ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章2話 ダイヤモンドの月6日 アリシア、返事する。(2)
1章2話 ダイヤモンドの月6日 アリシア、返事する。(2)
「よ、よろしくお願いいたします!」
わずかに慌ててしまうロイ。
彼も面接やテスト程度は予想していたが、まさか夜分遅くに話が進んでいき、さらにまさかバルコニーで始まるとは思ってもいなかった。
「あらあら、まぁ、そこまでかしこまらなくてもけっこうですよ? ただ、私の質問に答えればいいだけですし、ロイさんの人柄はすでに知っておりますから、少なくとも性格の相性を理由に断ることはありません」
「は、はい!」
ロイは背筋を改めて伸ばす。
日本にはもちろん、この世界にも、親しき中にも礼儀あり、という
今から行われるのは面接だ。いくら多少は親しいといっても、普段以上に礼節を重んじて受けようとロイは決める。
そして、彼の心の準備が整ったと察すると、アリシアは花の蕾のように可憐な薄桃色の唇を開いた。
「質問はたった2つです」
「はい」
「まず、第1の質問――ロイさんは騎士か魔術師かで言えば、間違いなく騎士です。それなのに、同じカテゴリーの団員ではなく、魔術師である私に弟子入りを申し込んだ理由は?」
これは当然の質問だった。
騎士が魔術師に教えを乞う。確かに得られるモノは多々あるだろうが、比較すると、どこからどう考えても騎士を師匠にした方がそれは多い。
仮にロイが弟子入りするのがアリシアではなくエルヴィスだったならば、まずは基本中の基本、剣の握り方から構え方、振り方、そして斬り方、ありとあらゆる力の入れ方などを初心に帰って1から洗練化することができるだろう。
そして無論、洗練化を終えたら、次にすべき応用はもちろん、あのエルヴィスに反復練習に付き合ってもらえるのだ。
強いのはアリシアでも、剣の使い方が上手いのはエルヴィス。これは厳然たる事実である。
アリシアに弟子入りしたとしても強くなれるのは確実だが、エルヴィスの弟子になった時に得られる、計り知れない恩恵は得られなくなってしまう。
しかし、だ。
自分からアリシア宛に手紙を出した以上、ロイがその程度のことを考えていないわけがない。
「結論から申し上げますと、率直に、ただの魔術師ではなく最強の魔術師だからです」
「結論から言ってくださるのはありがたいですが――では、具体的な理由は?」」
アリシアは幼女らしく、可愛さ満点で小首を傾げて追及した。
その際、サラッと髪が揺れて、女の子の匂いが夜風に混じる。
「ボクは今、実力不足だけではなく、それを解消するための成長の速度にも、焦りを覚えているんです」
「ん? そう、なんですか? イヴさんがあまりにも例外的というだけで、客観的に見たら、ロイさんはむしろ、同年代とは比較にならないほど優秀じゃないですか?」
「それは――比較対象が違います。ボクはこの世界に命を得て、それで初めて平和が当然じゃない暮らしを知りました。女神様からの依頼もありますし、だからボクは思ったんです。本気で戦争を終わらせてみせる、って」
「――――なるほど。辿り着くべき理想がそうであるならば、焦りを覚えるのも理解できます」
「アリシアさんの言うとおり、ボクは騎士です。魔術師ではありません。ですが、ボクが目指しているのは騎士の頂点じゃない。聖剣使いも、魔剣使いも、普通の魔術師も、召喚士も、錬金術師も、占星術師も、エクソシストも、全てが入り混じっている戦場の頂点です。でなければ、戦争を終わらせるなんて、夢のまた夢じゃないですか」
「戦いを終わらせるために武力を求めますか。ロイさんらしいですね」
「えぇ、ですから、ボクが目指しているのは最強です。だから、最強のあなたに教えを乞い、そして、いつかあなたを超える。そのための弟子入りです」
ロイは堂々と言ってのけた。いつかあなたを超える、と。
超えようとしているのは、目の前で微笑む王国の最強の魔術師だ。夢物語で終わる可能性は果てしなく高い。
だが、それでも、と。
夢を見なければ夢は叶わない、と、ロイはそのように考えていた。
「それが人として正しいのか、間違っているのかは置いておきましょう」
「はい」
「ですが、少なくとも私はその答えを気に入りました」
内心で、アリシアはロイの行く末に想いを馳せた。
こんな理不尽な現実でも理想を貫いて、まるで天国のように平和な暮らしが約束されたユートピアに辿り着けるのか。あるいは理想を現実で壊されて、死ぬまで地獄のごとき戦場を彷徨うことになるのか。
魔術にも科学と同じく観測者効果がある以上、その未来が遠ければ遠いほど、未来視を使ったところでそれは簡単に変わり続ける。
アリシアを含めて、ロイの旅路の果てになにがあるのかは、今はまだ、誰にもわからなかった。
「ですが、私は知ってのとおり、特務十二星座部隊でも序列第2位です。第1位はエドワードさんですし、彼は魔術師ではなく、ロイさんと同じく聖剣使いにして魔剣使い。まぁ、ロイさんのエクスカリバーが聖魔剣なのに対し、エドワードさんは聖剣と魔剣の双剣流ですが」
「なぜエドワードさんではなくアリシアさんなのか? それが、第2の質問ですか?」
「えぇ、肯定です」
アリシアは妖しい瞳でロイを見る。
恐らく、1つ目の質問よりも、こちらの質問が本命なのだろう。
だが、ロイは臆しない。答えなんて、考えていたことを言えばいいだけだったから。
考えていることが皆無ならば、確かにこの問答にはすさまじく緊張するだろう。だが、ロイはそこまで愚かではなかった。
事実、ロイはエドワードのことも師匠の選択肢に入れていて、その上で、アリシアを選んだのだ。
アリシアとエドワードの違い、それは――、
「アリシアさんとエドワードさんでは、自分で守れるモノが違います。強さの方向性が違います。また結論から言わせていただきますが、だから、ボクはエドワードさんよりもアリシアさんを選ばせていただきました」
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