ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章5話 アクアマリンの月19日 ロイ、休みたい。(2)
1章5話 アクアマリンの月19日 ロイ、休みたい。(2)
「話は聞かせてもらったぞ!」
「国王陛下!?」
バンッ、と、勢いよくロイの部屋に入室したのはヴィクトリアの父、つまりグーテランドの国王であるアルバートだった。
また、彼の背後には、今までここにいなかったロイのメイドであるクリスティーナも控えていた。
「ロイくん、そろそろ余のことをお義父さんと呼んでもいいのではないかな?」
「えっと……、公私混同はあまりよろしくはないのでは?」
「ならば、今は公務ではない、私事だ」
言われてみればそのとおりで、今、ここは謁見の間でも国民の前でもない。星下王礼宮城の中にあるとはいえ、ロイという個人の自室である。
そして、アルバートはコホンと咳払いすると――、
「先ほど、クリスティーナくんにも確認を取ったのだが、ロイくん、君はあまりにも忙しすぎだ。少し休暇を取るといい」
「えっ、し、しかし――っ」
「確かに努力することは大切なことだ。だが同時に、ただ漠然と努力すればいいというものではない。計画性のない努力など、子どもでもできる。重要なのは、行動開始力、継続力、そして効率の3つだ」
「効率……」
「そう、3つのうち、君がどこか忘れているモノである。いいかね、ロイくん? 人は労働、あるいは勉学のために生きているのではない。生きるための1つの手段として、労働や勉学をしているのだ。ならば時に休まなくてどうする」
「そうですわ、ロイ様。先ほども、ボクはッッ、今ッッ、猛烈に休みたいッッ!! と、仰ったばかりではありませんか」
「それは誰にも迷惑がかからなければの話で……」
「間違っているぞ、ロイくん」
「えっ? と、言いますと?」
「1人休んだぐらいで影響が出るシステムなど、システムの方が間違っている。1人休んでも誰にも普通に迷惑がかからないのが、本来のシステム、君の場合は学院の勉学や、七星団の演習だ」
アルバートの言うことは精神的にはもちろん、論理的に考えてもそのとおりだった。
私事だとしても、ケガや病気が原因だとしても、七星団の演習に欠員が出ることは多いというわけではないが、たまにある話だ。なのに、それを見越せずに欠員が1人でも出たら演習に支障が出るなど、あまりにも致命的な組織の体制である。
普通ならば、欠員が少し出てもリカバリーを利かせられるような体制、セーフティーネットがある体制こそが、組織に求められて然るべきだろう。
で、さらに理詰めするようにアルバートは言った。
「それに、君のゴスペル、〈
「あれ? 王様、センパイのゴスペルのこと知っていたんだ?」
「そもそも、ロイ・モルゲンロートはゴスペルホルダーです~、って認めてサインを書いて、ボクの故郷にその書類を送ってくれたのが国王陛下だからね」
「あれは今、我が家の家宝になっているんだよ」
「そ、れ、で、先……輩、ゴスペ……ル……が、万能じゃ、ない、って……」
「〈世界樹に響く車輪幻想曲〉の効果は2つあって、努力が楽しくて楽しくてやめられなくなることと、成長の余地の上限解放だ。で、1つめの効果って簡単に言うと、物理的に人間の構造上、不可能な努力はできないんだ」
「ロイくん、たとえば?」
「たとえば――まぁ、ボクがまだ赤子の状態だったら、剣を振れないし筋トレもできない。逆に、ボクがおじいちゃんになったら、もしかしたら病気でなにかしらの努力ができなくなる、ってこともある。あとは極端な例だけど、ほら、ボクってレナード先輩と戦った時、腕を斬り落としたでしょ? その場合、片手剣ならともかく、両手剣とか、他には弓矢とかを扱う努力ができなくなるってこと」
「そうなんですの?」
「えぇ、実際に弟くんは赤子の頃、物覚えはよかったですけれど、努力らしき努力は一切していませんでしたからね。弟くんが村で天才の器、なんて呼ばれ始めたのは、確か3歳ぐらいからだったはずですし」
「じゃあ、ロイ、体力の限界とか眠気とかは?」
「あ~、アリス、唯物論って知っている?」
「知らないわ。魔術の新しい理論?」
「違う違う。魔術じゃなくて、哲学の一種の考え方。たとえばリタ、ボクに、一緒に焼き肉店に行こう! もちろんボクの奢りで食べ放題! って言われたら嬉しい?」
「もちろん! ちょ~嬉しい!」
「じゃあ、嬉しいってなに?」
「は? なにってなに? えっ? 感情の種類? 心の変化の一例?」
「そう、それであっている。で、唯物論っていうのはこの世界に存在する森羅万象は物質でできているし、その反応で発生する、って考え方なんだ」
「えっ? アタシが今言った感情とか心も?」
「うん、脳みそは脂質とタンパク質とアミノ酸でできていて、感情は脳みそを走る電気信号にすぎないんだ」
「ロイ!? それって新事実よ!? この世界じゃまだ解明されていない科学なんだけど!?」
「あ~、流石はシィのロイくんだなぁ~♡ 本当に頭がいいんだね」
「それで、それが体力の限界とか眠気の有無にどう繋がるんですの?」
「体力の限界、いわゆる疲労っていうのは、細胞が傷付いた時、老廃物の発生によって脳に伝わる電気信号なんだ。一方、眠気っていうのはタンパク質が脳内に蓄積されると発生する」
「なるほど。つまり、疲労や眠気に抗うのは物理的に人間の構造上、不可能な努力に該当する、ということか」
「国王陛下の仰るとおりです。まぁ、一応、本来、ボクのゴスペルは疲労を感じることさえ楽しく思えて、実際に村にいた時はそうやって剣術に励んできたんですけど、流石に気絶して倒れてしまう前や、気絶しないにしても、身体が不調を訴える前には、徐々に疲れが楽しめなくなってきますね」
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