を誤ったな、諸君。おれを建物の上に立たせた時点で、その建物ごと、その住人が人質になるとは考えなかったのか?」
まるで煽動するように、クリストフは召喚した闇の球体を足元の建物に向ける。そして魔力を追加で充填して、その球体の規模を徐々に大きくし始めた。
あれは紛うことなく魔王軍の闇属性魔術だ。距離はゼロ距離、速度は未知数。どう考えてもなにも対策を打たなかったら、建物が倒壊して、中にいると推測される人たちが全員死ぬ。
しかし、イヴは笑っていた。
やれるものならやってみろと言いたげに。
「なら、早く撃ってみればいいんだよ。ただし、わたしがなんの対策も打っていないと思うなら、ね」
「そうか。なら撃とう」
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