ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章4話 アクアマリンの月19日 ロイ、休みたい。(1)
1章4話 アクアマリンの月19日 ロイ、休みたい。(1)
翌日――、
放課後、17時――、
「休みたいッッ!! ボクはッッ、今ッッ、猛烈に休みたいッッ!!」
と、ロイは星下王礼宮城の自室で切実に叫ぶ。
そんな彼の発言に「「???」」と頭の上にクエスチョンマークを今にも浮かべそうだったのは、ロイとイヴの友達ということで特別に遊びにきていたリタとティナだった。
「どうしたんだ、センパイ?」
「一昨、日、ま、で……冬休……み、でした、よね……?」
「いやっ、でもセンパイの気持ちもわかるぜ! 休みに長すぎるなんて言葉はない! 休みは長ければ長いほどいい! そういうことだろ?」
「あっ……り、リタ、ちゃん……、ちぇ……チェック、メイ、ト……」
窓際の席でチェスに興じるリタとティナ。
ちなみに、今のところリタはティナに全戦全敗していた。
「違う……っ、ボクはそもそも、休んでいないんだよ! 冬『休み』なのに! 長期『休暇』なのに!」
「あぁ……なるほ、ど、です……」
「んん~~? どういうことだ?」
「まぁ、根本的に、ツァールトクヴェレに行ったのって弟くんに休んでほしくて、癒しの効能がある温泉に浸ってもらうためだったんですけどねぇ……」
ベッドの上で読書していたマリアがしみじみと呟く。
「しかも生き返ってからも王族になった件で、いろいろ戦闘とは別の理由で、忙殺されているんだよ……」
そしてマリアの呟きに、リタとティナがチェスしている席ではない席で、トランプをしていたイヴが情報を追加した。
「これで冬休みが2週間とか1ヶ月しかなかったら、本当に死ぬところだった」
「いやいや、お兄ちゃん……。お兄ちゃんは本当に死んでいるよ? ところじゃないよ?」
「まぁ、冬休みが1ヶ月しかない教育機関なんてあるはずありませんけどね」
「あったんだよねぇ、これが……。ボクの前世に……」
王族になったことで法律の勉強を本格的に開始したロイが、机と向かい合った椅子に座りながら、前世の日本の休暇事情について嘆く。
ちなみに、先刻の切実な叫びはもう帰宅して勉強し始めてから2時間経ったことで、いい加減集中力が切れたのが原因だった。
無論、法律の勉強は帰宅後の話なので、今日の日中も、彼は学院で勉学に励んでいる。合計すると、彼は毎日8時間以上も勉強している計算になるだろう。
「……確かにボクは持病のせいで学校に行けなかったけれど、ボクの幼馴染なんかは、夏休みが1ヶ月しかないとかありえないもん! 冬休みが2週間しかないなんて不服だもん! って、騒いでいたなぁ」
「夏休みが1ヶ月!?」
「冬休み……が……2週、間……、っ!?」
驚天動地と言わんばかりにリタがガタッと席を立ち、ティナはチェスの駒を床に落とした。
で、リタが座り直して、ティナが落とした駒を拾ってから、ロイは話を続ける。
「でも……、国王陛下に申し出ても、少し困らせちゃうよねぇ……」
「あれ? でも、お兄ちゃんって毎日けっこう早く寝ていた気がするよ?」
「「「…………っ!?」」」
「弟くんはそんな夜更かしするタイプではなさそうなんですけどねぇ……」
「「「………………」」」
「そうだねぇ……、世の中の男性が聞いたら自慢に聞こえるかもしれないけれど、寝かせてもらえるなら、寝かせてほしいんだけどねぇ……」
「あれ? シーリーンさん? 今度はシーリーンさんがアリスさんの手札を引く番だよ?」
イヴはトランプをしていたのだが、その種目はババ抜きだった。そして言わずもがな、ババ抜きは1人ではできない。
その相手であるシーリーン、アリス、ヴィクトリア、彼女たちは昨日のことをみんなの前で、バレてはいないとはいえ、かなり露骨に持ち出されて思わず赤面してしまう。
「で、でも! 言われてみればそうですわね! 確かにロイ様は働きすぎですわ。本来、魔王軍の幹部の1人を倒したのであれば、その後、一生、軍役を免除されてもおかしくないレベルですのに」
「ロイくん、平日は学院で、一昨日は違ったけれど、基本的に土日は七星団の演習に顔を出しているんでしょ?」
「うん、難しいよね。学院での勉学も疎かにしたくないし、七星団の演習の方も疎かにしたくないし、あぁ~、1日が30時間ぐらいあればいいのに……」
「ロイ、その発想は危険よ。あなた、1日が6時間増えても、睡眠じゃなくて勉学か演習に使う気でしょ?」
「あっ、本当だ。なんか今、ブラック企業の上司染みた人が乗り移った気がする」
ロイの前世の日本では、1日が30時間あれば、より多くの時間を勤務時間に割り振れる! と、そういう労働者の休みというものを一切考えてくれない頭のおかしい人がそれなりにいた。当然、ロイは15歳で死んだので、実際にそういう人の下で働くことはなかったが、主にSNSでそういう情報が流れてきて知っていたのである。
で、ロイが自己嫌悪に陥って「ぐぬぬ……」と悩んでいると――、
「とにかく、そういう思考をしてしまうのは、病んでいる証拠ですわ!」
「い、言われてみればそのとおりかも……」
「あれ? そういえば、センパイも王族だけど、それ以前にヴィキーはもっと純血の王族だよな?」
「? そうですわね」
「センパイが勉強しているのは見たことあるけど、ヴィキーが勉強している姿、見たことないぜ?」
「サボ、り…………です、か?」
「失敬ですわね!? コホン、どうもわたくしはみな様から一般常識がない女の子と思われがちですが、一般常識と一般教養は別物ですわ! ハッキリと申し上げますと、それは当然、剣術ではロイ様に、魔術ではアリス様やマリア様に勝てませんが、法律、経済、政治、これらの分野ではロイ様にだって圧勝できますわよ!」
「「「「「「「…………えっ?」」」」」」」
瞬間、ロイ、シーリーン、アリス、イヴ、マリア、リタ、ティナの声が重なった。
「なんですの!? その、えっ、ヴィキーが……? って感じの驚きは! 確かにロイ様は転生者で、数学や物理は向こうの知識のおかげもあり、わたくしはもちろん、他の誰にだって負けませんでしょう。ですが、わたくしだって、これでも王女! 幼い頃から一流の家庭教師を付けてもらい、同年代の人たちと比べ物にならないぐらい、頭がいいんですのよ!?」
「あれ? ロイくん? ヴィキーちゃんに話したの? 転生のこと」
「うん、国王陛下とアリシアさんとエルヴィスさんに許可をもらって。流石に、ヴィキーがスパイなんてありえないからね」
「弟くん、話が脱線し始めていますね」
「今はお兄ちゃんのお休みの話が最優先だよ」
「まったく、これだからヴィキーは!」
「なんですの、リタ様!? わたくしが悪いんですの!?」
「そ……ん……なこ、と、ないから……、安心、して……ください……」
涙目でガビーンとショックを受けるヴィクトリアのことを、ティナが優しく微笑みながらフォローしてあげていた。ヴィクトリアの方が年上なのに……。
と、その時だった。
「話は聞かせてもらったぞ!」
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