ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章1話 ダイヤモンドの月6日 アリシア、返事する。(1)
承 4番目のヒロインはお兄ちゃんが大好きな妹(上)
1章1話 ダイヤモンドの月6日 アリシア、返事する。(1)
「アリシアさん、ボクを、あなたの弟子にしてください」
と、ロイは眼前の最強、特務十二星座部隊の序列第2位、【金牛】のアリシアに言う。
刹那、2人の間に春の夜風が吹き抜けた。
シン――――と、止水のように静まり返った月だけが見守っている
ロイの
自明だ。
アリシアに弟子入りを申し込むなど、生半可な覚悟では到底できない。
特務十二星座部隊の一員に冗談なんて言おうものなら、今後の自分のキャリアが全て闇に消える。
そして本気なら本気で、弟子になれた時、その修業は想像を絶するモノになると断言できた。
ゆえに、口にした時点で本気も本気。
真剣中の真剣。
アリシアは一度瞑目して静かに息を吐くと――、
「すみません……、無理です……」
「えぇ……」
ロイのアリシアに対する弟子入りの申し込みはあっけもなく両断された。
一応、ロイにだって自信はあったのだ。まだまだ新参者ではあるが、聖剣使いだし、魔王軍の幹部を1人討っているし。
そのようなロイの軽いショックを察してか否か、アリシアは頭を戻すと、申し訳なさそうに手をわたわたさせる。
「いや……っ、確かに私は弟子を作ったことはありませんが、ロイさんなら問題ありません。むしろ、弟子第1号としては完璧に最高の人選だと思っております。それは間違いなく本心です」
「なら、恐縮ですがせめて理由を……っ」
喰い下がるロイ。
彼だって必死だったのだ。
このままではシーリーンやイヴに並ばれるかもしれないし、加えて最悪なことに、もしかしたら、あの世界一気に喰わないレナードにも置いていかれるかもしれないから。
しかし、アリシアはロイのその焦燥感を察した上で断ったのだ。
ゆえに彼女はビシィ、と、指を差して彼に告げる。
「ロイさん! あなたは今、そもそも休暇中のはずです! ここでロイさんに死に物狂いの努力をさせたら、私が怒られてしまうんです!」
「あぁ……」
妙に納得してしまったロイ。
確かに言われてみればそのとおりだった。グーテランドの社会、文化はロイの前世の日本ほど、休暇中に働くということを妄信していなかったのだ。
微妙に、まだ日本的な感覚が残っているなぁ、と。
ロイが漠然と感慨にふけっていると、コホン、と、アリシアは話を続ける。
「納得していただけましたか?」
「はい……、すみません。どうも前世の感覚が残っていたようでして……」
「ん? もしかして、ロイさんの前世では休暇中に働くとか、上司、上官に会うとか、そのようなことも?」
「えぇ、ボクの住んでいた国は日本って言いまして、他にも国はたくさんあったのですが、少なくとも日本では、あまり珍しくなかったような……」
「一言だけよろしいでしょうか?」
「? えぇ、大丈夫ですが」
「休暇中に働いたら、それって休暇って言わないのでは?」
「うぐ……」
アリシアに、日本には休日出勤って言葉があるんですよ~、なんて言ったら、どのような反応をするのか。
ロイは言葉を詰まらせながらも、そんな益体のないことを思わず考えてしまう。
「ですが、言われてみればそのとおりかもしれません」
「申し訳ございません。確かに私にとっても非常に魅力的な提案でしたが、休暇中の団員を訓練なり実戦に同行させたとなると、やはり私が怒られてしまいますので」
「とはいえ、アリシアさんを怒るって、すごい人もいるんですね……」
「まぁ、人事の方に注意を受けるのは、正直全然怖くないのですが……国王陛下とエドワードさんに怒られるのは、かなり響きますね」
国王陛下に叱られて萎縮するのは当然だが、エドワード・キルヒェアイゼンは特務十二星座部隊において、アリシアを
その上、エドワードはアリシアよりも年上である。響いてしまうのも当然のことと言えるだろう。
で、流石にそこで自らの間違いを認めたのだろう。
腑に落ちると、ロイは改まって、深々と頭を下げた。
「では、わざわざご多忙の中、手紙を出してまでお呼び出しして申し訳ございませんでした。それも、こんな深夜に呼び出すことになってしまい。足らぬとは存じますが、謝罪をここに申し上げさせていただきます」
「いえいえ、ロイさん、まだ話は終わっておりません」
「えっ?」
ゆっくり、おずおずと頭を戻すロイ。
すると、アリシアは月明かりに照らされながら、
「言ったはずです。休暇中だから無理。そして同時に、無理だけれども、私にとっても非常に魅力的な提案である、みたいなことも」
「あっ――」
「休暇が終わり次第、そうですねぇ……来月か再来月のどこかで、なんらかの形で弟子としてのファーストミッションを与えたいと思います」
幼女の姿にすごく似合う、穏やかで和やかで、そして
ロイは感極まる。
当然だ。自分はこの瞬間、少なくともある程度は、王国最強の2人のうちの1人に認められたのだから。
「ですが一応、面接ぐらいはこの場でしておきましょうか」
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