ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
2章2話 アクアマリンの月24日 ヴィクトリア、ロイの両親と会う。(2)
2章2話 アクアマリンの月24日 ヴィクトリア、ロイの両親と会う。(2)
その後、前置きのとおりにアルバートの説明が始まった。
まず当たり前だが、ロイが王族になったからといって、2人が王族になることはない。それを許してしまったら、一般人が王族になる現象が連鎖するからだ。
ちなみにこれはシーリーンとアリスにも同じことが言える。今回の結婚で身分、階級が変わることになったのはロイだけだった。
次に残念ながら、ジュリアスとカミラは星下王礼宮城には住めない。
単純に2人は王都に住民票がないのだ。
無論、役所で手続きをすれば誰であろうと引っ越しをすることは簡単である。
現にアルバートも「住民票を移してさえくれれば、あなた方もここに住むことができる」と説明した。
しかしその場合、ロイの故郷の村の自宅は、誰も住んでいない状態になってしまい、いずれ廃屋になるだろう。しかもあの村で生まれ育ったジュリアスとカミラからしたら、両方の両親、ロイから見た両祖父母、計4人が眠る墓地から離れるということも意味している。
ついでに言えば、あの自宅もジュリアスが彼の両親から受け継いだ物だった。
別に前世でも明治や昭和に生きていたわけではないロイ。
彼にとっては馴染みが薄い感覚だったが、グーテランドでは郷土に対する愛着とか、先祖から受け継いだ物に対する誇りとか、そういうモノを抱く感性が未だに根強く広がっている。
グーテランドにはグーテランドの文化があり、そこの民にはそこの民の価値観がある。
ロイとしては両親にもここに住んでほしかったが、日本とグーテランドの違いを理解して、ここに住むように誘うことを慎んだ。
結果、2人はそういう決断を下したので、先刻のとおり、アルバートは「なら住めない」と口にした。
だが、流石はアルバートというところだろう。
年に2回程度、馬車に乗れる推薦状を手紙で送るので、自由に王都にきて、自由にこの城に入ってくれてかまわない、とのことだった。
いくらなんでも手荷物確認ぐらいはされるだろうが、そこは大目に見てほしい、と、アルバートは笑っている。
そして――、
数十分後――、
「本日はありがとう。帰りの馬車は3日後の夜だったはずだな? その間はここに泊まっていくといい」
「はい、ありがとうございます」
と、妻の分もあわせてジュリアスがアルバートに頭を下げた。
当たり前だがジュリアスとカミラに王都まで馬車で移動するお金はない。
ロイが王都にくる時の条件で、エルヴィスが彼の故郷の村に財産をやる、という約束が存在したが、あれはモルゲンロートの家にエルヴィスの財産の2/3を与えるのではなく、村全体にエルヴィスの財産の2/3を与えるのだ。
そのおかげで贅沢は一応、できる。
しかし、贅沢はできても豪遊はできない。
そして王都まで馬車で移動というのは、たとえロイとヴィクトリア、その互いの親が「うちの息子をよろしくお願いいたします」「いえいえ、こちらの娘こそ」と挨拶するという理由がキチンとあっても、消費する金銭の額だけで考えたら、充分に豪遊レベルの消費だった。
で、ロイが「ボクの親は国王陛下と、国王陛下だってボクの親と、挨拶はしておくべきだよね」「給料ももらったことだし、ボクが王都に招待しよう」と考え、アルバートに予定の調節に伺ったところ、彼に「いや、その手配は余がやっておく」と言われて、2人はこうして王都に訪れることができたのだ。
そして、なぜ王都に滞在する期間が、今日も含めて4日なのかと言うと――、
「あなた、今日からそんな調子で大丈夫? 明日はエルフ・ル・ドーラ侯爵のお屋敷で、明後日はエンゲルハルトさんとのお食事よ」
「大丈夫だろ、一番緊張する日を一番始めに持ってきたんだし」
そう、ロイが結婚したのはヴィクトリアとだけではない。
すでにシーリーンとアリスとも結婚している。入籍だけして、式はまだ行っていなかったが。
「そういえばロイ、なんで式を挙げないのかしら?」
と、質問するカミラ。
対してロイは――、
「もちろん、ボクとヴィキー、まぁ、自分たちで言うのも傲慢な感じだけど、英雄とお姫様の結婚式を早く挙げた方がいい、っていうのは理解しているつもりだよ?」
「なら――」
「でも、この結婚式はボクとヴィキーだけのモノじゃない。シィとの結婚式でもあるし、アリスとの結婚式でもあるし、もちろん父さんと母さんのモノでもあるし、国王陛下が楽しみにされているモノでもあるし、アリエルさんやシィのご両親だって同じだし」
「「――――」」
「だからなるべく、難しいかもしれないけれど、みんなの都合が付く時に式を挙げたいな、って」
「「――――」」
「もちろん、普通は逆ってことも理解している。みんなの都合に式の日時をあわせるんじゃなくて、式の日時にみんなが都合を調整してくださるんだ、って」
「「――――」」
「でも流石に、ボクと、シィと、アリスと、ヴィキー、この4人の親御さんの出席だけは絶対だからね。普通の結婚式よりもその人数が多い以上、少し変則的でも、ボクたちはみんなの都合が付く時に式を挙げる」
と、ここでアルバートが会話に混じる。
「ロイくんには感謝している。その中で一番予定のやりくりが難しいのは余であるからな。次点でエルフ・ル・ドーラ侯爵か。とにかく、ロイくんを責めないでやってほしい」
確かに、ジュリアスとカミラは今日、アルバートと会って、明日はアリエルと会って、明後日にはシーリーンの両親と会う予定だ。
一見、この3日間にみんなの都合が付いているように見える。
しかし、アルバートは明日、どうしても予定をずらせない長時間に及ぶ会議があり、アリエルは明後日、馬車で地方へ行く予定があり、シーリーンの両親は馬車の移動距離の都合で今日までにこれそうになかった。
そもそも、今日は平日だ。
ロイにもシーリーンにもアリスにも、日中は学院がある。式を挙げるにはいささか、放課後だけでは時間が足りない。
「あっ、そうだ、父さん、母さん」
「ん?」
「なにかしら?」
「今日はここに泊まるんだよね?」
「そうだが?」
「ええ、そうよ」
「なら、今日のうちにシィとアリスとも会っておこうよ」
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